コピーライターのストレス

職業はコピーライターです、と言うと、どうせさらさら~っとテキトーに耳障りのいい文章を書いて消費者をダマくらかしてお金もらってるんでしょ、などと身もフタもないディスり方をされることがたまにあるが、そんなに楽な仕事だったら苦労はしない。もちろんやりがいがあるから長年続けてこられたわけだけど、それを凌駕するほどのストレスも抱えているのだ。何度辞めてやろうかと思ったか。今回はその一例をご紹介したい。
※あくまで個人の経験によるものです。すべてのコピーライターに当てはまるわけではないことだけ、何卒ご承知おきのほど。

書いたコピーは書き換えられる(または書き直しさせられる)

この仕事を続けていく限りついて回ることなのかもしれないけど、特にまだ経験の浅い新人の頃なんか、最初に書いたコピーがそのままの状態で世に出るなんてことはほぼないと言っていい。※個人の(以下略)

書き終わったらまず、上司にあたる先輩コピーライターやCD(クリエイティブディレクター)のチェックを受けて「こうじゃないんだよなあ」と書き換えられ、次はデザイナーに「短い」「長い」「箱組みにしたい」と書き換えられ、クライアントの担当者に「決定権のある偉い人はこういう表現が好きなので」と書き換えられ、その偉い人に「なんとなく嫌だ」という理由で書き換えられ、ようやくOKが出て出稿される頃には、もはや自分が書いた原型などとどめていない。当初の企画意図もへったくれもない、見るも無残に魔改造されたコピーたちの「…シテ…コロシテ…」という悲鳴は、耳をふさいでも聞こえてくる。ユーザーやクライアントのためにと、必死に頭をひねって考えた意図とは違うかたちで世に出るやりきれなさ、それでもスタッフリストには「C:○○○○(自分の名前)」と記載され、まるで自分が書いたかのような扱いを受けるこの屈辱がわかるか!?お前にサンが救えるか!?

まあ、その頃はまだ経験不足でコピーというものをよくわかっていなかったということもあるし、経験を積むうちにいくらか回避できるようになったりもするけど、ある程度キャリアを経た今でもこれに近いことは起こり得る。だからこそ、自分が書いた通りの表現で世に出る時の喜びもまたひとしおなのだが。それに、そもそもこれは仕事であって、自分の作品づくりのためのものではない。自分の表現欲求を満たすために、クライアントはお金を出しているわけではない。誰の手も加えずに好きなように表現したければ、個人的にネットに上げてどうぞ、というだけの話だ。でも、そうとわかっていても、悔しいものは悔しいんだよ!!!!

こういった事態に直面した際、早々にこれはもうこういうものと割り切って受け入れるか、我慢して時間をかけて実績を積むことで発言力を高めていくか、広告賞でも獲って説得力を身に付けるか、もっと自分の表現を認めてくれる会社に転職するか、いずれにせよこのストレスとの向き合い方を考えないと、けっこう精神を蝕まれることもあるので要注意(体験談)。と言っても、所属する会社や社内での立ち位置、本人の実力、クライアントとの関係性によっては、もっと尊重してくれる場合もあるのかもしれないけど。

これからコピーライターを目指そうという人が見たら、いたずらに不安をあおることになったかもしれない。もちろん夢を見ることも大切だけど、入る会社によってはこういう現実もあるということは事前に知っておいて損はないのではないか。入社してから「思てたんと違う!」となりませんように。
初めのうちは何を書いてもうまくいかず、やさぐれてしまう時期があるかもしれないけど、それでも腐らずに続けていれば、いつの日か周囲を納得させつつ、自分も満足できるコピーが書けるようになってくる。はず。たぶん。きっと。


この他にもストレスの種はあって、本当は一回でぜんぶ書くつもりだったけど一つ目がいきなり長くなったので今回はこれで。お近くにコピーライターがいる人は、たまにでいいので優しくしてあげてください。いや、どんな仕事にもそれぞれのストレスがあるんでしょうけどね。

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