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コンパウンドスタートアップとしてのチャレンジと難しさ

こんにちは、Asobica代表の今田です。

Asobicaは「coorum」をローンチして約4年が経ちました。気がつくとあっという間の4年間でしたが、振り返ると組織としては複数のプロダクトを提供できるような体制になり、花王様やSUBARU様、すかいらーくグループ様など多くの日本を代表する企業様に導入いただけるプロダクトになりました。

特に直近の1年間は複数プロダクトを提供するための組織構築や仕組み作りに対して自分の多くの時間を使ってきたので、本日はその中で感じた難しさや、直近取り組んでいる内容に関してお話したいと思います。


コンパウンドスタートアップとは
コンパウンドスタートアップの定義については様々な方がわかりやすく記事にまとめているのでここでの詳細説明は割愛しますが、端的に言うとプロダクト同士の機能やデータがシームレスに連携し合いながら価値を複合的に提供していくのが(&それによって顧客に提供できる価値が複利で高まっていくのが)コンパウンドスタートアップです。特にLayerX福島さんとALL STAR SAAS FUND神前さんの記事が分かりやすくまとめられていたので詳細は以下をご覧ください。

1.Asobicaの現状

コンパウンドスタートアップとしての具体的な取り組みについてお話しする前に、Asobicaの現状について以下簡単に整理しました。

プロダクトは現在3つのチームに分かれており、4つ目のプロダクトを立ち上げるためのプロダクト責任者候補の採用に目下力を入れている所です。事業は顧客起点マーケティングを推進するためのSaaSを展開しており、主にエンタープライズ向けに製品を提供しています。

2.なぜコンパウンド戦略に取り組むのか?

Asobicaは事業立ち上げ当初から一施策としての課題解決に留まるプロダクトではなく、経営の在り方を変革するOS/インフラを志向してきました。社内では2026年迄に達成したい中期目標として「顧客中心の経営をスタンダードにする」を掲げており、具体的にはあらゆる部門の業務をロイヤル顧客データを軸に再構築したい(あらゆる部門の意思決定の在り方をロイヤル顧客のデータを起点に変えていきたい)と考えています。

これらを実現するためには単一的な価値提供だけでは当然辿り着けず、複合的なプロダクトを通して、複数部門に対する価値提供を推進していく必要があります。これがAsobicaがコンパウンド戦略を推進している理由です。

また、それによっていずれはあらゆる角度から企業の担当者にシステム上からレコメンドを行い、究極的には担当者は実行ボタンを押すだけで施策が実行される(結果的に顧客のロイヤリティが向上する / ロイヤル顧客が増える)という状態を実現したいと思っており、そのためにはデータの統合/活用が鍵になります。故に複合的なプロダクトを提供していくことが重要になります。

3.コンパウンドスタートアップの3つの難しさ

3-1.セールスプロセスの科学が必要になる

単一プロダクトを提供する場合と、複合的なプロダクトを提供する場合に大きな違いが出てくるのは売り方です。「単一プロダクトを一部署に届ける」から「複合的なプロダクトを複数部門に届ける」ことに変わることにより、営業の複雑さや難易度がぐっと上がります。故に、一般的には複合的なプロダクトを複数部門に売るというのはSaaSスタートアップではアンチテーゼとされてきました。

というのも提供するプロダクト毎に利用する部門/担当者が異なるので、複数のステークホルダーとのコミュニケーションが必要になります。また、大企業になればなるほどステークホルダーの数も多く関係性も複雑になるので、各ステークホルダーを正しくマネジメントしていくというのは非常に難しく、この観点を乗り越えられるかどうかが最初の大きなハードルになると感じています

また、プロダクトの使い方や組み合わせについても業界(あるいは企業規模)によって異なるため、気がつくと営業1人あたりが行うべき業務が複雑化し生産性の低下に繋がります。これを解消していくためには、初期フェーズでは狙う業界や企業規模を絞っていく事が重要で、それにより営業効率を高めてくためのナレッジ化/仕組み化が必要になります。

3-2.顧客の解像度を組織として上げ続ける必要がある

複数のプロダクトを次々とリリースしていくためにはプロダクトを作る上での再現性が重要であり、再現性を高めるための最も重要なポイントが顧客の解像度(顧客の業務を作業レベルで把握し課題を特定すること)であると思っています。一方で顧客の業務プロセスや課題は、業界・部門・担当者のレイヤー毎に様々であり、把握すべき情報は多岐に渡ります。また多数の情報を踏まえた上で顧客にとっての価値(作るべきプロダクトや機能)の優先順位をつけていくことは容易ではありません。

3-3.プロダクトやデータの統合にコストがかかる

後半戦になればなるほど重要性を増していくのがこの3つ目の観点です。
コンパウンド戦略では複数のプロダクト同士における機能やデータの連携が鍵になるため、それらを支えるミドルウェア開発に多くの投資が必要になります。具体的にはデータベース・分析・アカウント管理・権限管理・ワークフロー等を共通化する必要がありますが、初期フェーズから完璧なものを作り込むのは難しく、プロダクトが増える度に定期的にアップデートし続ける必要があるためプロダクト開発とは別の開発コストが一定発生し続けることになります。

4.コンパウンドスタートアップとして具体的に取り組んでること

  1. セールスプロセスの科学(エンタープライズセールスの強化)

    • ステークホルダーマネジメントの強化

    • 顕在化した課題へのプロダクトセールスではなく、組織全体における潜在的な課題の発掘 & 価値のセールスの実践

  2. 新規プロダクトを”再現性高く作り出す”ための仕組み作り

    • 顧客の解像度を組織として上げる仕組み作り

    • 事業を作れる人(プロダクト責任者/PMM/PdM)の採用

  3. プロダクト/データ統合への投資

    • プロダクト同士のデータ統合と活用

    • ミドルウェアの開発

1と3については別の機会で記事にできればと思っているので(エンタープライズセールスチームや開発チームにnoteをお任せするとして)、今回は2について以下記載します。

新規プロダクトを”再現性高く作り出す”ための仕組み作り

新規プロダクトをクオリティ高くリリースし続けるための”再現性"を決めるのは「顧客の解像度×事業を作れる人」の掛け合わせであると考えており、前者は仕組み、後者は採用に力を入れています。その中でも特に重要なのがやはり前者の顧客の解像度を上げ続けるための仕組みであり、Asobicaではそれらに多くの投資を行っています。

例えば、既存顧客にインタビューを行ったり、日々の顧客との会話の中で要望や課題を吸い上げていくこと(&セールス/CS/プロダクト間の連携)は勿論ですが、Asobicaではメインターゲットである企業の担当者や役員クラスそれぞれにアドバイザリー的な形で関わっていただき、隔週でヒアリングや壁打ちを行う機会を作っています。要はその業界のおける業務理解が最も深いであろう人にひたすら教えてもらうという時間を意図的に作っています。但し、業界や企業毎に業務プロセスが異なったり、レイヤー毎に見てる視点や感じる課題が違ったりするので、それぞれの立場の方々に複数名アドバイザーになっていただいています。

また、ヒアリングした内容は一つのシートで管理しており、各部門毎の業務を作業レベルで一覧化しています。作業の頻度や作業を行う上での登場人物についても分かる範囲でまとめています。

最後はそれらの情報を元に価値の仮説を書き出していくという活動を行っており、具体的には、どの部門の誰がどのような課題があり(できる限り定量化)、それらの課題を作り出す背景/要因は何で、またそれらを解決するための理想の状態や具体的な方法、あるいはそれによって得られる効果は何かを各メンバーが日々の活動の中でアウトプットしています。

属人化ではなく仕組みに拘る

これらについてはまだまだ発展途上ですが、重要なのは属人化する事なく顧客理解を組織として上げ続ける仕組み/機会を作る事であり、この取り組みこそがいずれは企業にとっての資産(カルチャー)になり、コンパウンドスタートアップとして大きく成長できるかどうか(顧客が求めている価値あるプロダクトを圧倒的なスピードでリリースし続けられるかどうか)に大きく寄与する観点だと感じています。

事業を作れる人(プロダクト責任者/PMM/PdM)の採用

また、複数のプロダクトを同時進行的に立ち上げていく事は総じて難易度が高い挑戦のため、仕組みへの投資に加えて採用にも多くの時間を使ってきました。特に直近1年は多くの方々と面談を実施させていただき有難いご縁も沢山頂きました。一方で、引き続き次なる事業/プロダクトを一緒に作っていただける仲間が必要ですので、難易度が高くインパクトある挑戦を面白いと感じていただける方々はご連絡いただけると嬉しいです。

5.最後に

つらつらと書きましたが、改めて感じることとしてはAsobicaがやろうとしている挑戦はこれまで誰かが進めてきた二番煎じだったり、あるいはアナログな業務の単なるDX化という形ではなく、企業にとっての意思決定のあり方 / ないしは業務プロセスを(ロイヤル顧客データを起点に)再構築する挑戦であり、その分難しさはあるものの改めてとても価値のある面白いチャレンジだなとつくづく感じます。

加えて、コンパウンドスタートアップとしての挑戦はまだまだ始まったばかりであり、課題ややるべきことが山積みです。これをやれば上手くいくという解がないからこそ、これからも多くの失敗を積み重ねながら試行錯誤していくと思います。そんな試行錯誤を面白いと感じて頂ける方、あるいはその先にある業界構造を変革していくようなインパクトある事業/プロダクト作りたい方、ぜひ一緒に大きな挑戦をしましょう。

採用エントリーでもカジュアル面談でも、あるいはXへの直接DM等でも構いませんので、ご興味ある方はぜひご連絡いただけると嬉しいです。

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