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幸せな時間〜パパママ? それとも・・・

この1年間のうち、自分的ベスト3に入るくらいの幸せな30分を過ごした。
というか、この1年間弱(ふりかえると2023年4月〜2024年2月)はこの10年で一番、くるしい時間だった。

どんな幸せな時間だったか。
夫が作った昼ごはんの匂いで目が覚めて、分けてもらったのである。

事実を1行で書いたらそうなった。でも、自分がどの時間がいちばん好きか。
と聞かれて、答えるだろう瞬間がつまっていた。少なくとも、私という人間が、何を幸せだと思うかを知ったのだ。

子どもが保育園に出かけ、夫は自宅で仕事。わたしは産休。
いつものように保育園を送り出してから、ぼちぼちと本を読みながらリビングでうたた寝していた。

自室で仕事していた夫がやってきて、自分の昼ごはんを作りはじめた。

ふんわりと漂ってくる、にんにくのいい匂い。
たまらず、ソファでうたた寝していた体を起こして、キッチンの方に目を向けた。

「何? 食べたいの?」 と苦笑い。
その笑顔をみて、胸がキュンとした。少女漫画だったら、多分、「トクン」みたいなフレーズが出ていた。(注:40歳です)

ものすごく食べたかったわけではない。
もちろん、いい匂いはいい匂いなんだけど(にんにくとオリーブオイルの香り、というものは、食欲を促す最強のものの一つだ)、それ以上にこの空間。

学生時代から一緒にいて、料理好きの夫は自炊していた。
半同棲状態で夫のワンルームにしょっちゅういたわたしにもよく、ご飯を作ってくれた。もう20年前の話だ。

それから、わたしたちは親になり6年近くになるのだが、二人よりも育児と仕事に追われていた。二人だったとしても、二人ではなかった。
頭にあるのは最優先は子ども、そして次は仕事だった。

この生活を維持しなければ。必死だった。
親元を離れ上京・進学し、就職し、都内で家をもって子どもをそだてる。
お金が必要だった。でも、物価も家賃も高い東京でそれを維持することは、今だから言えるけどーー、正直、へとへとになる。なっている。
キャリアを維持するための、自己投資。自分磨き情報にも混乱した。
わたしは、優秀じゃないからね。と、毎日毎日思っていた。

平日、フルパワーで働き、時には土日も仕事をしながら子どもを見た。
空いている時間は、睡眠に充てるしかない。自己嫌悪しかない。
たまに、自分や家族を前向きにする術を見つけるんだけど、それも付け焼き刃。すぐ効果がなくなってしまう。

自分の心身(入院まで行かないが、そこそこの病気のオンパレードに加えて、睡眠導入剤で寝ていた)も、家族の空気も、職場でのしんどさ(のちに認定されるが、パワハラを受けていた)も、もうこの数年で最悪の状態におちいったのは、今考えたら当然だった。

それでも、走り続けなければ、この生活は維持できない。
何より、バカなりに、壁にぶちあたりながらも15年以上、頑張ってきたのだ。
政府が求める、現在の日本で理想とする「共働き夫婦+子ども」のプランは、激しいサバイバルレースみたい。

余談だけど、稼いだら稼いだ分だけ、どころか、累進課税という名のもとに税金でもって行かれるのだ。それでも、止まれない。

世の中で言われる「バーンアウト」=ぷっつーん、と切れることもできずにいたわたしは、ある日、第二子を妊娠した。
医師やまわりの言葉に背中を押されるように、溜まっていた有給を消化して少し早い休みをとることにした。(途中、ギリギリまで働こうとした)

それが、今だ。

昔と違って、ワンルームではない。ファミリータイプの昔に比べたら立派な家。
だけど、食べているのは、2人で過ごしていた時期、それも、何にもなかった学生時代、よく作ってくれたペペロンチーノ。

「食べたいだけ、食べていいよ」
とお皿を置いてくれた夫は苦笑いしながら、足りないので、冷凍のフライドチキンを温めはじめた。特に会話があるわけでもない。正味、30分くらいの話。

それでも、これを書いていると、そのときの苦笑いを思い出して、涙が出てくる。

わたしは、やっぱり、夫が大好きだということ。
そして、この何年もほしかったのは、2人でのゆっくりした時間だった。
子どもはとっても好きだし、たからものなんだけど、それだけじゃないの。
ごめんね。

出産まであと予定では1カ月ちょっと。
生まれたら、猛烈な戦争になることはわかっている。
ふたりで余裕がなくなることは、経験上、知っている。

でも、その前に、自分がいちばん幸せだと思う瞬間の一つを知った。
そして、その瞬間を、取り戻す一瞬があった。

不思議なもので、パパママであると同時に、やっぱり、私にとって夫は恋人だった。向こうはどう思っているかわからないが。

私たちは、守らなければならない子どもがいる。
だけど、できたら、ときどきでいいから、恋人の瞬間も過ごしたいな。

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