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記事一覧

孤独と距離の詩

さざなみの届かない場所まで、きみがぼくの手をとって走った、希望も、欲望も、絶望も、きみの前ではただの白紙で、何もないことがぼくの特別、どうか一度だけの瞳をぼくに差し向けて。

触れることの詩

生きるための呼吸に必要な星のひかりのひとすじ、繊細ということばに軽々しく頼らずに触れる地面のつめたさ、愛は安寧ではないもののはずだった、一生分の身体をあげるから、夜明けの色に支配されたい。

理科室の詩

生きていますか、という問いはとても残酷で、きみのかじるりんごの夕焼け色がひりついて痛かった、味方でいてね、離れないでね、今日に至るまでの臆病を綴ったカルテ、いつまでも輝きとは無縁の僕でいたかった。何度、あと何度、この世界に生まれていないみたいに笑えるでしょう。

女性性の詩

ほがらかなあなたを見ていられるというそのことが、わたしの祝福でした、きれいな色しか使わずに描いた絵に触れられないのはうつくしくも尊くもない過去があるからだなんて、簡単に言えるきみはかわいい。

男性性の詩

たとえば、と言うそのときに、たとえられなかった無数のものたちを感じるから、僕は永遠に存在から離れられず、永遠に僕のままだった、きみのみちたりている顔を見る、そのときにだけ純粋でいられたなら。

ぱちん、と日常が弾ける音がして、その隙間から光が差す、刺すときにこそ存在があり、生きているがあって、だからかみさまは存在しない、ぼくだけを見て、とまぶしくはちきれそうなわがままを言えたなら。

そこにいない

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春のまどろみの詩

いつも同じ注文ね、と笑われるのがほんとうは嬉しかったから、ぼくは涼しい顔でちいさなフルーツパフェを食べていた、あの日はそう、暖かく乾いた風が吹いていて、不安なんてないみたいだったね、ぼくは巡礼するように、今日も死なずに生きているのです。

完璧な希望について、そんなものはないよときみが寂しそうにほほえむとき、東京は雨が降っていて、生きるための明日を部屋の隅に置き忘れてきたみたいだった、一生味方でい

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そばにいることの詩

明かりもつけずに窓辺で本を読むきみの、ぼくなんて必要ないみたいな瞳の輝きを、永遠におぼえていたかった、おぼえているということはあいしているということで、愛は振り解けないから、滴のように滴り続ける。

離れる、と、離ればなれになる、どちらかを選ばなけれはならないとしたら、僕のこころをきみが選んでほしい、明日も雨が降るみたい、後悔しないと誓ってみたかった、どこにも行けないのはきみの愛が部屋に散らばって

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詩/また同じ

汚い、汚い、汚い、
性を綺麗に言い換えただけの愛、そこには含まれずにこぼれてしまう愛、

自分の引き出しの乏しさと、子宮口の微かな痛み、混乱の中にもたち現れるのは自分の愚かさ、また恋愛、薄ぺらい、

毎度毎度懲りずに同じ理由ばかりで泣いている、愚かしい、通り一遍の、繰り返し、繰り返し、

全てなんて吐き出せないけれど、魂の抜けたような気だるい身体でそれでも思うのは歌うこと、歌うことなんだよ、シンプ

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詩/存在の詩

癒してあげる、
とわたしが言う、
そのとき損なわれるわたしの部分を、
あなたはいとおしいその名でよぶ、
さびしいと言えてしまうほど愚鈍で平凡な、
あなたを見ていられないの、
どうしてかみさまはわたしに、
愛することのできる身体を与えたの。

しんでいいよ、とだれもゆるしてくれない。

きれいだね、かわいいね、
きみのこころはうつくしいね、
花が咲いたら見違えるようでしょう、
美しい言葉に耐えられぬ

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詩/クリスマスの詩

ケーキの入っている冷蔵庫を開けると漂う生クリームの、パーティーを待つ匂い、これからきみはあの人の元へと走るだろう、シャンパングラスなんてなくても、あなたを思うことはできるよ、手放さないもの、手放すもの、すべてが今夜だけは、きみのいのちを祝福しますように、祈るぼくをどうか照らして。

詩/無限と琴線の詩

恋することができるなら、きみは花びらと同じだけ価値があるよ。見たことないほど鋭利な星の美しさの、その真ん中に位置するのがきみの使命、そう告げることをためらわないほど、うつくしく偏った人間になりたかった。わたしの声は穏やかですか、当たり障りがないですか、この声で切実な音楽とことばを発することを、どうか、人間のいのちであるとみとめてくれやしないだろうか。存在は、影のある実存は、手の届くところにあると思

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詩をプレゼントした(5)#ミスiD2022

#いいねしてくれた人がもし詩だったとしたときの最初の一文を考える

ついに、該当ツイートへのいいねが100を超えた。ありがたい限り。まだ全員には書けていませんが、100を前にして一旦まとめ。詩ってなんなんでしょうね。自分で書いているけど定義は言語化していません。

これはみんなの意見です、常温のナイフを誰もが隠し持っている、それを知っているぼくは世界でただ一人だけ、この秘密を一生きみに伝えずに済み

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特別な女の子であるための螺旋階段

特別な女の子であるための螺旋階段

耳に残っている言葉があるの。いつまでも、いつまでも、追いかけてくる。
誰もわたしの人生を変えることはできないんだって、わかるのに25年もかかってしまったね。

たとえば、どんな靴を履いてもいいんだってこと、だれも教えてくれなかった。ずっと、あなたに憧れていました。口にするのさえ恐ろしいほどに。あなたは海の向こうにあった。あなたとともに生きたい気持ちを認めてしまったら、その距離の遠さにわたしは絶望し

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詩/愛の詩

愛は、愛と名のつくすべては、あからさまな愛は。愛が蝕んでいく身体も、視界も、意識も、すべてあなたのせい。目をそらすな、お前のせいだ。利発そうなふりなんてしていられないくらい、どうして必死になれないの、わたしは怒っている、あなたの柔らかな仮面、それ以外のあなたが見たかっただけ。