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巻き込む家

コロナ禍を経験する事で「場所に束縛されなくとも仕事が出来る働き方」に気づけた人たちは少なくない。特に子育て世帯にとって、仕事はリモートで大半の事はこなしていける事に気づけた。これによりわざわざ都心で暮らしていくよりも、より魅力的な環境の中で子どもを育てていく事を選び、より豊かな暮らし方を求めて生活空間を郊外へと移すという選択に舵をきる人々が多数見受けられるようになった。
子どもの為やパートナーの為、はたまた近隣、地域などなど、自分とは別の人生においての個の役割を見出しながら人と関わる暮らし。適度な距離感を保ちながら「共生」を受入れることができる環境にこそ、郊外生活の魅力があると考える。

「巻き込む家」と名付けたこの家は近隣地域が生活に入り込む暮らしを思い浮かべながら、これを受け入れられるよう、中庭の一部を開いた構成としている。
この家の特徴的な形でもある三角中庭の平面構成によって各部屋のプライバシーが緩やかに確保され、適度な距離感をも創出している。これにより地域と関わりを持ちつつも程よい距離感を保ちながらプライバシーをも確保するという新しい地域コミュニティ形成型住宅を提案する。
地域が健全である事で豊かな経験を子どもたちに届ける事が出来る。
子どもは地域が育てると言っても過言ではない。
都市空間では子どもが主体的に居られる場所がなくなってしまっていると聞く。
「永く住み続けることができる本当の価値ある住まい」には、子どもが主体的に生きる力を育む地域づくりが不可欠だと考える。地域を巻き込んだこの住宅をきっかけに新たな「まちぐらし」のあり方を提案していきたいと考えている。


⚫︎ 三角平面形状の中庭は、各部屋を緩やかに分けるとともに、各部屋の空間に変化をもたらす。

⚫︎土間状の玄関は作業場であり、リモートワークの為の場であり、子どもの遊び場であり、最小限のリノベーションを施すことにより、将来大きくなった時の子どもの部屋であり、はたまた、やがて祖父母を受入れる為の空間でもありと、時の変化にも対応した「ニュートラルな位置づけの部屋」として機能する。

⚫︎片流れ屋根によって生まれた二層吹抜け空間は、ダイニングであるとともに、ひなたぼっこの為の場所であり、子ども部屋がはみ出てきたような居場所であり、近隣住人の寄合いの場でもありと、機能を決め切らない場所として、現代の縁側空間としての役割を果たす。
⚫︎キッチンからは三角形状の平面構成を活かして、部屋の隅々まで見通しの効く構成となっている。これにより子どもを安心して見守れる空間構成を実現している。
⚫︎二層部分は、ベランダと物置のみの構成となっている。夏はバーベキューをしたり、或いは考え事をする場所であったり、近所の猫と戯れる場所であったりと、一層部分のダイニングと関係を見せる立体的な縁側空間としての機能を果たす。更に将来的には部屋化することで、賃貸環境としての可能性をも考慮した計画となっている。

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