【SCANDALというバンド】2023年8月12日

 バンドブーム全盛を経験し、iPhone音楽再生数が現時点でも「BOØWY」が1位である自分だが、最近は娘の影響もあり、adoやEve、Yoasobiなどがメイン。洋楽はすっかり分からなくなり、邦楽もサザン以外はあやふやな状況。そんな中で比較的いまでも聞いているバンドがSCANDAL。

 日本を代表するガールズバンドで、世界でも活躍する彼女たち。ライブ中心のため日本のテレビ番組にはほとんど出演しない彼女たちがどんな存在か知らない人も多いと思うため、恒例の1万字を超える、稿料もいっさい発生しないコラムを書こうと思う。

 現在メンバー全員30歳を超え、中堅バンドになりつつある彼女たちをはじめて知ったのは2008年。当時全員現役高校生で、女子高生学生服風の衣装だったため色物バンドとしか認識していなかったが全米6都市ツアーを成功させ、音楽雑誌を賑わしていた。その時の自分の感想は「あーかわいそうな子たちやな。すぐ消えてしまうのやろうな」だった。プリンセスプリンセスと同じように事務所のあやつり人形で終わってしまうバンド程度にしか思っていなかった。

 その印象が変わったのは2011年の10枚目のシングル「ハルカ」。それまでの彼女たちの最高ランキングとなる初登場オリコン3位を記録(13枚目のシングル「太陽スキャンダラス」がその後2位を記録)。まだ生き残っていたことに純粋に驚き、それまでの彼女たちを印象を大きく変えた。

 2011年発表の「LOVE SURVIVE」は日本だけでなくアジア全体でのヒットとなり、その後「HARUKAZE」「太陽スキャンダラス」「ピンヒールサーファー」「会わないつもりの、元気でね」「OVER DRIVE」と初登場一桁のヒットを飛ばし続ける。この頃は日本のテレビ番組にも数多く登場し、「堂本兄弟」などの番組のレギュラーを獲得し(ベースのトモのみ)など露出することも多くなったが、2014年末を最後にパタリとテレビ出演を終了させる。
 彼女たちはもともとボーカル&ダンススクールの生徒であり、ボーカルのハルナ以外は卒業しても芸能界で生きていくだけの実力もなかったらしい。当時のスクールの先生の計らいで集められたことがバンドを組むキッカケ。バンドの練習場所のスタジオと同じビルに入っていたセクシーキャバクラ「スキャンダル」を冗談半分でバンド名にしたことからも、その後20年近くバンドとして活躍できるとは思っていなかったのだろう。

 そんな彼女たちは周りの誰もが思いもよらなかった成功を収め、それに引きずられるように実力もついてしまった。そうなると他のバンドとの違いに悩むようになる。ふつうのバンドであれば学生時代に結成し、曲を自分たちで作り、レコード会社に持ち込みをしてという流れだが、彼女たちは最初から用意された曲があり、それをこなすだけの10年間。そんな自分たちに引け目を感じていた彼女たちは2015年に大きな決断をする。

 事務所やレコード会社の主導から脱却。メインとなる曲の作詞をドラムのリナ、作曲をギターのマミが行うオールSCANDALでの楽曲制作を行った。それが2015年発表の「YELLOW」。アルバムとしてはSCANDAL最高位を記録。そして同じ体制で行った2018年発表の「HONEY」を発表。SCANDAL最高傑作と呼ばれるこのアルバムがエピックレコードジャパンとして最後の作品となった。

 ソニー系からビクター系のカラフルレコーズに移籍し、2020年にSCANDAL独自のレーベル「her レーベル」が創設される。これはサザンオールスターズのプライベートレーベル「TAISHITA」と横並びであり、彼女たちが名実ともに日本を代表するアーティストになった証明でもある。レーベル創設と同時に9枚目のアルバム「Kiss from the darkness」を発表。多くの番組、映画などのタイアップもあり、大ヒットとなった。

 コロナ禍の2020年には「MIRROR」を制作。アルバムツアーとして日本11会場、北米4会場、欧州3会場での公演を行った彼女たち。すでに日本のガールズバンドの頂点というだけでなく世界ツアーを組むことのできる数少ない日本のバンドとなっている。

 当初色物バンドとしか思えなかった高校生バンドの彼女たち。当初は大人の力を利用したとはいえ、長いキャリアをしっかりと自分たちのものにして、本物になってしまったSCANDAL。この先の彼女たちがどう進化していくかも注目だ。

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