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アディクションの対義語はコネクション

 カナダの心理学者、ブルース・アレキサンダー博士が次のような実験を行いました。
 
 檻のなかですっかりモルヒネ依存症になってしまった植民地ネズミを一匹だけ取り出して、楽園ネズミのいる広場へと移し、観察を続けました。
 
 すると、まもなくその植民地ネズミは楽園ネズミたちとじゃれ合い、交流するようになりました。それだけではありません。やがて植民地ネズミはいつしかモルヒネ水を飲むのをやめ、楽園ネズミたちの真似をして、ふつうの水を飲むようになったのです。
 
 この実験結果は、薬物依存症からの回復に何が必要なのかを教えてくれます。それは、孤立しない環境「人とのつながり」です。
 
 英国人ジャーナリスト、ヨハン・ハリがいみじくも看破したように、「アディクション」(Addiction:依存症、酒や薬に溺れた状態)の対義語は、「ソーバー」(Sober:しらふの状態)でも「クリーン」(Clean:薬物を使っていない状態)でもなく、「コネクション」(Connection:人とのつながり)なのだ、と。
 
 「人はなぜ薬物依存症になるのか?」
 松本 俊彦 (精神科医、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
薬物依存研究部長)より

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