文化欄#36 文化庁の京都移転の検証

文化庁が本日(5月15日)から本格的に京都にて業務を開始するという。
そんな中、以下のような記事があった。

実験的に文化庁の職員がリモートワークを実施した結果、国会議員への説明などでは、ほとんどの場合にリモート対応ができなかったというものだ。

この検証は、文化庁が去年2月の通常国会の会期中、京都に移転する部署の全職員を対象に、東京 品川の貸しオフィスで勤務してもらい、2週間にわたって行いました。
NHKが情報公開請求で検証の記録を入手し、関係者に取材した結果、国会議員への説明や、政党の会議への参加は、期間中、合わせて17回ありましたが、リモートで対応できたケースは1回もなく、すべて対面で対応していたことが分かりました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230515/k10014067511000.html

これは品川のオフィスで実験的に行っていたものだから、同じ東京にいるのであれば直接説明してほしい・・・という話であれば、まだわからなくはない。

しかし2019年と20年に、試験的に京都で勤務した職員の検証のケースでも、国会議員に説明する212回の機会のうち、実際にリモートで説明できたのは8回にとどまっているという。
同記事によると、20分間の説明のために京都-東京を出張したというケースもあるようだ(これは極端な例であると考えたいが)。

文化庁はこういった出張を年1400回想定し、今年度予算に4300万円を計上しているという。
上記の記事に掲載されているケースのうち、対面を要する機会として最も多かったのは「国会議員への説明」という。
リモートワークや省庁の地方移転を推進した側が地方移転の阻害要因になっているとすれば、なんともお粗末な話ではある。

ただ、実際問題として、仮に国会議員からの要求・要望を跳ね除け(基本的にそういうことはできないと思うが)リモートワークを「徹底」した結果、国会議員や政党への説明の機会などが失われ、文化政策の形成に文化庁自体が関与できる機会や可能性が失われるのであるとすれば、「何のための移転なのか」という話にもなりかねない。

現状、省庁移転を全面的に行っているのは現状文化庁のみ(その文化庁自体も一定数の職員を未だ東京に配備しているのだが)。もちろん、本日から本格的に京都での業務が開始ということで、今後は少しずつ改善されていくのだろう(と願いたい)が、結果的に文化庁が文化政策の推進ではなく国会議員のリモートワークの推進に寄与したということになると、皮肉なものではある。


Agency for Cultural Affairs in Japan starts full-scale work in Kyoto.
However, according to verification, many cases were confirmed that they couldn't work remotely and needed to go on a business trip to Tokyo.
Most cases of bureaucratic staff going to Tokyo and having face-to-face meetings were explanations to Diet members.
In the current fiscal year, the agency has budgeted 43 million yen for similar cases.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?