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<読書記録>14歳の君へ

私がこの本を娘に薦めたのは、自分が池田晶子さんの「人生のほんとう」を読んでとても良かったので、中学生の娘にも紹介したいと思い、ちょうど良いタイトルだったので渡しました。娘はすぐに読んだようで、良かったと言っていました。

娘が中学2年14歳のときに事件が起こりました。

ある日、青ざめた顔で帰宅した娘から、明日、クラスの保護者が全員学校へ呼ばれると伝えられました。クラス全体で一人の女の子をいじめたとのこと。

その夜、娘は食事も喉に通らないようで、少量の食事の後、すぐに自室に戻りました。

学校での担任の先生の説明では、一部の生徒が女の子をいじめていたようで、女の子も親には言ってなかったようなのですが、地域の神社の縁日で、彼女を取り囲んで虐めているのを親御さんが目撃して、本人に問いただし、学校へ対処をするよう連絡したとのことでした。


娘はいじめには加担していませんでしたが、「見て見ぬふり」も立派ないじめだそうで、特に学級委員をしていた娘は担任からあなたには特別責任がある、と言われたようです。

その日、出席した保護者は、「見て見ぬふり」認定を受けた子の親だけで、実際にいじめた子たちの親は誰も出席していませんでした。

そのことを、両親で出席されていたお父さんが、厳しく指摘されました。いじめ問題という重大なことなので、夫婦で来た、それなのに、実際にいじめた子の親が誰も来ていない、担任として参加させるよう努力はしたのか?という質問でした。

帰宅後、学校でのやりとりを娘に伝えて、「辛かったね」と話しました。

娘は相変わらず青白い顔のまま、「先生に裏切られたことが一番辛い」と言いました。

その女の子をバカにしたり強く叱責していたのは担任の先生で、一部のいじめた男の子たちは「尻馬に乗った」風だったそうです。

それなのに、親から苦情が来た途端に、自分はちゃんと指導していた、あなたたちが悪い、と平気で子供たちを責めたそうです。

翌日、娘の部屋へ行き、数日前の娘とのやりとりを思い出し、涙が出ました。

少年式で歌う歌の歌詞がとても素敵、こんな歌、と話してくれたときの娘の瞳はキラキラと輝いていました。

「あの日の娘を返して」ともう戻らない日々に胸が痛くてたまりませんでした。

その時に、ふと娘の本棚の「14歳の君へ」が目に入りました。パラパラと見ていて(私は薦めただけで読んでいませんでした)そこに答えがありました。


その夜、帰宅した娘に、14歳のきみへ、読んだよね?と尋ねると、読んだというので、もう一度読んでみて、答えがあるかも。と勧めました。

娘はそのまま自室へ上がり、しばらくして、明るい顔で降りてきて、お腹が空いた、と言いました。すっかり元の娘に戻っていました。戻ることは難しいと思っていたので、嬉しくて沢山お食べ、とあれこれ料理を追加しました。


この本は娘が持っているので、今、中身を確かめられないのですが、、冒頭にこんな問いかけがあったと思います。


あなたは虐める側といじめられる側とどちらかを選ばなくてはならなくなったらどちらを選ぶ?


と。そしてこう続けています。もし虐める側を選んでもそれは悪いことではない。弱いだけなのだ、と。

そして大人も嘘をつく、それは弱いからだ。と。

娘は嘘をついた先生も弱いだけで、そんな自分に苦しんでいるということが理解できたようでした。


そう簡単に気持ちの整理はできないにしても、考え方が少し変わるだけで自分の辛さが軽くなったようでした。


娘は今、臨床心理士・公認心理師として出身大学の病院に勤めています。


もう一つの思い出は、親しい友人から中学生の娘さんがいじめに遭っている、という相談を受けたときです。

私は、専門家ではないのですが、はるか昔、業務命令を受けて学校カウンセラーの資格取得をしたことがあり、時々身近な人からこんな相談を受けていました。

状況を聞いて、「体調不良」でしばらく休ませるよう勧めました。決して、いじめのことは伝えないように、と。

理由は、そこまで辛い思いをしている子がいるのに、気づかない、または見て見ぬふりをしている先生には、問題解決能力が無い上に、間違った対応をされてよりこじれることになると思うから、とにかく、体調不良だけを伝えるようにと言いました。

「学校は命と引き換えにしてまで行くべきところではないよ」と。

親しい友人だからで、一般的にこんな無責任なアドバイスはできませんが、1週間くらいした頃から、心配したいじめグループの周辺メンバーが様子を訪ねる連絡をしてくるようになったそうです。何かあったらどうしよう、という不安からでしょう。

そして、この問題はある日、劇的に解決したのです。これは随分昔の話なので、今には通用しませんが、私が何気なく言った「親にしかできないことがある」を実践したようです。私は家で守ること、を言ったつもりだったのですが、強面のパパが、首謀者の女子を恫喝したのです。今なら大人が中学生を恫喝したらそれこそ犯罪ですよね。

「お前はうちの娘を虐めているだけのつもりかもしれないが、娘には我々両親や家族がいて、その知人がいて、みんな心配して怒っている。そんな沢山の大人を相手にしていることを忘れるな」

その子は泣いて謝ったそうです。家にも謝りに来たそうで、それからいじめは無くなったそうです。

これは、特殊な例だと思いますが、虐めている子に、対象者のまわりには大人がいてみんなが怒っている、ということを知らしめるのも効果があるかもしれません。

ちなみに、私が学校カウンセラーをしていた時代と、今ではわかってきていることも、療法も大きく違います。

なので、相談されたときにはできるだけ、専門で仕事をしている信頼できる精神科医の先生や臨床心理士を紹介しています。

そして、私も、新しいことを知っておきたいと思って、放送大学で臨床心理の単位を取りました。でも、勉強しただけではダメで経験を積むことが何より大事です。

辛い時は、素人判断ではなく、専門家に委ねること、専門家も信念や個性がありますから、何人かの人に当たって納得できる、相性がいい人に相談するのも良いと思います。

明日から新学期、 学校は命と引き換えにしてまで行くところではありません。

ただ、暫く心を休めたら、また戻って行ってほしいと心から願っています。


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