リモートグリップはスイバルの夢をみる
4月14日にニコンから発表されたリモートグリップ「MC-N10」を見ていろいろ考えさせられました。どんな製品かと言うと「一眼カメラからグリップと操作系を切り離したもの」です。
三脚操作をしながらでもカメラと同じ操作部を使うことができます。今のところはそれ以上の使用例は出てきていませんが、色々と妄想してしまったのでちょっと書いてみたいと思います。
デジカメ初期に登場した「スイバル」カメラ
フィルム時代が長く続きさまざまなデザインのカメラが登場しましたが、フィルムとレンズの制約からそれほど大胆なことはできませんでした。
そこに登場したのが現在も続くデジタルカメラの最初の製品と言われるカシオのQV-10です。フィルムカメラでは実現することが難しいレンズ部が自由に回転する機構をもっていました。
この機構の採用はデジタルによって新しい撮影スタイルを拡張できることを示すことになり、これを引き継いだのがニコンです。
スイバル機構が撮影スタイルを拡張できるのは、UI部(操作と表示)と撮像部(レンズと受像素子)が分離することで撮影領域または操作領域に自由度が生まれるからです。
最近では、スマホアプリを通してUI部と撮像部を分離する形式が登場してきておりスイバルカメラの発展形となっています。
カメラからスマホに
ご存じのように一時は非常に売れていたデジカメは、スマホの登場によって影を潜め、それに合わせて操作手段もタッチUIに変わっていきました。一部のデジカメではスマホに合わせてタッチUIを取り入れようとしましたが、同じレベルの操作性を実現できずに終わってしまいました。
現在デジカメで生き残っているのは一眼カメラと呼ばれる「カメラらしい」カメラです。第一の特徴は大きなレンズを中心とした撮像部ですが、もう一つはグリップやその周りのダイヤル、ボタン、さらにファインダーを含めたUI部と考えることができます。
レンズや受像素子の性能はスマホとの比較でよく話題に上がりますが、操作部の優劣については残念なことにあまり語られていません。カメラらしい操作部のために一眼カメラを使う人がどのくらい居るのかわかりませんが、今回の製品によってその辺りの情報が外在化されれば良いなと思います。
動画撮影がカメラをもう一度デジカメにする
現在YouTubeが映像家にとって主要な表現場所の一つになっています。収益化という目的が主導した可能性はありますが、静止画から動画へ表現の領域を拡張することを競争し楽しんでいる状況です。
動画撮影では、リグでシステムを組んで撮影状況に応じて柔軟に対応できるように自由度を実現しています。その流れの中で要素をモジュールとして扱う製品が登場してきたのです。
撮像部の製品やモニター、リモコンシャッターのような製品はでてきていましたが、本格的な操作部のモジュール製品はこれから盛り上がっていく分野だと言えます。
タイトル部の写真にもあるハッセルブラッドのVシステムやモジュールカメラのコンセプトがシンプルな操作系のスマホの対局として、デジカメ初期にあったデジタルならではの自由度や拡張性、遊び心というものをもう一度デジタルカメラに思い出させてくれるのではないでしょうか。
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