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「法務がヒトリでイチからやっていくとこうなる」例

法務クラスタは皆さんすごい人ばかりです(私のTwitterフォロワー調べ)。
そんな方々と容易に繋がれるTwitterはすごい。私は学生時代に勉強をしてこなかったし、会社に入って法務になってからも、目の前の問題を処理し続けるばかりで勉強が足りてないので、「若いうちに勉強しときゃ良かった」と後悔ばかりしています。
 そんな私が、営業から法務に異動になって、なんだかんだ嫌気が差しつつも14年も法務を続けてこれたのはなぜか、経験から見えた法務としての素養なんかを適当に書きなぐってまいります。(完全に私見ですので悪しからず)

このnoteに辿り着いた方は、おそらく多くは法務関係者だと思います。
ご経験者にとっては「わかりきっていること」ばかりだと思いますが、改めて自分なりに振り返りを行った結果を記したいと思いますので、どうか拙い内容でもご容赦願います。

1.法務(自分)の仕事の変遷

これまでの私の仕事は以下の通り。なお、組織的には2006年~2015年3月までずっと1人、2015年~部下1名入るも2018年で退職(俺はアプリを作って売るんだ!と言って法務の経験は捨てたようです)、入れ替わりで2018年に上司1名入社、2020年4月に新卒部下1名が入社し、現在は3名体制です。

(1)契約書の作成、審査

多い時で年間300件。2019年~100件前後に減ってます。(利益も大幅に減ってます…)
大半がNDAで、モノ売り・買い(外注加工品含む)、開発設計業務委託、不動産売買・賃貸、産業廃棄物運搬・処理委託、人材紹介・派遣などなど。
自社ひな型と相手ひな型どちらを使うかだと、概ね4:6くらいか。

(2)諸々法律相談

多い時で年間100件。これまで平均すると年間40~50件程度に落ち着く。
独禁法(不公正な取引方法)抵触懸念、印紙税(いるのいらないの/金額は)、会社法(組織再編手法、取締役会運営ほか)、金商法・東証開示規則(開示の要否、上場規程の指摘など)、著作権(いやいやアニメ画像パクったらアカンて!事案あり)、他社からの商標権侵害、他社からの特許権侵害、ここ数年は中小企業等経営強化法について、申請する取引先に手順を教えてあげるなんかもありました。イミフです。

(3)紛争

人事に巻き込まれ、組合との団体交渉、減給の調停~訴訟数件(大半が実質負け和解)、販売先からの返金訴訟(実質負け和解)、当社から賃料増額訴訟(20%上昇和解!)などなど。ここ10年は全く起こってないので、あんま覚えてない…

(4)コンプライアンス推進

・コンプラアンス遵守講義(新人・中堅(主任・係長向け))
・下請法講義(実務者)
・内部通報事務局
・規程管理、定期見直し
・ここ2年間は、定期的に行動規範を読ませるなど。
活動はいくらやっても成果が見えないので、浸透度もわからず。難しい…
※社内遵法アンケートなどは、ボス指示により実施せず。

(5)株式事務

株主優待を始めたり、株主名簿を管理して傾向分析したり。株主総会当日までの議決権を集計して、賛否判定をして大株主に議決権行使書の郵送を依頼したり。
いや何で俺がやっとんねん的な仕事ではあります。でも上場会社なので、株主を意識した経営はせざるを得ないし、2015年にはコーポレート・ガバナンスコードなんて仰々しいもんも施行されてしまったので、経営陣にバシバシ意見を言えるのは、法務のままでは味わえないことですから、まあ遣り甲斐はあります。

(6)法人登記

もともと司法書士に依頼をしていましたが、業績がどんどん悪くなっていくにつれコスト削減を強いられ、自前で登記書類の作成、申請を行うようになりました。定款の目的変更、役員変更/代表者変更、本社移転、組織変更、責任限定契約の締結、増資/減資、設立/解散/清算などなど。
 登記は管轄区域ごとに言ってることが変わったりするので、かなり慎重を要しますが、最近ではAI-CONみたいに簡単に申請書類を作れるサービスも出てきたので、効率化が進められるところですね。

他にもいっぱいあるのですが、目次が大変なことになるのでこの辺で。


2.今後の法務像

長年↑の業務をし続けてきた1人法務の私が、今の上司に苦言を呈される内容もふまえて、どういう風に法務が成長をしていけばいいのだろうと考えた結果、次のようになりました。

(1)法律の勉強は必須

当たり前ですよね。法律を知らないと法務にいる価値はないと思います。いくら人当り良く、いろんな相談を受けて、調べて、回答し続けてきたとしても、その法的知識が定着していないのなら、そりゃダメだなと思いました。
 ですから、今は大学でもまともに読まなかったような基本書を買って読み直すようにしています。

(2)数をこなそう

契約は数をこなすことで慣れていきますし、勘所もわかってきます。
依頼相談についても、来たものをとにかく早く捌く!
そしてやったことは記録を残しましょう。
未だに、入社当時の事案について問い合わせが来ることもあります。
数をこなすということは、それだけ実践知がたまっていくということで、似たような相談がくれば「あ、以前似たような相談あったよな」と対応する引き出しが増えていきます。
 ですから、分からない相談が来たとしても調べつくして、しっかり回答してあげる、そしてそれを記録に留めておくという一連の行動が必要不可欠です。また、なるべく時間を作って本やネット(信頼性のおける人の提供する情報)で振り返る機会があると、尚良いと思います。

(3)企業法務と法律家は違う(?)

これは賛成より反対の方の方が多いのではと思いつつも、自分はそう感じたというもの。ここで言う「法律家」とは、弁護士を想定しています。
 以前は、法務へ相談が来た時も、法的見地から「こういうリスクがある」と指摘するだけで、そのリスクをどう解消するのか、リスクテイクの判断については依頼元任せでした。これをやってしまうと、法務は依頼元に嫌われますし相談もされなくなっていきます。リスクを提示する必要があるのは事実ですが、依頼元が知りたいのは「そのリスクの回避方法」なのです(私は、依頼元から嫌われないように、「いや私はこう思うんですけど組織的にはゴニョゴニョ…」と中途半端なことしていました)。
 1人法務で経験の浅い人だと、「さすがに自分からそこまで提案できないよ…」て人はいるかもしれません。その場合は、依頼元と顔を突き合わせて話し合ってみればいいでしょう。どうせ最終的には稟議とかで判断していくんでしょ??(知らんけど)
 たとえ解決できなくても、そういった依頼元への配慮や振る舞いが、依頼元を助けることにもなる…かも?

(4)勉強をし続けなければならない

1.と何が違うんだということですが、1.は法律の話に特化したもの、4.は「全て」です。私/あなたが生きてくつもりなら、勉強しましょう。日常を過ごすことも全て勉強です。電車内の広告記載は景表法を守っているか?を考えたり、ガムやコーヒーをコンビニで買うのも民法の売買ですから、どのタイミングが契約の申し込み/承諾なのかを考えたり、法律は身近に、あらゆるところで関係していますので、全部勉強になります。
 法務は社会情勢、法律の改正動向、企業の動向、自社業界の動向など、とにかく幅広く情報収集しなければなりませんし、高い倫理観や道徳も備えていないといけませんので、法律だけやってればいいというわけではありません。

3.さいごに

私の新上司は、大企業のグループ子会社でコンプライアンスを専門に30年やられてきた方。弁護士も目指したことがあるらしく、法的三段論法にうるさいですし、法務とはかくあるべし!という確固たる信念を持っている方です(私はそれに賛同していませんが能力が高いのは事実)。
 「都度の火消」を「同時並行的に勉強しながら」やってきた私は、新上司からしたら知識不足・勉強不足であり、注意指摘されまくる毎日です。
 しかし、こういう人がいるから勉強不足を自覚しましたし、基礎がどれほど大事かも改めて痛感しました。ですので、ここで同じような境遇の方、これから法務をやられる方には「俺のようになるなよ」という気持ちを込めて、「ちゃんと勉強せんとアカンよ!!」と言っておきたい。
 今年入った部下にも同じことを言ってますが、わかっているやらどうやらわからず、ドキドキの毎日です。

それではこの辺で。

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