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「 いつもありがとう 」  6


ごっちんに話しかけたワケ

高校に入学してからのおれはこれまでと変わらず日々何か
ワクワクするようなことがないかアンテナを張っていたが何も起きずに春が過ぎようとしていた。


ある日の朝のHR(ホームルーム)後、
左斜め前の男子が定期を落とした。一瞬だったが裏面にバスの写真が
入っていたのを目にした。

(バス好きなのかな、、、?)ふと不思議に思った。電車ー、アニメー、アイドルーとかならたまに耳にするし身近にもファンがいるから分かる。

バス、、珍しいな。

そして数日後、その定期を落としたクラスメイトを朝 学校前のバス停で見かけた。
バスから降りたあともそのバスをじーっと見つめて見送っている様子だった。

(やっぱりバスオタク、、、??早起きはしてみるもんだな。)
その日のおれはいつにも珍しく早起きをして登校していた。


そんなとこから不思議とごっちんに少し興味が湧いていた。


おれには兄弟がいなくて一人っ子だ。
父さんはいるがいなかったりする(笑)
母さんは真面目で優しくとてつもなくおおらかだと思う、少しおれはマザコンなのかもしれない。

父さんはとても社交的でアクティブでフットワークが軽い。
世界中を大きな鞄ひとつで渡り歩いているらしい。
家の中にはよくわからない言語の通貨や紙幣がちらほら引き出しの中から出てくるしあちらこちらに変な外国の土産ものも飾ってある。

職業がいまだに明確ではない(笑)

一応重要書類には写真家と書くことにしている。たまにインスタ映えなんて目じゃないくらいの絶景の写真や珍しい写真を撮ってきて見せてくれるからだ。父さんの写真集は2冊出版されている。旅をしている途中で出会った人が日本人で、その人と仲良くなりそこから写真も撮るようになったと聴かされた。

父さんが帰ってくるのはよくて年に1.2回だ。
にもかかわらずたまーに見ず知らずの外国人と一緒に帰ってきたりする。
父さんは誰とでも仲良くなれる人だ。母さんはその分ほんとは寂しいとおれは思う。
けれども父さんが好き勝手やって楽しそうにしているのを聞くだけでも楽しいらしい。
母さんの家は代々裕福で、父さん以上のスペックの男性の出会いなんて本来ならたくさんあったはずだ。おばあちゃんから少しお見合い写真を見せてもらったことがある。

「すみれは〇〇不動産の君塚さんがお似合いだとおばあちゃん思ってたのよ」
「どうして?」
「おばあちゃんが昔好きだった人に似ているし、これはおじいちゃんには秘密ね^^ 佑くんて名前なんだけどね。ゆうくんとすみれは小さいときから遊んだりしてたのよ^^とても仲良かったし」
おばあちゃんは懐かしそうな顔をして微笑んでいた。
「そうなんだ。おじいちゃんもゆうくんって人と母さんに結婚して欲しかったのかな?」
「そうね。そうだと思うわよ。お家での家族だけでするような行事やパーティーにもよくゆうくん呼んでたし。おじいちゃんとゆうくんのお父さんは親友なの。だからよけい可愛かったのかもしれない。あと、うちには女の子しかいなかったから」


「おじいちゃんに、どうやって父さんは結婚認めてもらったんだろう?絶対反対されたと思うんだけど^^; 」

「それがね、龍二さんに実際に会うまでは雷落とす気満々でほら倉庫にある日本刀なんて引っ張りだしてきて、、」
おばあちゃんは思い出してクスクス笑っていた。
「私こわかったわよ。おじいちゃん頑固なとこあるし怒ったらとことんやっつけちゃうとこあるからね (笑)」
「おじいちゃん、、、^^;  それで?」

「それでね、、、いざ会ってみたら、龍二さんとすぐに打ち解けちゃったの!」
「どうやって!?」
「すみれに聞いたみたいね、おじいちゃんのこと。どうやったら気に入ってもらえるか(笑) 好きなものは何か、趣味は何かとかね。さすがね。」
「龍二さんおじいちゃんの好きなお酒も持ってきて意気投合してたわ。そういえば龍二さんも野球したことがあってその話でも盛り上がっていたわ」

「おじいちゃん野球好きだからね^^」

「あなたのお父さんはほんと不思議な人。今の日本人らしくはないけど、昔の日本人の心を隠し持った人だと私は思うわ」


このときおれはつい昨年くらいのことなんだけど、少し父さんを見直した。
ただ自分の好き勝手やってるわけでもないんだろうなって。
あのおじいちゃんを手玉にとるなんてな 笑



~もくじ~

1 序章
2 対面
3 拓也
4 席替え
なぜだか一体感
6 ごっちんに話しかけたワケ