ゲーム「スターフィールド(開始20時間)」感想

 スターフィールドを黙々とプレイ中。あまりにも黙々と集中してやってしまうので、タイマーをセットしておかないと、つい大人の義務の遂行を忘れてしまうほどです。本作をまともに動かすには、原神のロード時間がいまや気絶するほど長くなり、崩スタは上から2番目の画質でもカクつくようなスペックではまったくお話にならないため、数年ぶりにデスクトップPCの新調にまでおよびました(「家電の更新を促すエンターテイメント」って、すごく昭和感ないですか?)。なんとなれば、Fallout3とNewVegasをガッチャンコしたtwo wastelandsに、決して人には言えないmodを大量導入し、もし人に言ったらヒかれるぐらいの時間を遊んだ生粋のベセスダっ子にとって、以後の10年をプレイし続けるだろうゲームにかける投資としては、むしろ安すぎるぐらいのものです。家庭内におけるエンゲル係数の教育費版が近年、急速に下落していることも、この昏いオタク趣味への蕩尽をあと押ししてくれました(背後には、眉間に深いシワを刻んで腕を組む家人)。これから語ることは、「バニラで数十時間」ーーDLSSを有効にするmodだけは入れたーーという来たる総プレイ時間の0.1%にも満たない、「高級スポーツカーの助手席に尻をのせた」ぐらいの段階での感想としてお聞きください。

 まず、ざっくりとした全体の印象を申しますと、居住性や快適性を犠牲にしてエンジンの排気量だけを馬鹿デカくしたアメ車みたいな設計思想のゲームで、チュートリアルはいっさい不在のまま、世界最速のインディアンよろしく時速300キロでいきなり真空の宇宙へと放りだされます。例えるなら、「オー、ボーイ! 新車を購入したとき、販売員がハンドルの説明をしてくれるっていうのかい? 『これは方向制御に関わる操舵装置です』って具合にかい? 違うだろ、ガレージでパパのジャンクをバラすように、手と身体で覚えるんだよ! どうしてもチュートリアルが必要だってんなら、それはたった4文字、『ベ・セ・ス・ダ』さ!」と、肩をすくめたレッドネック野郎にあきれ顔で言われている感じと言えば、伝わるでしょうか。ゲーム部分を細かく見てゆきますと、アインシュタインならぬベセスダ物理学に支配された惑星地表のプレイフィールは、舞台が北斗の拳ばりのポスト・アポカリプスだろうが剣と魔法の中世ファンタジーだろうがずっと変わらなかった感覚を、25年前からビックリするほど何も変えないまま踏襲しています。まさに「実家のような安心感」ではあるのですが、ここ最近はホヨバの人間工学に元づいたクッション性の高い低負荷な3D世界に慣れていたため、開始直後はガチガチの鉄みたいな座席に4点式のシートベルトで固定され、まばたきできないよう上下のまぶたに器具を挿入されているような気分にはなりました。それこそ、前頭葉へじかにアイアンクローを入れられているような頭痛と3D酔い未満の感覚がつきまとったのですが、人間の偉大なる視覚および認識補正の力でしょうか、気がつけばそれは消えていました。

 最初のクエストで「ベセスダで拾わねば…無作法というもの…」などとつぶやきながら、施設内の拾えるものをスキャン視点ですべて拾いまくっていたら、重量超過の酸欠状態となり、同行する無機物コンパニオンに「キミ、なんでそんな"物"に執着あんの?」とからかわれたのには、たいそうムカつきました。すべてのジャンクをクラフト素材に変換できると思いこんでいたのにまったくそんなことはなく、結果として「無駄な努力の総天然色見本」みたいな道化師ムーブだったわけですが、いずれはすべてmodが解決してくれることでしょう。そして、なぜかいつものV.A.T.Sシステム(Pip-Boy!)が搭載されておらず、それに代わる重力を駆使した戦闘ギミックは使い勝手がはなはだ悪く、アクション部分はアルコール中毒かつ反射神経の衰えた中年にとって厳しい内容なのですが、いずれはすべてmodが解決してくれることでしょう。また、シリーズの伝統であったはずの四肢欠損や全裸パンイチも削除されており、マッパの死体を吊りあげてゲラゲラ笑うことさえできませんが、いずれはすべてmodが解決してくれることでしょう。

 あと、新要素の宇宙船によるドッグファイトは、スターラスターの丸パクりだったFC版スターウォーズのミレニアムファルコン・パートを、なぜか彷彿とさせました。この宇宙船どうしの戦闘、何が起こっているのかサッパリわからず、何度も何度も撃墜されるムービー(これ、いる?)を見せられた結果、敵影を見た瞬間にワープで他星系へとガン逃げするようになりましたが、いずれはすべてmodが解決してくれることでしょう。それと、銀河と惑星間のファストトラベルをなぜか個人のバックパック積載量で禁じていたり、光年単位の移動が可能なテクノロジーを持つ文明なのに、惑星内は地図なしの徒歩移動のみという不便さ(せめてホバー車くらいは用意しといてよ……)ですが、いずれはすべてmodが解決してくれることでしょう。さらに、スターウォーズやスタートレックのような異星人との邂逅を求めて銀河をさまよっても、出てくるのは昆虫と爬虫類を足したような知性の欠落したクリーチャーばかりですが、いずれはすべてmodが解決してくれることでしょう。個人的にかなり衝撃を受けたのは、主人公の所属する組織のメンバーであるサム・コーの娘が、バニラ・ベセスダなのに生々しいリアル児童だったことです。これは欧米の倫理基準に照らして、四肢欠損ならびに全裸パンイチとトレードオフになっている要素なのかもしれず、だとすればプラスマイナスでプラスが勝っていると言えます。いまのところ、キャラクリで児童をプレイアブルにすることはできませんが、いずれはすべてmodが解決してくれることでしょう。

 ここ2年ほどで触れたサイファイは、小説なら「三体」と「プロジェクト・ヘイル・メアリー」、ゲームなら「崩壊スターレイル」と本作「スターフィールド」ですが、見事なまでにSF的宇宙観の「洋の東西」を対比する作品群となっています。すなわち、東洋では「気の遠くなるような"縦"の時間軸での広がり」にセンス・オブ・ワンダーを感じるのに対して、西洋では「気の遠くなるような"横"の空間軸での広がり」にそれを感じるという点です。100年に一度、天女が舞い降りて羽衣の触れた大岩が砂となって消滅する時間を「一劫」と表現しますが、この過程を想像するだけでも、魂が肉体を離れて浮遊するような途方もなさを覚えます。一方で、物理的な速度の上限が秒速30万キロメートルに制約され、宇宙の辺縁はそのライトスピードを超えるペースで膨張しているという事実も、また同じように途方もない感覚をもたらします。もしかすると、この小さな惑星において100年を長らえない知性体の苦悩を、相対化の果てに無化してくれるスケール感が、SFなるものの正体なのかもしれないーーそんなことを考えました。私たちがこの矮小な人生において直面する困難も、いずれはすべてmodが解決してくれることを祈りつつ、スターフィールドについてのファースト・インプレッション未満な雑文を終わります。

 ゲーム「スターフィールド(1週目クリア)」感想

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