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SOULにまつわる良曲を色々とご紹介

「ソウル・フード」という言い方を日本語の文章の中でも見かけることがあります。

「その地域に特有の料理。その地域で親しまれている郷土料理。「九州の—」」
(小学館デジタル大辞泉)

まとまったお休みが取れ、よその土地に行ってそこの「ソウル・フード」に出会った方もいらっしゃるでしょう。

soulの用法

この言葉はゲルマン語系であり、ドイツ語Seeleゼーレと同源です。

「魂」

「魂」「霊魂」という訳語がまず思い浮かぶのではないでしょうか。

「the immortality of the soul
霊魂の不滅」
(小学館プログレッシブ英和中辞典)

ドイツ語Seeleも同様です。

「seine Seele dem Teufel verschreiben
悪魔に魂を売り渡す」
(小学館プログレッシブ独和辞典)

動詞verschreibenフェアシュライブンの中核になっている要素「schreib」は「書く」という話であり、verschreiben全体はここでは「譲渡確約書を作る」という意味です。

何となく、Johann Wolfgang von Goetheヨハン・ヴォルフガンク・フォン・グータの『Faustファウスト』に出てくる、ファウスト博士が

「悪魔メフィストと出会い、死後の魂の服従を交換条件に、現世で人生のあらゆる快楽や悲哀を体験させるという契約を交わす」
(ウィキペディア)

という話を思い出させます。

似たような「神話」を持つのが、アメリカのギター奏者兼歌手Robert Johnsonロバート・ジョンスンです。

「Johnson's poorly documented life and death have given rise to much legend. The one most closely associated with him is that he sold his soul to the devil at a local crossroads to achieve musical success.
(ジョンスンの人生と死は記録が乏しいので、多くの伝説が生まれた。ジョンスンと言えば…ということで最も連想される伝説は、地元の十字路で悪魔に魂を売って音楽的成功を収めた、というものである)」
ウィキペディア

そんな話が生まれるほど、ギターの腕前がすごかった、ということです。

彼の作品で最もよく知られているのは、やはり『Cross Road Blues』(訳すなら『十字路のブルーズ』か)と呼ばれる曲です。

しかしなぜ「十字路」?

「This is based largely on folklore of the American South that identifies a crossroads as the site where such pacts are made, although the lyrics do not contain any references to Satan or a Faustian bargain.
(この話が主として基にしているのは、十字路とはそのような契約が結ばれる現場とみなすアメリカ南部の民間伝承である。もっともこの曲の歌詞中には悪魔にも、ファウスト的契約にも言及はないのだが)」(

『Cross Road Blues』
https://www.youtube.com/watch?v=bJ_7nYEpkBo

「心」「精神」

「bare one's soul
心を打ち明ける
put one's heart and soul into ...
…に身も心も打ち込む」
(小学館プログレッシブ英和中辞典)

「eine zarte Seele haben
心がこまやかである
Sie hat keine Seele.
彼女には情がない」
(小学館プログレッシブ独和辞典)

soul mateという言葉のsoulはこの意味であると思われます。

「心の友,相性のいい人(◆特に異性)」
(小学館プログレッシブ英和中辞典)

アメリカの歌手Michael Franksマイクル・フランクスの曲に『Soul Mate』があります。(西暦1993年/平成5年)

『Soul Mate』
https://www.youtube.com/watch?v=Ke6NuOUpw0Y

歌詞中には「こういうsoul mateを見つけなさい」というアドヴァイスが出てきており、作者フランクスの持論が展開されます。

「someone whose love will go the distance
(最後まで愛して抜いてくれる人)」

「whose devotion's like a candle in the night
(闇夜のともしびのように献身してくれる人)」

「to help you navigate the rapids that rise up along the river of your life
(あなたが人生の川を進むに際して水位の上がる急流をうまく通過できるように助力してくれる人)」

「ソウル・ミュージック」などのsoul

守備範囲をより狭めた

「((米略式))アメリカ黒人の心[精神,魂];
〔形容詞的に〕アメリカ黒人の心を持った[が生み出す]」
(小学館プログレッシブ英和中辞典)

という使い方もあります。

実は冒頭で触れた「ソウル・フード」の意味についての引用は定義の「2」であり、「1」は以下の通りです。

「米国南部の黒人の伝統的な料理。豚の内臓の煮込み、ナマズのフライ、コーンブレッドなど。」
(小学館デジタル大辞泉)

国語辞典にはこのように説明されているのですが、英語の辞書には「1」の方しか載っていません。

「traditional foods that are cooked and eaten by African-Americans in the southern US
(合衆国南部のアフリカ系アメリカ人が調理して食べる伝統的料理)」
(ロングマン現代英英辞典)

「food (such as chitterlings, ham hocks, and collard greens) traditionally eaten by southern Black Americans
(南部の黒人アメリカ人によって伝統的に食されている食べ物(豚などの小腸、足のすぐ上の脚からの肉の小さなカット、コラードの葉など))」
(Merriam-Webster)

ですから「2」の意味では、英語の文章では使わない方がよさそうです。

アメリカの2人組歌手Sam & Daveサム&デイヴのヒット曲『Soul Man』が発表されたのは西暦1967年/昭和42年で、いわゆる公民権運動の頃の社会情勢がこの曲の背景としてあると言われています。

サビの部分で「I'm a soul man」と繰り返し歌うのですが、表面上は「愛の情熱に満ちた心を持った男」と読み取れるのに対して、根底では、黒人であることの自尊心を持った男であると主張しているのです。

以下の動画は発売と同じ年の生演奏の模様を収めたもので、大変エネルギーに溢れたパフォーマンスだと思います。

『Sam & Dave - Soul Man (1967)』
https://www.youtube.com/watch?v=5ONNSlk--tE

「人」

「魂」や「心」の持ち主である「人」を意味する用法も存在します。

「There was not a soul there.
そこには人っ子ひとりいなかった
Be a good soul and do it.
いい子だからそうしておくれ」
(研究社新英和中辞典)

「Keine Seele ist da.
人っ子ひとりいない
eine schöne Seele
美しい魂の持ち主」
(小学館プログレッシブ独和辞典)

まだ1か月も経っていないにもかかわらず、随分前のことのようにも思えるクリスマス。

その時期に流れる歌の代表的なものである『Rudolph the Red-Nosed Reindeer赤鼻のトナカイ、ルドルフ』がアメリカで発売されたのは西暦1949年/昭和24年のことでしたが、これを歌ったGene Autryジーン・オートリーは翌50年にまたしてもクリスマスにちなんだ作品を出したのでした。

Frosty the Snowman雪だるま、フロスティ』です。

歌い出しからの歌詞はこんな感じです。

「Frosty the Snowman was a jolly happy soul with a corncob pipe and a button nose and two eyes made out of coal
(雪だるまのフロスティは陽気で幸せそうなヤツで、トウモロコシの穂軸を使ったパイプをくわえ、鼻はボタンで、2つの目は石炭で出来ていた)」

『Frosty the Snowman (with lyrics)』
https://www.youtube.com/watch?v=k6zW225k_O0

ラテン語系統の「ソウル」

フランス語

フランス語ではâmeアームとなります。

「croire en l'immortalité de l'âme
霊魂の不滅を信じる
avoir une âme généreuse
おおらかな心を持っている
Il n'y a pas âme qui vive.
人っ子一人いない」
(小学館プログレッシブ仏和辞典)

ご覧のように英語soulやドイツ語Seeleで見たのと似たような風景が広がっています。

「rencontrer [trouver] l'âme sœur
心の友に出会う[を見つける]
生涯の伴侶に出会う[を見つける]」(同)

これがsoul mate的表現であるようです。

イタリア語

フランス語âmeはラテン語のanimaに由来しますが、そのつづりがそのまま生きているのがイタリア語animaアーニマです。

「vendere l'anima al diavolo
悪魔に魂を売り渡す
recitare con anima
感情を込めて演ずる
Per le strade non c'è anima viva.
通りには人っ子一人いない」
(小学館伊和中辞典)

同語源の言葉がもう1つ、almaアールマというつづりであるのですが、これは「魂」「精神」を意味する詩的な言葉として存在しています。

スペイン語

スペイン語の方では逆にalmaアルマが「魂」系の一般語であり、ánimaは「煉獄にいる死者の霊」を表す特殊な言葉であるようです。

「vender el alma al diablo
悪魔に魂を売り渡す」

「Esos tíos no tienen alma.
あいつらには心がないんだ
No había ni un alma (viviente) en la calle.
街には誰一人いなかった」
(小学館西和中辞典)

アメリカのトランペット奏者Dizzy Gillespieディジー・ガレスピーの曲『Con Almaコン・アルマ』(西暦1954年/昭和29年発表)は様々な音楽家がカバーしている、頻繁な転調が見られる名曲です。

ラテン・アメリカのリズムを採用しているのでスペイン語を使った題名にしているのかと思われます。
(conはwithに相当する前置詞)

次の動画はご本人のライヴ映像です。

『Dizzy Gillespie in Denmark '70 - Con Alma』
https://www.youtube.com/watch?v=FjnMXaExUgM

話はラテン語系統から英語に戻ってきた

「動物」

animaを見た時点でピンと来たと思いますが、英語のanimalは語源的なつながりのある言葉です。

ご存じの通り、人間以外の「動物」のことですが、それをあえて人間に使うと「人でなし」ということになります。

しかし元々は人間も含めた「生きているもの」というのがラテン語における意味だったのです。

形容詞として用いると「animal fat動物性脂肪」とか「animal spirits元気、血気」などとなります。

後者は経済に関する文章で目にすることがあります。

「皆さんは「アニマルスピリッツ」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか。ビジネス書などでは企業家精神などとして紹介されているこの言葉は、経済学者ケインズが使用した言葉で、不確実な状況下を切り抜ける企業の経済活動の原動力になるものとして注目されています。」

これは経済産業省のサイトにある「経済解析室ひと言解説集」で取り上げられた「企業の「アニマルスピリッツ」の見える化に挑戦しました」という文章の一部です。
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20161202hitokoto.html

「生気」

さらに動詞animateもanimaに由来する言葉であり、「生命を吹き込む」「活気づける」といった意味になります。

「Her joy animated her conversation.
喜びで彼女の会話ははずんだ.
He was animated by her words.
彼女の言葉で彼は元気づけられた」
(研究社新英和中辞典)

これの名詞形がanimationであり、「生気」「活気」を表す言葉です。

「speak with animation
熱心に[活発に]話す」(同)

漫画に生命を吹き込んで動かす、といった感じで「アニメーション」⇒「アニメ」という言い方が定着したものと思われます。

アメリカの歌手Sammy Hagarサミー・ヘイガーと、バンドJourneyジャーニーのギター奏者Neal Schonニール・ショーンが中心となって制作されたアルバム『Through the Fire』(西暦1984年/昭和59年発表)。

一旦ライヴを録音しておいて、そこに後からスタジオで音を足していくという手法で作られており、ライヴの映像も出回っています。

その時にヘイガーの来ていたTシャツには日本語で「寿司 さしみ」と胸に書かれていますが、だからと言って、アルバム中の1曲である『Animation』は「俺たちは日本のアニメが大好きで…」などという内容ではありません。

「When there is no animation, we slowly lose control.」

「ゆるやかに制禦を失っていく」と言っているんですから、このanimationは「生気」「活気」の方でしょう。

『HSAS (LIVE) "ANIMATION"』
https://www.youtube.com/watch?v=cZzoZL8FLZw

お読みいただき、ありがとうございました。ではまた。

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