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大事な資料はお手元に

「マキとマミ」という、2017~20年頃に話題になっていた漫画を今頃になって読んでいる。当時は何をしていたのか、存在すら気が付いていなかった。今では衰退して久しいジャンルのオタク仲間であるマキさんとマミちゃんと、その周辺の様々なジャンルの古参オタクたちのお話である。

マキさんが34歳、マミちゃんが25歳という設定なので、おそらく私はこの2人のちょうど間くらいの世代かと思う。おかげでどちらの世代のカルチャーもそこそこ知っており、なかなか胸えぐられるシーンも多く面白かった。
(息をするように身についてしまったネットスキルでオタクであることを悟られてしまうところはかなりダメージが大きかった)

中学~高校の頃、私も「イラストを描く系のオタク」だった。同人活動をするわけではなかったが、毎日のようにお絵かき掲示板へ出かけてはイラストを投稿し、アナログで描いたカラーイラストはプリンタのスキャナで取りこみ無料のペイントソフトで修正して、HTMLタグを駆使してジオシティーズに作った個人サイトに公開していた。
「マキとマミ」でも書かれていたが、よくもまあ中学生がHTMLタグ辞典片手にホームページなど作っていたものだと今思えば驚きである。その底知れぬ根気を、なぜ学校のマラソン大会で発揮しない。
しかしあの頃に培った様々なPCスキルは、少なからず現在の仕事でも生かされているので人生はわからないものだ。

当時私は紛れもなくオタクであったと思うが、人との交流をあまり必要としないタイプのオタクだった。お絵かき掲示板に頻繁に現れるし、他の方が描かれたイラストやSSを見るのも大好きだったが、その話題で積極的に誰かと交流したいとはあまり思っておらず、好きなものは一人で黙々と楽しむ孤独なオタクであった。おかげで鮮度の高い情報にも疎く、また大学進学後は課題の方が楽しくなっていたこともあって、次第にファンイラストを描くほどの熱意は薄れ、ましてわざわざネットで人様に公開するまではしなくなっていった。

創作活動に欠かせないもの、それは資料

オタク全盛期だった当時、「え?好きならイラストかSS描くでしょ?」と私は当たり前みたいに考えていた(正直今でも少し考えている)。一応美術系の親兄弟のもと育ったからか、好きという感情は創作によってアウトプットするのが普通のことだと思っていたし、それをしない人は「好き」の感情をどこにぶつけて発散しているのかと不思議に思ったものだ。

しかし、現代においてゲームが好きで創作活動になだれ込む人は大変だろう。なにせ、現代のゲームには取説がない。ダウンロードやソーシャルゲームに至ってはパッケージすらない。さらに攻略サイトが一般化したため、よほどのビッグタイトル以外は攻略本だって発売されない。
できるだけ正確にファンイラストを紡ぎ出したいなら必須となる、服装や全身絵などの資料がすぐ届く手元にないのだ。べつにネットで探せばいくらでも出てくるであろうが、ネットの海はかつてよりずっと広大で、道草を食みはじめれば当面帰ってくることはままならない(個人の見解です)。創作活動に向ける意欲が間違いなく散漫になってしまう。

私は基本的にPCやスマホの画面に資料を出しながら描くということができないため、パッケージも取説も攻略本もないことが多い現在はとてもゲームジャンルのファンイラストなんて描くことができない。あの頃あんなにゲームにのめりこみ、感情のアウトプットに励むことができたのは、ひとえに攻略本の設定資料ページのおかげであったと今ならよく分かる。しかしその当時の攻略本の数々も、一時の気の迷いで現在は手放してしまっている。やはりどれだけ時代が進んでも、大事な資料は紙媒体で手元においておくべきなのだった。


ちなみに中学~高校の頃、最もハマったジャンルといえば「幻想水滸伝2」だった。攻略本片手に様々なキャラクターのファンイラストを夢中で書き殴ったものだが、今思えば一番好きだったキャラクターは公式の立ち絵がまさかの座り姿勢、しかもフード+マントにベルトじゃらじゃら、マントの中は軍服のようないでたちという、どのみち正確な服装など分かりようもないキャラクターデザインであった。

それでも絵師の皆さんは積極的にマントの中を描写しており(もちろん私自身も)、有り余る情熱で透視でもしていたのではなかろうかと今思えばちょっと愉快になってしまう。

記憶をたよりに15年ぶりくらいに描きました。

2024年には幻想水滸伝の開発スタッフによる新作「百英雄伝」、そしておそらく同年中に幻想水滸伝1と2のHDリマスターが控え、衰退していくかと思われた界隈は大いに沸いている。私もあの頃のようにどっぷりのめりこめると良いなと、大人になってから最大ではなかろうかというほど待ち遠しさでワクワクしている。叶うなら、今度は孤独なオタクだった昔を捨てて話題を共有できる知人がほしい。そのためにも、願わくば攻略本は出してほしいところである。

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