#53日目 転職を決めた瞬間 10分チャレンジ

前職で最後につながっていた細い糸が切れたのは、
当時のグループマネージャーからの一言だった。
「あなたは教育に向いていない」
その言葉を聞いた瞬間、何が何でも辞めてやろうと決意した。

前職はベンチャー企業で、5年もいるとお局の立ち位置だった。
人材開発部から営業に戻ったときに、
当時所属していた会社の(たぶん)取締役に誘われて飲みに行った。
大阪にいたときに1度だけ飲み会で一緒になったことはあるが、
2、3年前なので覚えていないだろう、と思っていたが、
「大阪に出張に行ったとき依頼だね」
第一声で予想が外れたことを悟った。
そして、この人はちゃんと人を見ているんだな、と感じた。

もともと人材育成に関わりたくて、ベンチャー企業に転職したのだ。
数字を出せばチャレンジさせてくれる、そう信じていた。
当時は「営業に戻る」という上からの指示が
私の中では大きな裏切りになっていた。

一緒にワインを2本、、、3本?あけて話をしていたときに、
「クグロフさんには、いいお姉さんになってほしい」
と言われたのだ。
「もちろん数字にも期待している。
 けどそれ以上に、あの部署は新入社員の比率が高い。
 ビジネスマナーや一般常識をまだ知らない人も多い。
 言い方は悪いが、口うるさいお姉さんになって欲しいんだ」
そう言われたときに、私はこの人の下なら働けると思った。

そこから1年、私よりも少し前に人材開発部から営業に異動した方の下で
サブリーダーのようなことをさせてもらっていた。
OJT担当として、1名の新入社員と入社1年未満の中途社員を担当した。
ベンチャーにありがちな個人主義でバラバラだったチームを
リーダーと一緒に「チーム」にしたと思っている。

1年後、違うチームに異動になった。
次のリーダーからは「レアガチャを引いたようなものだ」と喜ばれた。
思えばこのときから違和感はあったのだ。
OJT担当として、また中途入社の方を2名担当した。
ふたりとも数字は順調に上がっていた。

当時の私はやっぱり営業よりも、育成のほうが楽しかった。
今思うと責任感のなさを情けなく思うが、
私が数字を挙げなくても、その分この2人が売れるようになればいい、
そう思っていたのだ。

そんなある日、グループマネージャーとリーダーと3名で会議招集があった。
そこで「教育に向いていない」と言われたのだ。

単純に、自分の目標も達成できていないのに育成に力を入れ過ぎだ、
ということなんだと思うが、それをグループマネージャーは
「向いていない」という言葉で表現した。
直前の1on1で「ここだけの話なんですが、、、」と伝えていた、
「私が数字を挙げなくても二人が上げてくれたら」という言葉も引用された。
ここだけの話とは…?

その瞬間に転職を決意した。
少し前から転職活動はしていたが、最終的には残るという選択肢もまだあった。
その言葉で私の糸が完全に切れてしまったのだ。
もうこの会社では頑張れない、と思い、その後喫煙所でエージェントに
「この際、他の営業職でもいいので、今年中に転職先を決めたいです」
とメールを送った。

ここまでの文章からもわかるように、今なおあの言葉は
私の中に棘として刺さり続けている。
転職してから今の会社の先輩方に
「楽しそうに教えている」「育成が好きなんだなと伝わる」
「向いてるかどうかはわからないけど、私ならクグロフさんに教えてもらいたい」
そうどれだけ言われても、きっと私はあの言葉を忘れないと思う。

あのグループマネージャーのお陰で私は今の会社に転職できた。
ただ、自分はあぁいう育成者にならないように、
言葉がどれだけ人の人生を左右するか、その後もずっと刺さり続けるか、
それを考えた上で人材育成に関わっていきたい。

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