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プール(冬)

冬のプールが好きだ。
冷たいんだかぬるいんだかよくわからない水温。
機械のように泳ぐ青年。
水分で満腹になった空気。
そのすべてが安心材料になる。

秒針の強調された時計に一礼し強めに壁を蹴った。
鼓動にのせて水を掻く。
両足はどうでもいいや。
歩くときにさんざん使ってるから。
今は手のひらに集中する。
できるだけたくさんの水を巻き込むようにして掻く。
確認は要らない。
どうせ誰も傷つかない。
一番気持ちいいスピードで一番気持ちいい軌道を描く。
正攻法なんて知らない。
私は数字で踊れない。
せっかくならエレキを聴かせておくれ。
感電したついでに心拍数を上げたい。

何も考えない。
推進力様、ありがとう。
見える景色は一定で、脳みそはもう機能していない。
なんて幸せなんだろう。

右足にクチバシが触れる。
どうやらペンギンが迷い込んだらしい。
少し悩んだが、さほど泳力に自信がなかったので先を譲ることにした。
意外だったのはすれ違う際、一緒に焼き肉を食べに行く約束をしたことだ。
生臭い食事にはもう飽き飽きしていたそうだ。

塩素は入れすぎると幻覚を見せる効果があるらしい。


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