見出し画像

Vol.5 担保責任は暗記せず、ケースを押さえよう

こんにちは。TKです。今日は、民法の重要ポイント「担保責任」について書いていこうと思います。

担保責任といえば、公務員受験の民法では割とよく出る所。覚えようと思って、暗記をされている方も多いのではないでしょうか。
でも、担保責任って覚える量も多いし、頭に入れるのは至難の業。というわけで、今日は「覚えず理解する」をテーマに担保責任を一緒に勉強していきましょう。

1.担保責任とは?

担保責任とは、「売り主側の問題でトラブルがあったときにどうするか?」というものです。そしてその時に、買主に対してどう責任を取らせるのかが担保責任で決められているのです。そして具体的には、下の6つに担保責任は分けられています。

担保責任表

でも、よく見てみると担保責任が善意と悪意に分かれていますよね。実は、何でもかんでも売り主側に責任を全て負わせるのは、取引と法律のバランスを悪くしてしまうので、買主側の状況に応じて、売り主の責任も増えたり減ったりするようになっているのです。ちなみにここでの善意と悪意は、善意が「契約前にトラブルの原因を知らなかった」悪意が「契約前にトラブルの理由を知っていた」と押さえておいてください。

そして、見て分かるように覚えるには大変な量になっています。なので、繰り返しますがこの表を覚えないで、1つ1つ項目のケースを理解して、実戦で使えるようにしていきましょう。

2.担保責任(内容編)

①:全部他人物売買

文字通り、「全部が他人の物」を売買したことで起きたトラブルの時、どうするのか、という内容です。
例えば、とある美術商のお店をイメージしてみてください。そこで、あるお客さんに対して、お店の人がこんなことを話すのです。
「お客様がお求めになっていた壺が、とある方のご自宅にあることが分かりました。もしここで契約が出来れば、私がその方の自宅にお伺いして譲っていただき、お客様にここでお渡ししたいのですが、どういたしましょうか?」
それを聴いたお客は、すぐさま契約を結びます。そして、美術商に対して壺を代わりに譲ってもらうことを頼むのでした。
ところが、こんなお話は上手く行かないもの。結局壺は譲ってもらうことは出来ず、美術商はお客に謝ることになってしまうのでした。

ここでどう落とし前をつけるのかで問題になるのが、全部他人物売買の担保責任というわけなのです。まずは、悪意買主の方から見ていきましょう。
悪意買主とは、今回のケースで言えば「まあこの壺は貴重な品だから、譲ってもらえないかもなあ」という風に交渉失敗を予想出来ていたけれど、上手く行けば代金を払うことにして契約をした買主のような人です。この買主なら、あまり損害はないですよね。と、いうわけで買主は契約の解除は出来ても、損害賠償までは出来ないのです。
逆に、「確実に手に入る」と思っていた善意買主であれば、この壺を保管しておく場所や盗まれないように金庫まで用意しているかもしれないですよね。もしも、これがキャンセルになれば、損害が出てしまうのです。なので、善意の場合には解除に加えて損害賠償請求が認められているのです。

②:一部他人物売買

これは、1つ目とは違い、「100個仕入れるはずの物が、80個しか仕入れることが出来なかった」ようなケースをイメージしてください。
1つ目との違いは、「買主が頑張ったのである程度は売り主側に引き渡せた」というのがポイントになります。
①と同じように悪意買主なら、全部は手に入らないことを買主が契約時に予想出来ています。なので、売り主のダメージを減らすために契約取り消しや損害賠償請求は認められていないのです。但し、全ては手に入らなかった事を考慮して、代金減額は認められます。
逆に善意なら、例えば買主が買ったものを誰かに転売しようとしているかもしれませんよね。つまり、全部手に入らなければ注文キャンセル等の損害が起こりうるので、解除に加えて損害賠償請求が出来るのです。

③:数量不足

ここでのケースは、「家を建てるために100坪だと思って買った土地が実は80坪しかなかった」というようなものです。

③は①、②とよく似ていますよね。でも、このケースは①、②と違い、売り主が「数量を満たすために頑張ることが出来なかった」という違いがありますので、押さえておいて下さい。

そしてこの場合、善意ならば解除、損害賠償請求に加えて、減額も選ぶことが出来ます。
例えば、買主がマイホームを建てるうえで、住宅メーカーに100坪分の設計を頼んでいたとします。しかし、ここで80坪しかないことになってしまうと設計のやり直しを頼んだりしなければなりませんし、自分の期待するマイホームが建てられなくなってしまいますよね。なので、契約を解除したり、損害賠償請求が出来るのです。
でも、例えばその場所が抜群の立地だったなら、買主が「80坪だとしてもここに家を建てよう…」と思うこともあるかもしれません。なので、100坪分ではなく80坪分の料金に減額してもらうことも選べるのです。
逆に、悪意買主は解除・減額・損害賠償請求が一切認められていません。これは、悪意買主であれば100坪無いことを分かって80坪の土地を購入しているのだから、買主に損害は無く、本人が責任を取るべきだと考えられるからです。

④、⑤:用益権等による制限と抵当権の実行により所有権を失った場合

このケースは、購入した土地に地上権などが付いていて、買主が土地を利用できないような場合の事です。
そして、これは次の「抵当権の実行により所有権を失った場合」とリンクしていますので、合わせて書いていきます。
この2つの違いは、その制限が「占有を伴い目に見えるかどうか」という違いがあります。
用益権による制限は、アパートを建てたりして既にその土地を誰かが占有して利用している点で、目に見えています。一方で、抵当権の実行(土地に抵当権が付けられていた)の場合ではそれが登記簿には書いてあっても、目に見える形で土地に付いているわけではありません。これが、責任の違いに出てくるのです。

話を担保責任に戻すと、④の用益権による制限の場合には善意買主では、解除と損害賠償請求が認められます。これはさっきのマイホームと同じように、目的が達成できなくなってしまうからです。
逆に、悪意買主の場合には解除・減額・損害賠償請求が一切認められていません。これは、用益権は目に見える占有を伴うものにも関わらず事情を知ってて土地を買っているのだから、本人が責任を負うべきと考えられるからです。
しかし、⑤の抵当権の実行により所有権を失った場合では、善意・悪意双方に解除・損害賠償請求が認められています。これは、占有が伴わないので目に見えないというのもありますが、抵当権が付いている土地でも売買されることは普通によく行われているので、双方に認められているというわけなのです。(もし抵当権が無くなれば、その土地が高く売れることがあるから)

⑥:瑕疵担保責任

いよいよ最後の瑕疵担保責任に入ります。瑕疵担保責任とは、例えば「中古品のゲーム機を購入した時にそのゲーム機が故障していた」という場合の時が当てはまります。
この場合、当然知ってて購入した悪意買主には解除・損害賠償請求は認められず、善意買主であれば解除・損害賠償請求が認められます。
しかし、善意買主にも要件があります。それは、善意に加えて「無過失」であることです。
なぜかというと、瑕疵担保責任は中古品の売買が対象なので、すでにある程度使われて、劣化分を値下げして販売しており、かつ買う側もそれを知って購入しているのだから、その分責任を引き下げる。という訳なのです。

ちなみに、瑕疵担保責任の性質については、判例と学説の対立や錯誤との関係がありますので、これも後で書きます。

本日もここまで読んでいただき、ありがとうございました。

































この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?