情報通信、情報処理、IT系法律用語

漢字で説明されると逆によくわからなくなる情報通信、情報処理用語を法律ではどのように定義しているかのまとめです。


電気通信回線:ネットワーク

※「電気通信回線」を定義したものはありませんが、電気通信事業法では「電気通信」を「有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう。」と定義しており、回線とはこれを伝える導通路となります。
私見ですが、「放送(「公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。」著作権法2条8号)」などと違い双方向性を表現するニュアンスがあるように思います。

電気通信回線設備:ネットワーク設備

送信の場所と受信の場所との間を接続する伝送路設備及びこれと一体として設置される交換設備並びにこれらの附属設備をいう。

電気通信事業法9条1号

※電気通信事業法に「電気通信設備を用いて他人の通信を媒介する電気通信役務以外の電気通信役務を電気通信回線設備を設置することなく提供する電気通信事業(三号事業)」が登場します。
修飾・被修飾関係は「電気通信設備を用いて『他人の通信を媒介する電気通信役務以外の電気通信役務』を」です。(電気通信役務の定義において「電気通信設備を用いて」となっており、電気通信設備を用いない電気通信役務はありません)
なお「電気通信設備」とは「電気通信を行うための機械、器具、線路その他の電気的設備」で、物理的な通信線、交換機などです。

電磁的記録:データ

電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。

電子署名及び認証業務に関する法律2条1項、電気通信事業法81条ほか

電子計算機:コンピューター

※「電子計算機」を定義したものはありません。

この法律は、電子計算機の高度利用及びプログラムの開発を促進し、プログラムの流通を円滑にし、情報処理システムの良好な状態を維持することでその高度利用を促進し、並びに情報処理サービス業等の育成のための措置を講ずること等によつて、情報処理システムが戦略的に利用され、及び多様なデータが活用される高度な情報化社会の実現を図り、もつて国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

情報処理の促進に関する法律1条

識別符号:ID、パスワード、電話番号など

法令が対象にする識別対象によって定義は変わるため一概に言えませんが、「識別したい対象を区別するための符号など」となります。
不正アクセス禁止法では生体認証用の指紋、電子証明書など、電気通信事業法ではSIMカード識別番号などが該当します。
プロバイダ責任制限法では「識別符号」を例示として「その他の符号」が用いられているため、もう少し広い例示がされています(そのため解説で挙げられているものがイコール識別符号とはいえません)。
他には著作権法における「送信元識別符号」、個人情報保護法における「個人識別符号」、マイナンバー法における「情報提供用個人識別符号」などがあります。

「識別符号」とは、特定電子計算機の特定利用をすることについて当該特定利用に係るアクセス管理者の許諾を得た者(以下「利用権者」という。)及び当該アクセス管理者(以下この項において「利用権者等」という。)に、当該アクセス管理者において当該利用権者等を他の利用権者等と区別して識別することができるように付される符号であって、次のいずれかに該当するもの又は次のいずれかに該当する符号とその他の符号を組み合わせたものをいう。
 当該アクセス管理者によってその内容をみだりに第三者に知らせてはならないものとされている符号
 当該利用権者等の身体の全部若しくは一部の影像又は音声を用いて当該アクセス管理者が定める方法により作成される符号
 当該利用権者等の署名を用いて当該アクセス管理者が定める方法により作成される符号

不正アクセス禁止法2条2項

電気通信事業者又は第三号事業を営む者が、電気通信役務の提供に際し、利用者を他の者と区別して識別するために用いる文字、番号、記号その他の符号をいう。

電気通信事業法27条の12第2号

特定電気通信役務提供者が特定電気通信役務の提供に際して当該特定電気通信役務の提供を受けることができる者を他の者と区別して識別するために用いる文字、番号、記号その他の符号をいう。

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律

「識別符号……その他の符号」には、SNS 等において利用者のアカウントごとに設定さ れるユーザーID・パスワードのほか、サービスを利用中である利用者を識別するためにアクセス先のウェブサイトやアプリケーションによって発行されるいわゆるセッション ID、アクセストークン等も含まれる。

総務省総合通信基盤局消費者行政第二課「プロバイダ責任制限法逐条解説2023年3月

指令:コマンド

ここで、「情報」とは電子計算機による 処理の対象となるデータを、「指令」とは電子計算機に一定の動作をさせるためのコマンドのことを指していますが、ここでいう「情報又は指令」には、これらのそれぞれ を単独で入力する場合のほか、この2つを組み合わせて入力するものも含んでいます。

警察庁「不正アクセス行為の禁止等に関する法律の解説」

4 この法律において「不正アクセス行為」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
一 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)
二 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号であるものを除く。)又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者の承諾を得てするものを除く。次号において同じ。)
三 電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機が有するアクセス制御機能によりその特定利用を制限されている特定電子計算機に電気通信回線を通じてその制限を免れることができる情報又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為

不正アクセス行為の禁止等に関する法律2条

ちなみに不正アクセス行為の2・3号はセキュリティホール攻撃型と言われますが、違いは、2号はアクセス制御を持つコンピューター・認証サーバ自体を攻撃すること、3号は認証サーバに認証を集約しているコンピューター(つまりこのコンピューター自体にはアクセス制御機能はありません)を直接攻撃すること、とされています。

自動公衆送信:オンデマンド配信

公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。

著作権法2条9号の4

送信元識別符号:URL

自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。

著作権法47条の51項1号

電子情報処理組織:オンラインシステム

※「電子情報処理組織」そのものを定義したものはありません。

裁判所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)と申立て等をする者又は第三百九十九条第一項の規定による処分の告知を受ける者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。

民事訴訟法132条の10第1項

親事業者の使用に係る電子計算機と、下請事業者の使用に係る 電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。

下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則2条3項

「開示用電子情報処理組織」とは、内閣府の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下この章において同じ。)と、・・・の規定による手続を行う者の使用に係る入出力装置並びに金融商品取引所及び政令で定める認可金融商品取引業協会の使用に係る入出力装置とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。

金融商品取引法27条の30の2

プログラム:プログラム

電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。

情報処理の促進に関する法律2条2項

情報処理システム:システム

電子計算機及びプログラムの集合体であつて、情報処理の業務を一体的に行うよう構成されたものをいう。

情報処理の促進に関する法律2条3項

電子メール:電子メール

特定の者に対し通信文その他の情報をその使用する通信端末機器(入出力装置を含む。以下同じ。)の映像面に表示されるようにすることにより伝達するための電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)であって、総務省令で定める通信方式を用いるものをいう。

特定電子メールの送信の適正化等に関する法律2条1号

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