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「東京の空気」について

(なぜかヘッダー画像が横は膨らみ縦は圧縮されてアップされる。よく分からないので放置)

私は仕事関係で必要な外出以外はほとんど家におり、買い物も基本的には24時間営業のスーパーを深夜に利用しています。

正直、自分はかかっても別に…という気持ちがあったりするのだが(進んで感染したくはもちろんないけど、それ以上に飲食・旅行産業等にお金を使いたいと思う)、とにもかくにも人にうつす側に回りたくない。結果、COVID-19の感染リスクは極力抑える生活様式で過ごしているほうだと自負している。

なにせ、仕事で日中外出する必要がある用事が月にせいぜい2~3回。0回もままある。今年4月だったか、生活リズムの問題で2週間くらい連続で太陽光を浴びない酷い時期もあったほどである(これは普通に調子悪くなるので、どれだけコロナを恐れる人であっても外出は大事。馬鹿の感想)。

ただし、まったく飲みに行かないわけではない。このnoteで“「2020年○月○日」について”と題して書いている日記的なテキストにあるように、空いてて清潔な店で一人飲みする分には特に問題ないと、私が住む東京都の感染者数一桁の頃から、4桁になっても変わらず思っています。デルタ型以降はその考えを変更するべきなのかも、と思ったりもしますが…。

そんな生活の中、今日は久しぶりに電車移動を要する書店Aに買い物へ。近所の書店には週イチで雑誌を買いに行く。しかし、おそらく取次の配本ママな品揃えの「まちの個人書店」で欲しい本はあまりなく、その上通販もあまり使いたくないほうなので、パリッコさんの新刊『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』を目当てに。積ん読が酷いのですぐに買う必要性はないものの、特典ペーパーが欲しかった。

そして、書店で買い物後、コロナ禍で私が一番応援している中華料理屋Bに行くつもりであった。Bは安くて美味くて量も多い(多すぎるくらい)。さらに清潔(餃子のタレのボトルなどが一切ベタついていない。地味に凄くないですか?)でいつも空いている。コロナ的には安心だが、不安になるくらい本当に空いている。

ところが、そんな太陽光に当たりにくい生活リズムなので、Aに行こうといつもよりは早起きしたものの、買い物を終えると18時半。Bに行っても着いた頃にはもう酒が飲めない。というか食事すらマトモにできない時間になりそうであった。

どうしたものかと思いつつAの最寄り駅に向けて歩いていたら、広くて清潔そうで空いていそうな蕎麦屋Cが目に入った。飲食店についての評価は一瞬で出るほうで、なおかつその勘を自分で信頼しており「ここは(自分的に)OKそう」と感じたため、急遽Cで飲むことに。

その結果、なんとなく今の東京の空気感の一部に触れられた気がした。

近所にあるBは、たまに客がいても大抵一人で無口(それも名店の条件のはずだが、タクシー運転手の利用は多い)。そもそも広いので遠くに座る人の会話はあまり聞こえない。店主夫妻は中国語で会話をする。なので、飲んでいても社会の空気感がわからない。

たまに外食してもBがほとんどの私には、Cの利用客やその会話を見聞きするのは新鮮な経験であり、メモとしてこのnoteを書いておこうと思った次第です。ただ、毎日通勤して外食もそれなりにしている方からすれば、大した内容ではない気がします。

ここからが本題。毎度のことながら前置きが長い。

営業形態を訊く人たち

ちなみに偉そうなことを書いてますが、人に誘われたときは、自分的には「人が多いな」と思うところで飲むこともある(月平均1回以下くらい)。ただ、そんなときは友人知人と話しているので、あまり周りのことは目に入らないわけです。

Cに入ってみると、外からすりガラス越しに見た印象よりも大分広く、奥の方はそれなりに繁盛している。しかし案内された一人客ゾーンとは距離があり、清潔さも文句無しで自分的に「ここで感染したら運が悪かったと思える」感じ。仮に想像以上に混んでいたら、サクッと出るのもアリかと思っていたが、20時閉店まで腰を据えて飲もうと思いました。

最初に頼んだのは、瓶ビールと合鴨の生ハムサラダとなすの揚げびたし。私は合鴨の生ハムサラダを蕎麦屋で頼むガラではない中年男ですが、Cは蕎麦のメニュー帳がテーブルにあり、肴系メニューは手書き用紙が店内各所に貼ってあるスタイル。ところが困ったことに、私が案内された席は周囲にその紙がなく、遠くに貼ってあるのを目を細めて見なければいけなかった。持ってきてもらうのも面倒だな、と思い、確実に読める4つのメニュー「合鴨の生ハムサラダ」「なすの揚げびたし」「野菜のかき揚げ」「とうもろこしの天ぷら」から注文することに。

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ヘッダー画像は本来こんな感じ。

お店は日本人男性1人、中国人女性と思しきフロア担当2人で回しており、多分コロナ禍モードのマンパワー少なめ対応で忙しそう。ビールが来るまでに5分、お通しがくるまでにもう5分、なすの揚げびたしが来るまでにもう10分くらいかかっていた。

そんな感じなので、ビールを飲みながらまったり買ったばかりの本を読んでいたのだが、なすの揚げびたしが来るまでに3組、こんな質問をする人たちが入ってきた。

「お酒は何時まで?」

東京都の要請に従うなら、酒を出す場合、1組2名までで90分の時間制限でラストオーダーは19時。私はよく確認せずに入ったものの、Cはこのガイドラインに従っているようで、19時まで―要するにもうすぐ終了―と店員さんが告げる。

すると、その3組が3組とも「じゃあ大丈夫です」「また今度来ます」などと店を出ていったのです。

要するに、東京都のガイドラインを守らない闇営業(まともな補償がない現状、そんなお店を責めたい気持ちはなく、むしろ当然ではないかとすら感じてしまったりもする私なのですが、文字数も少ないので以降これで)をしているお店なら飲みたい、という人たちが10数分のうちに3組も入ってきたわけです。たまたまかもしれないけど、闇営業している店を知っていて、自覚の上でそこに行く人ではなく、「とりあえず入ってみて闇営業か確認する人」がこんなにいるの…?というのが地味に驚きでした。

路上含めマスク無しで集団飲みする人、「コロナは風邪、陰謀」だと思っている人、またデルタ型の感染力の強さ等々…。東京都の感染者増の原因として、ここら辺が何となく頭に浮かびやすいように思うのですが、その後ろに隠れて、見えにくいけれどこういう人たちもいるような気が。

「自粛疲れ」とかそういう言葉では括れない、コロナ禍以前のモードにある種無意識的に戻ろうとする心の働きみたいなものがあるのかなあ…などと感じられた。

(実は土曜日がまん延防止最終日で、闇営業をしていない店では飲み納めになることに食事中は気づいていなかった。「緊急事態宣言前に大好きなCで飲めたら飲みたい!」と思った仕事終わりの常連さん、といった可能性もあるのかもしれません)

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意識の高い方々

あと、これはコロナとまったく関係のない話ですが、意識の高いセリフが何度か耳に入ってきて「日本もまだまだ捨てたもんじゃないな」と思わされた。

A・Cのあるエリアは比較的高収入の世帯が多い気がしている。19時前くらいに母親と小学校低学年くらいの男児2名の三人組が入ってきて近くに座った。基本的には本に集中しているので、会話をずっと聞いていたわけではないのだが、あるとき不意に、多分お兄さんの「お母さんSDGsって知ってるー?」という一言が耳に飛び込んできてビビった。

SDGs、最近テレビでやたら取り上げているので胡散臭いと思っている人も少なくない、という勝手なイメージを持っている。

しかし、そもそも2000年(その中の目標のいくつかは90年代から)からやっていたMDGsの延長線上にある長年続いているもの。「最近目がつくからなんか微妙」的な感覚は勉強不足であって、個々人がSDGsに取り組むこと自体は悪くも何ともないのでは(私自身、24時間テレビ的チャリティーに鼻白む感性の持ち主ですが、それでも数億円募金集まるならまあいいのでは、と思ったりもする)?と個人的には思っています。

とはいえ、今必死に生きている人はSDGsなんて知ったことか、となるのも無理もないところ。こういうのは大企業や先進国が意欲的に取り組まないと話にならない。また、なればこそ比較的稼いでいるだろう有名人の活動の舞台であり、発信そのものが仕事であるテレビ業界が取り上げるのも自然なことだと思う。簡単に言ってしまうと、「できるだけ恵まれた環境にある人が主体的に取り組むべき目標」であるのではないだろうか。

なので、勝手な想像ながら、土曜の夜に外食する余裕のある家庭のお子さんが母親にSDGsの話するって、なんというか理想的な「いいとこのお子さん」だなあと感じられて、「未来の日本、世界をよろしくお願いします!」という気持ちになりました。あと、弟さんが店を出ようとするときに「レタス残ってるよ、もったいないよ!」と言っていて、それもSDGsみが凄かった。

もう1つ、私の注文を巡ってもSDGsみのある光景が展開された。

まず、サラダより揚げびたしが先に来たのが地味に驚きでした。しかし滅多なことでは飲食店で店員に注文をつけないようにしている私は淡々となすとビールでやっていた。

すると、店員さんが、おそらく店主だろう日本人男性に「合鴨サラダ先にやったほうがいい」と。その後も、何回か言っている。私としては注文が入っていないわけではないと分かってむしろ安心できた。

その後、もうすぐ19時というタイミングで、とうもろこしの天ぷらと、残り1時間をしっかり酒と共に過ごすべく、蕎麦ハイボールと緑茶ハイを一緒に頼んだところ、しばらくすると天ぷらが先に来た。店員さんは申し訳無さそうな声色であった。

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その後、他のテーブルの蕎麦の注文を店主に伝えたタイミングで、かなり強めの「合鴨サラダ先にやったほうがいいよ」が発動。それから数分でサラダが来た。やっと会えたね。

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これだけ見たら蕎麦屋に見えないほどの「合鴨の生ハムサラダ」であった。

で、何がSDGsかと言うと、女性店員(多分30前後)が立場も年齢も上だろう男性店員(多分40代半ばくらい)に、ズケズケとモノを言っている点である。ちなみに何回か言われてるのにサラダをスルーし続ける彼も嫌いじゃない。

私は中高年の日本人が厨房、若い外国人がフロアを担当し、外国人店員の威勢が良い飲食店が好きだ。なぜなら、少なくともそんな店では、月に数万円程度の給料しか与えられない外国人技能実習生に対する奴隷労働のような扱いは行われていないだろうと思えるから。

SDGsをエコと結びつけている人は結構多い気がするのですが、SDGs=エコ・自然ではない。

17の目標を見ると、むしろ「人」に対するものが目立つのではないでしょうか。性別や国籍によって、不当な待遇の差を強いられる人を一人でも減らそうと努力すれば、エコに寄与していなくてもSDGsな取り組みと言えるわけです。

だから、中国人女性が日本人店主に強めにモノを言える店は安心できる。人権を無視するかのような条件で働かされていたら、きっとそんな態度ではいられないでしょう。ニュースを見るとゲンナリするのがデフォルトの日々ですが、信頼できる人は確実にいるという事実は忘れずにいたいものですね。

あと、会計時、初利用の私に女性店員が「いつもありがとうございます」と言って、あらためて「此奴できるな…」と思いました(1・2回利用した程度の人なら常連扱いされて嬉しく思う人もいるだろうし、間違ってても大したことにはまずならない)。

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8月22日までの酒まとめて注文したい

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