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没後70年 吉田博展PR動画批評

吉田博ファンになる入り口ともいえる木版画《劔山の朝》と《帆船》。展覧会PR動画を手掛かりに徹底解説します。PR動画自体はたいへんよくできていますが、繰り返し鑑賞することでこの2つの版画の深さに気づくことでしょう。


(1)《劔山の朝》と瀬戸内海集《帆船》を動かす

あの世の吉田博がもしこのアニメを見たらどう言うだろうか。たぶん苦笑することだろう。

生誕140年展から4年がたち、2019年10月から没後70年展が始まった。同じ毎日新聞がまた全国巡回展を開いている。河口湖、川越、日本橋高島屋、福岡県美、京都高島屋を1年3か月で巡る。木版画ばかり約200点を並べて、吉田博の後半生に焦点を当てたという。生誕140年展では250点のうち110点ほどが木版画だった。

版画だから収蔵館はいくつもある。去年夏にはMOA美術館が約80点の木版画展を開いたばかりだ。吉田博ファンにしてみると、木版画展はいささか食傷気味である。そもそも吉田博の木版画全258点のうち、80点が少なくて200点が多いという話ではない。数が多ければいいというものではないのである。

今回、主催者は差別化するために、立派な専用WEBページを立ち上げ、アニメーション動画をYouTubeで公開している。(2021年に公開期間は終了しています)

このWEBページは、なかなかシンプルで美しい仕上がりだ。外観上は好感のもてるものである。ただ中身はそれほど深くない。

ホームページは、日本アルプス十二題《劔山の朝》 と瀬戸内海集《帆船(朝)》が 、例によって横長画面を2つに割るような背景だ。この組み合わせはこれまでさんざん見て来たから、新鮮味はない。キャッチコピーが白抜き明朝で「けれども私は自然を崇拝する側に立ちたい―。」やや遅れて英文"But I Wish be a worshipper of nature."と出て、すぐ自動的にアニメーション動画が始まるという仕組みだ。

WEBページの突っ込みどころはいくつもあるけれども、これからまずアニメーション動画(1分11秒)について批評しよう。

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