なぜ人はジェットコースターに乗るのか?

【相反過程理論】

●なぜ人はジェットコースターに乗るのか?
→恐怖は不快な感情であり、現実もしくは想像上の危険、喜ばしくないリスクに対する強い生物学的な感覚である。
→生き物として避けるべきことを示すサインであり、安全への退避行動を起こす役目を果たすものであり、恐怖をもたらす対象を避けようとすることは至極当然の行動だと言える。
→しかし、恐怖をもたらすものに、繰り返し触れようとする嗜好が存在する。
→恐怖を主題として読者に恐怖感を与えるためにつくられた創作物は数多い(ジェットコースターやホラー映画、お化け屋敷)
→これらはすべての人に愛好されている訳ではないが、根強い人気を誇っている
→これら恐怖への愛着はどんな風に形成され維持されているのだろうか???????

●相反過程理論とは?
→ 刺激によってすぐに起こる生体の反応をaプロセスと呼ぶ。これに対して、恒常状態を保とうとする生体においては、aプロセスが生じると、それに対応して反対の方向のプロセスが生じる。これを bプロセスと呼ぶ。生体が感じるのは、aプロセスとbプロセスの引き算の結果である。

●この反応過程

①刺激を受けるとすぐにaプロセスが立ち上がり人間は高いピークを迎えます。
②それに遅れてbプロセスが立ち上がりaを打ち消すのでやや感覚が薄くなる。
③刺激がなくなるとaが無くなり一端bだけが残り低いピークを迎えます。
④bは遅れて徐々に消えていくのでしだいにゼロになります。

①刺激を受けると瞬間的にピークを迎え
②少し落ち着き
③辞めた後は逆に振れ
④いづれ落ち着く

(例)恋人との例の場合
①まず、異性と会うことで刺激が加わり、人間は感情の高いピークを迎える。
②次に、体は状態を一定に保とうとするのでやや高まりが落ち着く。
③その後、二人がわかれ刺激はなくなるものの打ち消す反応は遅れるので、やや寂しい感情が残る。
④最後に、時間がたつにつれその寂しさは感じなくなる。
↓
最初緊張し、やや落ち着き楽しむ余裕ができ、わかれると寂しくなり、そして通常に戻ります。

まとめると、刺激がはじまると快刺激なら快感情が、不快刺激なら不快感情が、一次的感情として急速に高まり、刺激が続くと順応が生じて安定水準のレベルまで下がって落ち着く。
刺激がなくなると一次的感情とは反対の後反応が生じて、快感情から不快感情へ(あるいは不快感情から快感情へ)と反応は振れ、これもしばらくすると収まる。というように時間的に変化していく。

●他の例1
→甘いものを食べた時の「美味しい」という圧倒的な正の感情。最初ほどではないが「美味しい」感の安定。「もういらない」という負の感情。時間経過とともに元の中立的な感情への回帰。

●他の例2
→苦いものを食べた時の「苦い」という圧倒的な負の感情。最初ほどではないが「苦い」感の安定。「苦さ」からの解放という正の感情。時間経過とともに元の中立的な感情への回帰


●恐怖という刺激を繰り返し与えるとどうなるか?
→ジェットコースターやホラー映画のファンなど、わざわざお金と時間を費やして恐怖を何度も味わうのはなぜか?

(A)繰り返し経験してもさほど変わらない(が、少しずつ小さくなる)
(B)繰り返し経験するうちに、aプロセスに対する遅れは次第に短くなり、消える速度も緩やかになる。

bがすぐ反応を示し、その強さも強く、消えるまでの時間も長くなっていることがわかります。
打ち消す反応であるbはすぐに反応ししかも強く、そして残ります。

これはジェットコースターやホラー映画のような不快感情でも同じです。
ジェットコースターに乗って不快な刺激を受けaが立ち上がるとすぐにbが打ち消そうと快楽感情を呼び起こし、それは深く長く残ります。
恐怖を楽しむという一見奇妙な行動はこれで説明できます。
(相反過程説は、物質依存や嗜好ある程度の説明ができるものの、相反過程説だけでは反例がある。他の諸条件が関与していのはいうまでもない。)

●他の例1
→たとえば喫煙が習慣化すると、一服の煙草が与える快感は最初の頃よりも減少し、以前と同じ効果を得ようとすれば、より強い/より多くの煙草が必要になる。さらに、吸い終わった後の煙草への渇望感はより強く、またより長く続くようになる。そうして不快な渇望感から逃れるために次の一服が必要となり、これらのメカニズムがチェーン・スモーキングを(他の薬物なら薬物依存を)引き起こす。

●他の例2
→ アルコールやタバコ、薬物を摂取する時にそれのプラスの影響は小さくなったいき(ここでいうa)、そのマイナスな影響は大きくなる(b)

●他の例3
→大きな成功を収めた数日後に、説明のつかない気分の落ち込みを体験すること(燃え尽き症候群)

✳このテーマに当てはまる例
→不快をもたらす刺激の場合も同様に、繰り返すことで不快レベルは下がり、その反対に振れる後反応による快レベルは増し、しかも長引く。
→サウナでいうと、暑さによる不快感は小さくなり、サウナから出ることの快感は大きくなり、より持続することとなる。

●まとめ
ジェットコースターに乗る時、最初は怖いと感じるかもしれないが、乗ってみると実際には楽しい経験だったと思うかもしれない。
しかし、次に同じジェットコースターに乗ると、怖さは少し薄れているだろう。
さらに何度も乗るうちに、怖さは次第に薄れてきて、その代わりに楽しいという感情が強くなっていく。

この現象は相反過程理論によって説明できる。最初の刺激(怖さや不快感)に対する反応(aプロセス)は、初めは強く感じられますが、時間とともに次第に弱まっていく。
一方で、その反応を打ち消す反応(bプロセス)はすぐに反応し、強く、そして長く残るのだ。つまり、初めは怖さが強く感じられても、次第に楽しさや興奮が強くなり、不快な感情は徐々に薄れていくのである。

このように、ジェットコースターに乗る理由は恐怖刺激に対する反動(bプロセス)がもたらす多幸感(euphoria)が反復によって強くなっていくからだと言える。

(参照)
●https://note.com/arai_shin/n/n03ba23aa769e
● https://readingmonkey.blog.fc2.com/blog-entry-773.html
● https://youtu.be/7FKEUFQYOkI?si=1MpFQqBPbBmqPpPA

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