映画「おおかみこどもの雨と雪」感想

 あるかなきかのシナリオを演出の力のみで見せていく作りに、欠点を隠して長所を強調する、ようやく化粧の仕方を覚えた若い女性を見守るおじさまの気持ちにさせられた。

 しかしながら、この作品の与える感動の本質は、作品の力というよりむしろ人類の共有財産に依拠しており、己の体験した経験を思い出して、あるいは予期してのそれであることをどうしても否めない。ざっくりとしたまとめ方で、最後まで失点をしなかったことが、作品の高評価につながってる気がする。

 そして、「老い」を描くのにアニメーションほど不適当なジャンルはない。二度ばかり畜生と着床ファックをした少女が、年をとらないままロハスな子育てゴッコをしているという印象を受けてしまうのは、作品テーマにとって大きなマイナス点だ。作りこまれたCGを含めて全体的に実写よりのアプローチなのが、アニメーションのアドバンテージをことごとく放棄している感じがした。菅原文太の演じる頑固ジジイを含めて、じゃあもうこれ、実写で撮ればいいじゃんっていう。もっと低予算で一ヶ月くらいの撮影で同じもの撮れるじゃん、っていう。なんでわざわざアニメーションを選んだの、っていう。アニメーションの持つ特殊なディスアドバンテージを勘案されての一般評なんじゃないの、っていう。この作品を見てエヴァQの方を擁護したくなる気持ちにさせられたのは、我ながらすごくひねくれてると思う。

 あと、自分もそうなんだけど、大家族と核家族のちょうど狭間に生まれた世代にとって、長期休みに一週間ばかり帰郷する自然に満ちた農村は、原体験であると同時に記憶の中で絶対の正しさを持った場所へと聖別されてるんだろうなと思った。

 それと、青春期の抑えがたい獣性を言う方々は、ライフ・オブ・パイを見ればいいと思った。個人的に言えば、ネットで貴様らが取り沙汰する獣姦シーンが、少しもファックしてないことにガックリした。

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