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短編【悪魔のストラップ】小説

「あれ?姉ちゃん、珍しいね。日曜日なのに家に居るなんて」
「だって、予定無いもん」
「デートは?毎週毎週、彼氏と出歩いてたのに」
「別れた」
「また?付き合ったばかりでしょ?」
「だって、いい男、見つけちゃったんだもん」
「見つけちゃったって…。今度の彼氏、原子力発電会社で働いてるエリート社員で金持ちだったんだろ?」
「そ。ご飯奢ってもらったり、バック買って貰ったり、旅行に連れて行ってもらったりしたけど、やっぱイイ男には敵わないね。愛って、お金じゃないのよ。最終的に」
「まったく…。いつか刺されるよ、そんな事ばっかりしてたら。でも、良く別れられたね」
「まあね。さんざん泣きつかれたけど。最後にコレ貰っちゃた」
「なに?」
「天然石のパワー・ストーンで作ったストラップ。でも、石が取れちゃった。多分、手作りだね」
「パワー・ストーン?」
「短い間だったけど、君は僕が本当に愛した人だから、いつまでも幸せでいて欲しいって。この石、あげる」
「え?」
「だって、別れた男のモノだよ?気持ち悪いもん」

そう言うとアユミは元カレから貰ったストラップから外れたパワーストーンを弟のヒロに投げ渡した。

「絶対に刺されるよ」
「それよりあんた、どっか行くの?」
「おう。これからデート。じゃあね」

ヒロはパワーストーンをポケットに捻じこむと家を出た。



「ミユキちゃん」
「ん?」
「今日は楽しかったね」
「うん」
「もっと一緒に居たかったけど、御免ね。これからバイトだから」
「も~。今度はバイトが無い日にデートに誘ってよ」
「ごめん、ごめん。お詫びにコレあげるから」
「何?」
「パワー・ストーン」
「ほんと!見せて!ああ!ちょうどいい!!こんなの探してたんだ」
「良かった」
「お兄ちゃんが、来月誕生だから、手作りブレスレットを作ってたの。天然石を探してたんだよ」

恋人のミユキがあまりにも喜ぶので、そのパワーストーンが姉の元カレから別れ間際に渡された石だと、ヒロは言えなかった。まあ、喜んでくれたんだから、それはそれでいいか。とヒロは思う。


「ホント!良かった!じゃ、バイト行ってくる!じゃあね!」
「うん。今度はちゃんと時間つくってよーー!」

綺麗なパワーストーンだなぁ。…お兄ちゃん、喜んでくれるかなあ。ミユキはヒロから貰った緑色に輝くパワーストーンを使って手作りのブレスレットを作った。10種類以上の天然石が連なった豪華なブレスレットが出来上がった。


「誕生日おめでとう。はい、プレゼント。手作りのブレスレットだけど気に入るかな」
「ん?ありがと」
「付けてみて!」

ミユキの兄のコウイチロウは手作りのブレスレットを左手首に通した。誕生日だというのに何故かコウイチロウの顔は暗い。

「お!似合う似合う!…どうしたの?最近元気が無いけど…」
「彼女と…別れた…」
「えええ!!初めての彼女だったのに!」
「きくしょう!!バーバリーのバックも買ってやったのに!海外旅行でモナコにも連れて行ったのに!ちくしょう!」
「そうか…、元気だして!」
「でも、いいんだ。復讐してやったから」
「復讐?」
「アイツに、ウラン濃度が高いウランビーズで作ったストラップをあげたんだ。あのストラップを持っていたら、放射能を浴び続けて身体がボロボロになる。ざまぁみろ。はぁ。話したらスッキリしたな。ブレスレット有り難うね」

こういう気持ちの悪い冗談を言うから嫌われちゃうんだよなあ。本当は優しいお兄ちゃんなのに。と妹のミユキは思うのだった。

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