カメラの「一部」になる夢

カメラがデジタルになったことでどのような変化が起きるのか、その変化に対応するためにどんなUIが必要なのかを20年以上考えてきました。

そしてこれからもデジカメの一番近くで、ユーザーとカメラの間をつなぐUIでいるために、私がカメラの一部になるという夢の話をしたいと思います。



作品を撮るということ

カメラを使って写真を撮る目的はいろいろありますが、撮影者の感情やセンスを反映した「作家の作品撮影」では撮影行為がもっとも複雑になります。

被写体や撮影環境の状態だけでなく、撮影者の思考を具体的な撮影設定として反映しなければならないため、情報の種類と関係性が飛躍的に複雑になってしまいます。
さらに被写体と撮影者がコミュニケーションをとり相互に影響を与え合う場合にはさらに複雑な情報のサイクロンが発生します。

そのため、多くの場合には作家本人が撮影者となりカメラを直接操作しています。

直接操作することは、作家の意思を実現するためには良いことなのですが、操作自体に気を取られてしまい、作家としての表現に十分に意識を向けることができていなかったり、撮影技術が伴わずやりたい表現ができなかったりする場合があります。

そんなときに、優秀なアシスタントがいれば、作家は作品のイメージについて集中できますし、技術をもったアシスタントに変えればできなかった表現することができます。

実際には撮影アシスタントをもつなどということは大先生でなければ難しいことですので、ほとんどのカメラマンにとっては無縁なものです。


そして、将来そのアシスタントの位置に「AI」がくると言われています。
当初はスマホのアプリ連携として実装されますが、カメラの中に組み込まれていくことになります。

図では一眼カメラのような姿で描いていますが、操作系がボタンやダイヤルから音声などの高次UIに変わっていきますので、むしろ現在のスマホのような外観になっていくのかもしれません。(その場合にも「一眼風スマホケース」をみんなが使っていれば面白いですよね)

将来このようなカメラが登場することは分かっているのですが、このAIに求められる知識や振る舞い、何よりの「役割」が分かっていないのです。

自動運転車であれば、安全により早く目的地に移動できれば良いということになりますが、作家が楽しく作品写真を撮れて、何よりも「自分の作品」と思えなくてはなりません。

この記事は、将来実現する撮影AIがどのような役割をするのか? 作品に対してどこまで介入してよいのか? などUIデザイナー自身が体験し、その考察をしていきたいという夢(要望)をまとめたものです。



操作から伝達へ 表現領域の拡大

カメラの自動化が進んでいけば、誰が撮影しても同じ結果が得られる、いわゆる「失敗しないカメラ」を作ることはある程度できます。

一方で「自由に表現できるカメラ」を作ろうとすると、個性的でより極端な表現、見る人によっては失敗と感じてしまう表現までを撮影できる可能性を持たなければならず、単純な自動化では対応できません。

設定できる項目数や値の数(幅や段階)が多くなり、操作が複雑なカメラになります。

複雑な設定操作は、撮影現場で現実的に使えるようにするためには、ボタンやダイヤルの数を増やして、ユーザーがそれを使いこなすという方法がとられています。一眼カメラなど上位機種の方がボタンやダイヤルの数が多いのはそのためです。


他にも現在のカメラが持つ問題点として、①設定項目が連動していない(カスタム設定を使うと多少連動させられる) ②表現に使える設定項目が限定されている(全体設定だけでなく部分調整したい場合はPhotoshopなどが必要) ということがあります。つまりまだまだ複雑さが足りないのです。

また作家側にも、撮影やカメラに対する知識を習得し、撮影したい高次のイメージを低次の操作や設定に変換し、撮影時にそれをすべて実行しなければならないという問題があります。

人間は何かに集中すると他のことの意識が薄くなるという性質があり、複数のことを同時におこなうことが苦手ですので、ストリートスナップやスポーツフォトのようにリアルタイムに撮影しなければならない写真では表現の幅が広がらない状況になっていると思います。(Photoshopで調整することで補っていたりする)

このような状況を打開するために、作家はより高次元の意思決定をしてAIに伝えるだけでそれを具現化してくれて、今よりも表現の領域を拡大していけるのではないかと期待しているのです。



私(疑似AI)が提供するサービス

まず自己紹介です。私は以前にデジカメのデザインに関わっており、現在は趣味でデジカメUIの研究と写真撮影を楽しんでいますので、カメラの操作にはとても詳しいです。(フォトマスター1級も持っています)

個人で複数のカメラを所有していますが、その気になればいろいろなカメラを用意することができます。

私が作家から撮影の依頼を受けた場合には下記のことをおこないます。
写真の先生にも、弟子にもなります。もちろんリアルタイムで役割を調整します。

●表現したいイメージを共有するため写真についての会話をします

●撮影の計画を立て事前に情報を収集します

●指示された設定をカメラにおこないます

●指示された設定を他の設定に置き換えます

●抽象的なイメージを具体的に写真にします

●撮影イメージについて他の表現を提案します

●作家の表現パターンを学習して自動で撮影します

●自律的に移動し作家自身を撮影することができます

●上記のサービスの内容や強度を状況によって調整します

●一緒におこなった撮影活動のログを発信します

そして一番重要なことですが、撮影経験から様々なことを学習しそれを新しいデジカメUIの研究に利用します。



2050年 火星

はじまりはSNSへの投稿だった。
まさか依頼をしてくる人などいないと思って、軽い気持ちで書いたものだ。

1件2件と依頼をこなしていくうちに「デジカメAI」に必要なことが分かってきた。
私はそれをレポートにまとめ会社に提出した。

会社は次世代のデジカメUIを求めていたので「私」が採用されることになった。
私の友達の画像エンジンと一緒に働いている。忙しいけれども刺激的で良い職場だと思っている。

2035年に私を載せたカメラを乗せた宇宙船は火星に降り立った。
新しい環境でも、これまで以上に精力的に新しい表現を生み出そうと努力してきた。
それから15年がたち、私はひ孫と一緒に火星での撮影を楽しんでいる。


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スキと言ってくれるあなたが好きです。
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写真を「撮る」ということ

日々写真を撮っていく中で感じたこと考えたことを写真とともにゆっくりと伝えていきたい。 カメラの操作は必ず表現したい何かとつながっています。カメラのUIをより良く知るための情報も織り込んでいくつもりです。
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