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ソリッドをリキッドに変換する写真

これまでデジカメUIオタクとして、何度か写真体験や作画表現の視点で最新のアートフィルターであるネオノスタルジーを題材にした記事を書いてきました。

6/19に公開された最新ファームウェアによってついにOLYMPUS OM-D E-M1 Mark IIでもネオノスタルジーが撮影できるようになった記念に、最近感じていることを少し書いておきます。

なぜかファームウェアのバージョンアップの記事にネオノスタルジーは入っていないんだよね

プロカメラマンやハイアマチュアの人たちが多いM1 Mark IIに入ったことの意味を考えてみるために、どのような視点が新しくまた写真表現に活かしていけるのかを考えてみました。

ネオノスタルジーの正体

まずネオノスタルジーは「カワイイ系」のアートフィルターだと思われていますが、実際にはダークとポップの融合した「カッコカワイイ(カコカワ)系」です。

一つのシーンに対してユルイ表現からヘビーな表現まで調整によって見せ方を変えていくことができます。

初期のアートフィルターはAUTOモードの仲間として、調整項目が制限されていたり、撮影設定を調整しても結局似たような絵作りになる傾向がありましたが、ネオノスタルジーでは主に露出補正によって大きく雰囲気を変えることができるようになっています。またフラッシュを使って光にメリハリをつけることでよりネオノスタルジーらしさが強調されることも大きな特徴です。

つまり、表現の幅が広く、本格的に使いこなすためには、経験や明確な表現の狙いを考えなくてはいけない上級者でも楽しめるモードなのです。

モノクロ写真と同じで、違う

以前、露出補正によって光の加減をコントロールする特徴がモノクロ写真の撮影体験と同じであるという内容の記事を書きました。

その時は「ネオノスタルジーはデジカメ時代のモノクロ写真だ」というニュアンスのことを書きました。

しかしその後、アサヒカメラの5月号のモノクロ写真特集を読んで、少し考え方を変えました。(この特集は本当に面白いのでお勧めです)

特集記事の中に「モノクロ写真は、最終ゴールとしてプリントによって写真を定着させ、物質化し質量を与えることで作品になる」というような内容がありました。(だから紙にもこだわれという内容です)

そのことをネオノスタルジーに当てはめようと思ったのですが、何かしっくりきませんでした。

実はネオノスタルジーはモノクロと違って、物質をデジタルイメージにして、その場のオーラや残像を表現する「はかなさ」の方向の表現なのではないかと思い始めました。

浮遊していて流動的な物、でもそれはフワフワとした空気や煙のように軽いものでは無く、少し甘い香りのするリキッドのようにデジタルの世界に存在しているのではないか。

それは物質化することで永遠性を手に入れるモノクロ写真ではなく、SNSの中を流れつづけフォロワーの視線にまとわりつくことで永遠の記憶になるような存在です。

誰が最初に「自分の作風」に昇華させられるか

まだネオノスタルジーを使いこなして、その写真家の作品世界にまで使いこなしている人は少ない(いない)のではないかと思います。

撮影できるカメラが一気に増え、E-PL9からE-M1Xまでの幅広いユーザー層と、充実したレンズ群を所有しているE-M1 MarkIIのユーザーが、ひとつのテーマ(お題)でつながる状況が生まれました。

オリンパスの写真投稿コミュニティ「Fotopus」で検索してみると、ポップアートは16696件がヒットしますが、ネオノスタルジーはまだ87件です。

誰が世界を自分のものにするのか。これからが楽しみです。

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