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嫌わないでください

ひとつの容器に
かたちを保たれながら
なかよくもたれ合っています
ねぎは思い出のことばを懐かしみ
どこか儚く舞うかつおは
もっそりもっそりひとりごとを
放つのでした

焼き含められた熱々の球の
鼻先をかすめる甘辛い匂いと
忘れかけていたときめきに頬は赤らみ
さびしさが入る隙間なんて
ないくらい
こゝろは花が咲くように
満たされたのでした



「青のりもマヨネーズもたっぷりかけてね」


*****



青のりは、どうされますか?
お店の方に尋ねられました。
かけてください。
そういえば
青のりは結構です。
そう繕っていた頃もあったのです、よね。

露店で友人とたこ焼きを買って
公園のベンチでいただきました。
友人の記憶には残らずとも
この日この時の熱々のたこ焼きを
わたしは忘れないでしょう。
年月が変えたわたしの一片。
青のり風味な冬の一日。



「前歯に青のりがくっついていたら
教えてね。そっとね」

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