アニメ「16bitセンセーション」感想(最終話まで)

 アニメ「16bitセンセーション」感想(2話まで)

 16bitセンセーションを最終話まで見る。なんにでも「いっちょかみ」する酷薄(こくすい)オタク歌手がナガブチばりに「この国のタカラぁ!」と歌いあげるわりに印象の薄いオープニング曲も、無理やり歌詞の字数をあわせるための「なれど」語尾がヘンだなあと思いながら、最後には慣れてしまいました。ストーリー展開は悪い意味での「予定調和はずし」になっていて、例えるならチュンソフトのノベルゲーで分岐を水増しするためにむりくり入れられた、奇抜なバッドエンド・ルートみたいな中身をトゥルー・エンドに持ってきてる感じなのです。面識のある知人が脚本を担当している回もあるんですけど、「どうひっくり返したって面白くなりようのないプロット」をわたされての敗戦処理のようで、気の毒に感じました。あのさあ、外野でふんぞりかえってないで、キミとかキミとかがちゃんと出張ってシナリオを担当しなきゃダメじゃん! 同人誌の表紙サギみたいなもんじゃん、これ!

 あらためて全体をふりかえっても、「突然、切断的に会話を切りあげて、あらぬ方向へと走りだす」のを延々と映す場面が非常に多くて、思わず画面の前で「おまえはトム・クルーズか!」とツッコまされたくらいです。もしかするとこれは、「奇矯な性格をしたオッサン高校生が、上から目線で女子を値踏みしてから、他のロケーションへと移動する」という、いにしえの恋愛ADVに対する批判かオマージュではないのかと疑ったくらいですが、結局のところ、脚本で処理できないほどプロットがまずいだけのことでした。黎明期からネットに棲息する人物たちが、自らを自虐的に称して表現する言葉になぞらえていうなら、この作品自体が「エロゲー老人会」としか形容できない中身になっており、結果として「エロゲー業界は、なぜ衰退したのか?」という問いに対する、意図せぬ痛烈な回答になってしまっています。

 もちろん、何人かの優秀なストーリーテラーを一般文芸へとハネあげるスプリングボードの役目をはたしていた時期を、否定はしません。ですが、半島や大陸をふくめた東アジアにおけるフィクションレベルの急激な上昇を目のあたりにする現在、かつてのエロゲー隆盛の正味が「16bitセンセーションぐらいのクオリティ」にすぎなかったことをあらためて突きつけられたようで、どこかくやしい気持ちでいっぱいです。「テキストサイトが地方大会なら、商業エロゲーは甲子園」ぐらいの感覚があった時代の生き残りとしては、まことに残念でなりません。

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