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明日の手前で

隣席の女の子のイヤフォンから音漏れしている、アップテンポな音楽を微かに聞きながら帰宅している。東海道線は気怠い空気の中、多くの駅をとばしてスピードに乗る。誰かの耳には心地よい音楽が、私の中には入ってきてくれない。外側ばかりが気忙しい、金曜の夜。

ターミナル駅で乗り換えて、流れる人波の中、わずかな安息を音楽に求めた。時間をほどいていくようなミドルテンポ。「出さない手紙は届かない」ふと意識に残った歌のことばに、少しだけ背中を押されて。

車窓を通り過ぎていった夜の中心のような街のネオンに、歩みつづける意志の強さを浮き彫りにされ、覚悟はあるか、と問われた気がした。


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