最近、野球を真面目に見始めた。
真面目に見始めた、とは、試合の最初から最後までを見守るようになった、という意味である。
アルバイト先のお店にテレビが備えつけられており、そのチャンネルがほぼ100%野球に設定されているからだ。
これまでの人生では、野球に触れる機会はほとんどなかった。
中学生の頃に吹奏楽部だったため、その関係で一度だけ遠征した覚えはあるが、応援に駆り出されたわけではなかったので試合自体は見ていない。
大会のオープニングで演奏する的な立ち位置だった。
また、体育でやったのはソフトボールで、あくまでお試しレベルのものだった。
ゲッツーだとか犠牲フライだとかある程度のルールは把握していたし、「すごい」プレーもなんとなく察することはできた。
「確かに点が入ったり取られたりしているのを見ているのは面白いよね」ぐらいの認識だった。
そんな感じだったのが、今は野球で一喜一憂する人たちが身近にたくさんいる環境に身を置いている。
これは「最近野球を見始めた人」としての覚書だ。
「推し球団」の概念
阪神が勝ったら喜ぶ、負けたら悲しむ。
私は関西出身関西育ちなので、周囲はまあ総じてそんな感じだった。
私にとって「阪神」は、ただでさえ関心のなかった自分の中学校や高校の野球チームよりも、さらに遠い存在だ。
球団へのこだわりなどあるはずもない。
野球を見ているときは「勝っているチーム」を応援している方が楽しかった。
だって勝っているので。
それが最近は、そうじゃない人たちを間近で見ている。
自分の好きなチームが勝ったら喜び、負けたら悲しみ、文句を言ったりもする。
そういう人たちを見ながら、彼らにとっての阪神は自分に何にあたるんだろう、と考えた。
まあ「推し」だよなぁ、という結論に至った。
私の推しはYoutubeで動画を投稿しているゲーム実況者グループだ。
そのため、彼らは他の実況者さんたちとゲームで対戦することがあったりする。
彼らが勝って喜ぶのを見るのは嬉しいし、負けているのを見るのは悲しい。
元々は「勝っているチームを応援している方が楽しい」だったのが、「推しているチームを応援したい」という考え方を理解できるようになった。
なるほど確かに熱くもなるわけだ、そのためだけに開店直後から店に入ってテレビがよく見える席を陣取るわけだ。
点が入れば、店内のお客さん皆がテレビを見上げて「おぉー!」と盛り上がるわけだ。
「推し選手」ができる
私が最初に名前を覚えたのはノイジー選手だ。
阪神というチームとして野球を見始めたときに、唯一、一軍入りしていたカタカナの名前の人だったからだ。
つまり分かりやすかったからである。
それからもいろんな選手を覚えた。
よく打つ人、大きく打つ人、ピッチャーの人、脚の早い人、みたいなざっくりした枠組みではあるが、大きな進歩だ。
名前と顔が一致する人も増えてきた。
次第に、この人が出てくると「おっ!」と思う選手が出てきた。
ここでも推しの概念だった。
「好き」とはちょっと違って、別に好きとか嫌いとかはないのだが、でもその人が出てくると特別に贔屓したくなるような感情。
がんばれ!って思って、打てばさすがー!って思うし、打てなければあぁー……って思う。
それだけの、当たり前のように見えることでも、今までなら絶対になかったことだった。
イメージと違っていたこと
①勝ち負けの重みは意外と軽い。
いやそんなことねえわと突っ込まれそうですけど、もっと大事で重大なものだと思っていました。
実際に見てみるとなんか同じ球団と何回も試合してるし、合計数十試合とかやってるし、想像よりは軽かった。
なんかそれこそ吹奏楽と同じように、年に数回のチャンスなイメージだったんでしょうね。
②ヒット1つの重みは意外と重い。
ホームランがすごいのは当然で、2塁ヒット3塁ヒットがすごいのも分かっていましたが、普通のヒットって思ってたよりすごく貴重だった。
1回でたくさんの点が入るのは、満塁からのホームランパコーンのパターンだと思っていたが、ヒット→ヒット→ヒット→……というパターンも、イメージしていた以上に結構ある。
ヒットを繋いでいくスポーツなんだな、と感じた。
③盗塁が思っていたよりも多い。
ピッチャーもよく振り返って警戒しているし、めったに起こらないようなイメージがあったのだが、割とよく見かける。
けど何回見ても格好いいですね、あれ。
というか、あっ今走っていいタイミングなんだ!?あっ点入るんだ!?みたいなことが結構あるので、そのあたりルールが把握できていないところなんだろうなと思う。
スポーツ観戦を楽しむ人の気持ちが少し分かった。
個人的に特に好きなのは、守備のスーパープレイだ。
フライのボールにめちゃくちゃ走っていって飛び込んでキャッチするとか、打たれた直後のボールを意味の分からん反応速度でキャッチするとか。
うおー!ってなる。
というかいや本当にすごいと思うのが、ボールをキャッチする→投げるの動作の移り変わりの速さだ。
その姿勢でその正確さのボール投げれる!?ってなるやつ。
それこそ飛び込んでキャッチして、バネみたいに立ち上がってシュッて投げて、塁を踏んで待機してた人のグローブにバスッと届くやつ。
意味がわからない。すごすぎる。
体育だけは本当にダメだったので、そういう意味でもすごく尊敬する。
なんの感情もなく数字を眺めるだけの対象だったものが、今や感情の浮き沈みを伴う立派な娯楽となった。
不思議なものだ。
自分の人生で、スポーツを見て楽しむことになるとは思ってもみなかった。
仕事中、お客さんがいないときはテレビを見ているのだが、退屈することがなくなった。TwitterやYahoo!ニュースを眺めているとき、野球のニュースに目を留めるようになった。バイト仲間やお客さんと一緒に盛り上がれるようにもなった。
スポーツ観戦なんてくだらない、なんてことを思っていたわけではない。
でも自分から遠いものだと考えていたことは確かだ。
食わず嫌いせずに、首を突っ込んでみれば自分なりの面白さや魅力が見つかることもあるんだ、と気づけた良いきっかけになった。
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