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綺麗でいるより正直でありたい。

2019年8月 シアター風姿花伝 カクシンハン 「薔薇戦争 リチャード三世」

 最初、怪我を押してまで舞台に立っているように感じた。
片足を引きずり、腰は曲がっている。
鍛え上げられた両腕がひときわ異形を引き立たせていた。
河内大和さんが演ずるリチャード三世は完璧な役作りに映った。

「リチャード三世」
この物語には救いなんてない。
容姿の醜さに絶望した悪党が、兄弟も部下も結婚相手も民衆も
己の野心のままに騙し、暗殺し、使い捨て、
そして、自らの破滅を招く。
少年漫画的なカタルシスなどひとかけらもない。
にもかかわらず、400年以上受け継がれ、今も演じ続けられている。

 容姿にせよ心の中にせよ、醜さを抱えていない人間は世の中にどれだけいるだろうか。
ごまかしながら押し殺しながら、どうにか世間を折り合いをつけて生きている。
だからこそ、きれいごとに、他者の価値観に揺さぶられることなく、
己のみ頼りにしてきた人の行動には、心打たれるものがある。

 河内大和さんのリチャード三世は、鍛え上げられた両腕がひときわ際立っていた。
自分ではどうにもならない、生まれついた不具と向き合い、
それでも強くあろうとした生き様が、
異形の両腕に込められているようだった。

#ほぼ日の学校

#カクシンハン

#シェイクスピア

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