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”カメラ”玩具から長期的UXデザインを考える

写真はリアルタイムにSNSでシェアするだけでなく、思い出を長期に渡り保存することで価値を生み出すものです。そのためにはカメラを持ち歩き写真を撮っておくことが重要で、小型軽量や機動性が重視されてきたりしました。

さらに時間の幅を広げて考えてみると、赤ちゃんや子供のころの写真は自分自身で撮ることができないため大人(親)に撮ってもらう必要があります。写真を撮ってもらった記憶は大人になった時の写真との関わりにも影響してきます。

子供のころに写真を撮ってもらう頻度、枚数。アルバムのかたちで保存されているかどうか。ということがその後の親撮影の写真を引き継ぎ自分自身でそのタイムラインを引き継いでいくかどうかの違いが生まれるように思います。

手作りのお弁当のように、写真を撮らないと子供が不幸だとかと言いたい訳ではなく、写真の価値はリアルタイムシェア(SNS)だかではなく、ロングタイムアーカイブの部分があり、本人だけでは完全な形で作り上げられないものだということです。


写真との付き合いは100年以上

デジカメビジネスの長期的展開していくために、30歳で出産し80歳で亡くなるまでを3世代で組み合わせたタイムラインを体験設計のモデルとして議論していたことがあります。

3世代にわたる写真の撮影者・保存単位の変化モデルを検討していました。とくに青春期、結婚機における写真データの受け渡しのストーリーは何パターンも検討していました。

一般に赤ちゃんの時の写真は、親の思い出として管理されていますが、それを子供の管理にどのように移行していくのか、セキュリティ的な観点、ライフイベント的な視点で考えていました。

写真を撮られる側から撮る側に変わるとき、それまでの体験が強く影響してきます。それは「私の写真」という主体意識の変化でもあり、そこがちゃんとUXデザインできないとデジタル化によって写真文化が単なる情報伝達の手段に成り下がり、カメラやレンズが必要最低限の消耗品になってしまうという危機感をもっていました。


ロボット玩具になったカメラ

昭和の時代には、自分で写真を撮るようになる年齢は高かったと思いますが、写ルンですの登場によって小学生くらいから自分で撮影できるようになりました。最近では気軽に撮影できるデジタル化やスマホ利用の低年齢化によって写真を撮る経験はどんどん低くなってきているようです。

レトロブランドやレトロデザイン利用したOLYMPUS PEN、NIKON Z fcのデザイン戦略には、当人がフィルム時代に使っていただけでなく、親や祖父母世代が使っていた懐かしさが価値になっていたりします。

このように、デジカメ(スマホを含む)は、パーソナルデバイスというだけでなく、家や自動車と同じようにファミリーヒストリーや思い出と結びついたもので子供の頃の体験が強く影響してきます。

これまでカメラは低下価格の「トイカメラ」のようなものが作られたり、御まま事の小道具としてカメラの玩具はカメラそのものでしたが、まったく違う路線としてタカラトミーからキヤノンとのコラボ製品として「Canon/TRANSFORMERS オプティマスプライムR5」が発表されました。

ただ2万円近くするため実際に子供たちが遊んで、将来のユーザーになってくれるかは疑問です。それでも玩具屋に置かれて手に取るだけでも良い影響があるのではないでしょうか。

キヤノンの動きをニコンが追いかけるのは少し難しいところがあると思いますが、ソニーであれば別の形で未来のカメラユーザーを増やすような長期的UXデザインができるかもしれません。


長期的UXデザインと玩具

UXデザインには短期的UXと長期的UXがあり、製品ライフサイクルを超えて正しくユーザーのライフサイクル(人生)から価値が生まれることもあります。

玩具は子供の成長、大人になってからの価値観に大きな影響があり、カメラもUXデザインの一部として考えておく必要があります。親や祖父後との関係の中でカメラへの憧れが生まれ、それを玩具として自分の体験(ごっこ遊び)に置き換え、さらに大人になってその体験を「本物」にしていくのが長期的UXの基本パターンです。

最近ではスマホで写真を撮ることが普通になってきているので、装置としてのカメラへの憧れというよりも、SNSで人気者になることへの憧れと繋がっている感じではないでしょうか。

例えば自動車会社は、TVゲーム会社に発売前のCADデータを提供して自動車レースのゲームに登場させてきました。体験できるショールームとして直接購買層をターゲットにしている部分もありますが、憧れを醸成し長期的視点でブランド価値を高めていくUXデザインの一部だと考えられます。


あつまれどうぶつの森(あつ森)の中で釣りの楽しさを味わった人が実際の釣りにいってみるということがあります。

もちろんあつ森には写真撮影の体験もあります。残念ながら釣りやカメラはカーレースゲームのように本物に近いコントローラーが無いため、体験レベルはゲームの域を出ませんが大切な長期的UXの原点になる可能性があります。


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