作品集-70

長い物語としての『撮影』

写真には「一瞬」を切り取るというイメージがありますが、実際にはそれだけではなく星の軌跡を撮影するような長時間露光では、何分、何時間という時間を表現することができます。

さらに一枚の写真ではなく、複数の写真を一つの文脈で見てみると、一日の出来事や旅行記録、さらには成長記録まで、非常に長い時間にわたり撮影という行為が続いていくことになります。

1枚の写真が伝えるストーリーといものがある一方で、長期間の写真群を一つの作品として見つめることこそ写真の本質なのではないかと思っています。

長い期間を撮り続けることで作り出される物語によって私たちは写真を撮り続けられるのです。

成長記録

なんと言っても写真にとって重要なものが「成長記録」です。特に子供の成長記録はドキュメンタリーとして面白い作品になります。

何十年という単位で見てみると、被写体が成長していくだけでなく、撮影者や撮影機材にも変化があり、そういったもろもろを感じ取れることが面白さなのだと思います。

最近はデジタルで写真を管理していることから、紙のアルバムに分かれてしまわず一つの塊として「ライフログ」となっている場合も多く、子供時代だけでなく大人になっても記録が続いている人もいるのではないでしょうか。

また子供の頃の写真は親が撮影したものですが、青年期以降は自分や友達が撮影したものになります。それが上手く一つに集められれば大作になります。

しかし成長記録は、大量の活動記録が集まるだけでは駄目です。適度に時間間隔をあけて圧縮して見られるようにしてあげなくては面白味が出てきません。
そういう意味では、写真選択(整理)まできちんとおこなわなければ完成しないとも言えます。

定点撮影

同じ被写体を撮り続けるということでは成長記録と同じですが、より厳密に撮影のルールを設け、微細な変化も逃さずに捉えようとするものです。
多くの場合は、同じ場所から同じフレーミングで撮影することで作品としての完成度が上がります。

視点を固定することによって見る者は微動だにせず被写体をじっと見つめ続けているような感覚になります。

それが時には、愛情であったり、冷静さであったりするのです。

単なる記録として撮影される場合もありますし、時間の表現作品として撮影される場合もあります。

何年も掛ける定点観測を計画して撮り始めるというのはよっぽどの思いがなければできませんので、実際には以前に撮影したものを時間をおいてもう一度見たときに「同じフレーミングで撮ってみよう」ということで始まり、それが習慣となり定点観測のために撮影に行くという風になっていくのでしょう。

こういった撮影テーマを持てる人はとても幸せです。定規の目盛りのように人生の中に点を打っていくことで、その写真を撮ったときの自分のことを思い出すというもの素敵な写真の楽しみ方だと思います。

リベンジ撮影

一度撮影したものをもっと良い写真にするためにもう一度撮影する行為です。

カメラがデジタルになり直ぐに再生して確認することができるようになったことで、その場で理想の表現を追求していきやすくなりました。

しかし家に帰ってきてPCの画面で見ることで、現場では分からなかった色々なことを感じたり、さらに時間が立つことでまた新たな表現をしたくなることがあります。

写真を撮る楽しさは、このリベンジ撮影にあると思っています。リベンジ撮影があるからこそ、同じ被写体を何度も撮る理由を持つことができるのです。

カメラを変え、レンズを購入し、しっかりと下調べをして、最高のタイミングで同じ場所に向かう。もうそれは偶然の出会いではなく、表現者として自分から会いにいくというとても能動的な行為なのです。

春の桜と秋の紅葉は、ほんの一瞬しか最高の瞬間がありません。その瞬間のために何年もリベンジ撮影している人がいます。
私も去年行ったあの場所へもう一度行ってみようかと考えています。

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