文化欄#27 経団連がコンテンツ産業に対する政策提言を発表

4月11日付で日本経済団体連合会(経団連)が、コンテンツ産業に関する提言「Entertainment Contents ∞ 2023」を発表した。

本提言は「最も成長可能性の高い漫画・アニメ・ゲーム・実写/ドラマ・音楽の5つの分野」の産業に必要な施策を提言している。

提言では、10年後の2033年の段階で「世界における日本発コンテンツのプレゼンスを持続的に拡大する」こと、またその際「参考KPIとして、日本発コンテンツの海外市場規模が、現在の4.5兆円(2021年)11から15~20兆円(2033年)へと成長すること」をあるべき将来像として提示している。

また、具体的な内容として、「コンテンツの海外展開の拡大や外国人人材を呼び込むこと」「コンテンツに関わる人材の育成」などが、具体的に実施されるべき施策として記載されている。

文化政策まわりのところでは、
・文化庁のリカレント事業や人材育成事業の対象に、漫画やゲームも含めた分野の拡充
・コンテンツ庁の設置
・エンタメ・文化施設を新規に設置する商業施設に対する建蔽率・容積率の上限緩和を認める特例
などが提案されている。

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以下は雑感。

全体として、公募型コンペティションの実施や外国人クリエイターの受け入れ態勢の整備によって「とがった才能」「特に優秀な人材」を支援するといった方向性や、コンテンツ発信拠点の拡充、コンテンツの情報発信機能の強化が示されているように思う。むろんそれらは重要なことである。

しかし、現状多くのコンテンツ産業従事者が直面しているのは、長時間労働や低賃金での労働、法務・労務面での環境整備の不十分さなどから起因する問題なのではないかと思う。

本提言内でも1-⑵-②「海外企業との契約、法務・会計・税務面での支援」(p11)、⑤「コンプライアンス遵守等環境改善」(p14)などが記載されているが、全体の中では少ない分量であるうえ、環境改善の項目は、「『文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン』の活用を進めることが重要であり、文化庁においても積極的なプロモーションを求める」「改善の取り組みや好事例については、政府・業界団体において積極的に国内外に発信すべき」といった提言にとどまっている。

当然、本提言が「コンテンツ産業の海外進出を経団連という団体から見た場合」のものであるということは留意が必要だが、政策としては、むしろ多くの人材が安定的に、かつ継続的に活動を続けれられる環境・基盤を整備することこそがまず必要なのではないかと思う。
(もちろん、コンテンツ産業という分野全体として「労働時間」をどこまで規定できるのかといった難しさがあることには留意が必要である)

また、3-⑶外国人材の呼び込みに関しても、「在留資格手続の簡素化」や「入国後の生活サポート」(具体的内容は不明)などが記載されているが、むしろ優秀な外国人材の獲得にこそ、報酬面などの待遇の向上など、競争原理を強く働かせる必要があるのではないだろうか。

もちろん「コンプライアンス遵守等環境改善」自体や、コンテンツ産業に関する関連統計の整備などには賛成。それらは推進されるとよいと思う。

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