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「技術が発達した今、人間以外の生物とどう付き合っていくか (Human Limitations – Limited Humanity) 」 Out of the Box : Ars Electronica #2

こんにちは。
オーストリア・リンツで毎年開催されているアルスエレクトロニカ・フェスティバル (Ars Electronica festival ) Out of the Boxに参加しました。
渡航で感じたことや考えたことについて、複数回に渡ってレポートしていきます。

今回は、メイン会場であるPOSTCITYのバンカーエリアの展示会「Human Limitations – Limited Humanity」のテーマと作品について紹介したいと思います。

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1. Human Limitations – Limited Humanity

“Human Limitations – Limited Humanity” では、人間と環境の関係性、また人間の限界をテーマとして扱っています。

こちらの動画では、総合芸術監督のストッカー氏とChristl Baur 氏が、今回の“Human Limitations – Limited Humanity” というテーマについて語っています。

ストッカー氏の最後のコメント

"The typical limitations of humans can be removed and overcome with technology. we have robots that run faster than us, we have AI systems that can do certain things mush better than us. At the moment we are asking ourselves whether humanity as such is at its limit? "

以下直訳

"人間の典型的な限界は、テクノロジーで取り除くことができます。
私たちには、私たちよりも速く走るロボットがあり、私たちよりもはるかに上手く物事を行えるAIシステムがあります。
現時点では、人類自体が限界に達しているかどうかを自問しています。"

人間の限界は、テクノロジーで取り除くことができるが、CRISPR-Cas9のような遺伝子改変技術や、マイクロチップ・インプラントなどによって、人間の身体を強化できるようになった私たちは、将来どの程度まで身体の強化に依存するのか? と述べられています。


2. バイオアート作品 / 「技術が発達した今、人間以外の生物とどう付き合っていくか」 

「技術が発達した今、人間以外の生物とどう付き合っていくか。」  いわゆる、バイオアートの文脈の作品が "Human Limitations – Limited Humanity" では多く見受けられました。

Institute for Inconspicuous Languages: Reading Lips / Špela Petrič
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こちらは、植物の細胞の動きを唇の動きとみなして、言語化。データを収集し言語パターンを学習させる という作品です。人間と植物はどのようにコミュニケーションを取っていくのか。ということをテーマに扱っています。
アーティストのŠpela Petričさんは、植物をテーマに多くの作品を手がけており  OK Centerで展示されている Confronting Vegetal Otherness: Phytoteratology という作品は 今年のArtificial Intelligence & Life Artのカテゴリで受賞していました (動画)

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Confronting Vegetal Otherness: Phytoteratology /  Špela Petrič

!brute_force / Maja Smrekar
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こちらは、犬の動きを学習させ、人と犬の関係性を考えるという作品です。アーティストのMaja Smrekarさんは、2年前に「K-9_topology」という人間と犬の共進化のプロジェクトで受賞しています。犬と人間の五感の違い(人間は視覚・聴覚だが犬は嗅覚)による匂いを介したコミュニケーションや、 犬を授乳して育てるなどの4作にわたるプロジェクトで構成されています。このプロジェクトに関しては、こちらの記事に詳しく記載されています。


Earthlink / Saša Spačal

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こちらは、バクテリアを用いて吸入と呼気を循環させる? という作品。(内容はキャッチアップ中) ガラスの容器がとても作り込まれていました。

Human X Shark / Ai Hasegawa画像5

こちらは、日本人アーティストの長谷川愛さんの作品。オスのサメを魅了する香水を開発するための研究プロジェクトです。 香水をつけて人が女性のサメに変身するという試みです。長谷川愛さんは、3年前のRADICAL ATOMSでも(Im)possible babyというプロジェクトを出展をしておりました。これは、同性カップルの遺伝子情報から、どのような赤ちゃんが生まれるかをシミュレーションするというものです。

※ こちらに記載していない作品でも、バイオアートに関する作品は多数ありました。(Ok Centerの One Tree ID など)

3. 倫理観

バイオアートといえば、福原志保さんが手がける、「亡くなった人のDNAを木に注入し生きた記念碑にする」 biopresence が挙げられます。こちらのbiopresenceでは、出展にあたって、倫理的な議論もなされています。

例えば、イギリスでは人間が神を超えて、自然を操作してはいけないという宗教観があったり、遺伝子組み換えへの恐怖があったりなどがあります。(参考)

そこで、犬の作品を展示しているMaja Smrekarさんは
"art is definitively beyond any kind of morality. (アートは、あらゆる道徳を確実に超えています。)"インタビューで答えています


これらの作品を見て、「今の当たり前と照らし合わせると現実的ではないけれど、技術的には実現可能であるし、今後もしかしたら起こりえるかもしれない。」と感じました。

バイオアート、おもしろい。次は、久保田さんの本を読もうと思います。

他の展示紹介についてはまた次回書きます。


#arselectronica #日記 #note #ブログ #COMEMO


参考
K-9_topology, on the human/ dog co-evolution. An interview with Maja Smrekar
鶏あるいは犬:芸術の中の「生きた媒体」の系譜をめぐって p152-160
2016 年度第 9 回物学研究会レポート  「生命と非生命の境界線」 / 福原志保氏
スペキュラティヴ・デザインが拓く思考 ──設計プロセスから未来投機的ヴィジョンへ
スペキュラティブ・デザインとアート思考、デザイン思考 / システム思考・デザイン思考コンサルティング/(株)Salt
複雑系社会での「アート思考」の必要性 / (株)Salt
故人のDNAを木に埋め込んで「生きた墓標」にする

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