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Onlineで日本語を教える|#2 PFを選ぶ

 さて、前回の記事を読んでくださった方がいらっしゃれば、また来てくださってありがとうございます。今回初めての方、はじめまして。
オンラインで日本語を教えている、こゆきと申します。
 ここでは、人見知りでど素人の私が、約2年前に始めたオンライン日本語講師の仕事について、つらつらと思いつくままにお話ししたいと思っています。
 時系列に整理してお話しできないこともありますが、ご理解くださるとうれしいです。今日は、日本語教育能力検定試験に合格した後、主に語学プラットフォームへの登録についてや、今の私ならこの最初の準備でなにを考えるかをご紹介したいと思います。


 

1:どの語学プラットフォームにする?

 そうです、すでにみなさんご存知の通り、ほんとにたくさんありますよね。
 念の為解説しておくと、ここでいう語学プラットフォームとは、オンラインで言葉を教えたい人と教わりたい人をつなぐWebサイトのことです。いわゆる言語教育サービスを提供する企業のサイトとは異なります。
 語学プラットフォームは、先述の通り、教えたい人と教わりたい人をつなぐことが目的です。正直なところ、レッスン品質の均一化は行われていないといってよいでしょう。教えたい人がそれぞれのスキルを活かして、自由にレッスンを行えることが多いです。もちろん、オンライン上で講師に対してトレーニングを行う仕組みを持っているサイトもありますが、実際のレッスン品質向上につながるほど充実したトレーニングはありません。
 サイトの登録条件によってはプロとしての経験や専門知識がなくても講師として登録が可能なので、教えたい人にとって門戸の広い場であることは間違いありません。実際には、資格などを必要としないプラットフォームであっても、登録を希望する申請が却下されるということもあるようですが、個人的な感覚ではよほど必要な情報入力を怠るとか、なんらかの倫理に反するとかいった申請をしない限り、登録はできるのではないかと感じます。
 私は、過去に教壇に立った経験はありません。また、日本語教育能力検定試験に合格しただけで、いわゆる養成講座も受けていません。もし、日本語学校の採用試験に応募したら、経験不足(とその他)できっと採用に至らないだろうと思います。そんな私にとっては、この語学プラットフォームの敷居の低さは魅力でした。プロフィールを公開しさえすれば、まず入り口には立てるのですから。

 数あるプラットフォームに関する解説は、詳しい情報が先輩方によってすでに公開されていますのでここではいったん割愛したいと思います。私がどのプラットフォームに登録するかを決めるのに、何を基準にしたかというよりも、今もし初めて登録するなら、何に注目するかを少しまとめたいと思います。

1)訴求市場はどこか?

 プラットフォームに登録するときに考えるべきことは、まず訴求市場がどこであるか、だと(今なら)考えます。多くの場合、利用にあたっての手数料や、登録のしやすさなどを検討材料にしますが、もちろんこれらも重要ではあるものの、誰に自分を見つけてもらうのか、誰に教えるのか、ということは、レッスン価格・レッスン内容・稼働時間に大きな影響を与えます。

 円安傾向のある今は特に大きな問題かもしれません。日本に住んで外貨で稼ぐというのは、現時点では最も効率のよい収入のあり方ではないかと個人的には考えています。この傾向がいつまで続くのか、などの経済的な専門知識はありませんが、少なくとも海外にいる方を相手に何か始めるのに、ドル・ユーロの動向やその他地域の物価の動向などはある程度知っておくに越したことはありません。どの地域の方を主にクライアントにしたいのか、という観点はこの後に述べるすべての項目と関連があります。
 なお、プラットフォーム上で日本語を教えている講師・教師の方々の口コミを見ると、書かれている言語などによって、そのサイトでどのような方が多く受講しているのかイメージすることもできそうです。
 
 プラットフォームには、台湾や香港を中心としたアジアで多くのユーザーを抱えるサイトもあれば、ヨーロッパや北米などの地域で広く知られているサイトもあります。私はその両方に現在登録してレッスンを行っています。その中で、それぞれのプラットフォームで出会う学習者さんたちの属性が、やや異なっていることを実感しています。
 価格やレッスン内容などについて順に見ていきたいと思います。

2)レッスン価格帯

 まず、サイトの訴求市場によるレッスン価格への影響について考えてみます。
 登録をしたばかりの講師・教師の方は、いずれのプラットフォームでも、やや安いと感じられる価格設定から始める方がいらっしゃるように思います。この方法が吉と出るかどうかは個人差があると思いますが、これについても別にページを割きたいと思います。(私は正直言って価格設定には失敗しました。これから始める方には同じ轍を踏んでいただきたくないので、また書きます)

 設定された価格帯はプラットフォームによって違いがあると感じます。レッスン価格帯を調査している先輩方もいらっしゃるので、ぜひご覧になってください。
 さらに、受講する側の感覚にも違いがあると私は感じています。例えば、ヨーロッパや北米・オセアニアの学習者は、必ずしもすべてではありませんが、マンツーマンレッスン1時間に対する対価として、日本的感覚よりも高い価値感覚を持っているように思います。日本で暮らしていると、時給の考え方では2,000円を超えると高い、という感覚があるかもしれません。もちろん職種によりますが、専門家ではない人の時給としては、2,000円とか3,000円となると高いな、と思うのではないかと思います。先述の通り、プラットフォームによってはいわゆる素人でも登録が可能なサイトがあり、そのような方で、日本円で1時間3,000円以上の価格でレッスンを行っている方がいらっしゃいます。もちろん、その価格に見合った受講者が納得するレッスンを提供できているからこそ、できることではありますが、たとえ専門家でなくとも、日本国内の感覚より高い時給で価格設定するチャンスがあるということです。学習者側から見ればそれでも安い、と思ってもらえる可能性が高いと考えられます。
 価格とレッスン品質のバランスがとれていなければ、どちらが低い場合も問題は起きるでしょうが、まずは訴求相手がヨーロッパ・北米であれば、日本的感覚をちょっと捨てて、サイト内の全体の価格帯を見て自分のレッスン価格を検討してみても良いと思います。
 なお、1時間のレッスンに、およそ平均して15〜20米ドルが設定されているようです。

 この点で、アジアメインのサイトではちょっと条件が異なります。もちろん台湾・香港では、若い世代の方も語学学習にあてられる経済的リソースをじゅうぶんにもっていらっしゃいますが、1時間あたりのレッスン価格の予算として、15米ドルまでを希望する方も多いです。登録されているすべての日本語講師・教師の方のデータを調べたわけではありませんが、さきほど100名くらいの講師・教師の方の50分あたりの設定価格を見たところ、中央値が14米ドル(最頻値は同じ)、平均値は16米ドルくらいでした。 
(2023年12月時点)

 極端に安いまたは高い価格設定の方がいらっしゃるので、平均値の妥当性はもう少し精査しないとなんとも言えませんが、中央値と最頻値がほぼ一致することから、およそ15米ドルまでの価格設定がよくみられると言ってもよいかもしれません。上述のヨーロッパ系プラットフォームと比べて、少し下がる可能性が高いです。

 誰に訴求するかは、どのくらい支払ってもらえるかと同じ話です。稼ぎたくてやるのではない方もいらっしゃると思いますが、自分の時間を充てることの意味はぜひ考えてほしいなと思います。自分の1時間をいくらで売るのか、という問題でもあり、また他の同業の方の市場価値にも直結します。
 私は安くていい、私のレッスンはそれほど高い価値がない、というご自身でのジャッジが正しい場合もあるけれど、日本語のレッスンとは安いものである、という市場価値の醸成に思わぬ形で加勢することになるかもしれない、と私は考えます。真に価値のあるものには、正当な対価が支払われるべきです。不当に安いとは、誰かが損をしている(そうとは知らずに、という場合も含めて)ということです、よね。
 

3)レッスン内容

 これは、自分のプロフィールで強みとして打ち出したものに左右されるかもしれません。かもしれない、というのは、レッスンを受けてもらってわかることのひとつに、意外にも学習者の方たちが講師のプロフィールを読んでいない、と感じることがあるからです。じゃぁ何で選んだのか、と思いますが、空き時間だったり、直感だったり、プロフィールの見出し部分だけだったり、するのかもしれません。とにかく、私はこれが教えたい、教えられます!とアピールしたものとは違うことを、学習者の方たちから要望されることはよくあります。そこで、レッスン内容について、2つのプラットフォームでの傾向の違いについて、あくまでも個人の感覚で書いてみます。

 まず、ヨーロッパ系サイトでは、初心者・入門レベルから始めたい方と、びっくりするほど流暢な上級者の方によく出会います。以前ちょっとやったけど挫折した、という初級レベルの方もいらっしゃいます。特に旅行で使いたい、というご希望も多いです。ひらがななどの書き方はどうでもよくて、楽しく話したいだけ、旅行でちょっと話せたらよい、というニーズもあるので、文法を積み上げながら教えるより、どんどん話してもらうレッスンがしたいと考える方には、興味深いかもしれません。
 どちらかというと、趣味で学ぶ方が多い印象です。
 個人の得手不得手があると思いますが、実は、私は初心者・初級者のレッスンは得意ではありません。理由のひとつに、丁寧なレッスン準備と視覚資料の作成が必要となるからです。なくてもできる、という方法もあると思いますが、いわゆる「手ぶら」で教えることは難しいと感じます。自律的学習ができるレベルに達していない人へ教えるというのは、私にはとてもハードルが高いです。何人かレッスンを行っていますが、やはり準備にかける負担は上級者のレッスンより(私の場合は)大きいです。
 しかも、ビビりの私は、初心者・初級のレッスンリクエストがあったら、正直に私の得意分野ではない、とはっきり伝えてしまいます。それでもいいなら体験レッスン受けてください、と言います。

 なお、潜在顧客として割り切って考えるならば、初心者・初級者は最大ボリュームです。それぞれが長期継続しなくても、次々と新しく学習を始める方がいます。当然ながら上級者になるほど、その数は減っていきますので、いわゆるピラミッドの最も幅の広い層です。そのため、初心者・初級者にターゲットをしぼり、教材の整備もレベルを限定することで効率化を図る、という方法もありそうです。

 次にアジア系プラットフォームで私が出会う学習者さんたちについてです。
 完全に、上級の学習者さんが多いです。JLPT N1(日本語能力試験の最上級レベル)に合格済みで、会話や敬語を練習したい、とか、日本語で仕事の面接を受ける準備がしたい、とかそんなリクエストが多いです。
 全体として、趣味というよりも実務として、または自己啓発として、という学習動機が多いように感じます。

 実際話してみると、本当に運用能力が高く、感心しきりです。
 しかし!感心してばかりはいられません。誤用の指摘や文法の質問などもやはり説明が難しいものや、複雑なものが多いです。ニュアンスについての質問も多いです。これについては、感覚的なものを教えることも必要かもしれませんが、私は個人の感覚やなんとなくこんな感じ、といった説明をしたくないので、言葉の由来や使われ方をコーパスや辞書を使って調べなくてはいけないことも多いです。作文やメールの文章の添削希望もあり、これも文法エラーの指摘にとどまらず、日本語として自然でスムーズな表現や書き方を教えてほしいという希望も多いです。もはや日本語ではなく作文のレッスンという様相になることもあるくらいです。
 ただし、実は私にとっては初心者・初級のレッスンよりも負担が少ないです。なぜなら、上級者で自律的学習ができる人たちは、これが知りたい、これがわからない、と自ら明確にリクエストしてくれるからです。何をリクエストしていいかわからない方の場合も、中・上級であれば、その人の目標と現在のギャップを確認し、アドバイスしたり学習計画を作ることはできます。しかし、初心者については軌道に乗るまではすべてお膳立て?をしてあげる必要があり、これは私の考えでは特に経験を必要とする技術です。
 私にはそれがありません。
 

2:時差があることのメリット

 日本に住んでいる講師・教師の方で、日本時間に合わせて働きたいという場合には、時差の少ないアジアの学習者にレッスンをするほうが負担が少ないかもしれません。逆に、北米エリアの学習者のレッスンを、日本時間の早朝や深夜に行う方が昼間が自由になって都合が良い、という方もいらっしゃるでしょう。時差があることで、日本時間での生活に影響を与えずに、兼業・副業ができるメリットもありそうですね。

 これは登録してからわかったことですが、自分がレッスン可能な時間帯をプラットフォームに登録する際に、需要の多い時間帯が可視化できるようになっています。私が登録している2つのプラットフォームに関しては、ヨーロッパ系では日本時間の午前中、それほど早朝でなくても需要があるようです。加えて夜8時以降のあたりは需要が多いとされています。
 また、時差の少ないアジア系のプラットフォームでは、私の場合は仕事をしている方が多く受講してくださることもあり、夜19時以降深夜までの希望が多いです。土日希望も多いのですが、家族が休みの日に私だけ働きたくないので、今は実施していません。仕事の休憩時間を使ったり、シフト勤務の方もいらっしゃるため、13時〜15時頃も意外に予約が入ります。
 私は早起きが苦手なので早朝レッスンはやっていませんが、今は夜のご希望が多く、どんどん遅い時間のレッスンを追加オープンして対応しています。
本当は夜は遅くても22時までにしたいのですが、これも将来的にどう調整するか考えたいと思っています。

3: まとめ

  オンラインレッスンは、その多くがマンツーマンです。公開されるレッスンはほとんどありません。そのため、どのように教えるかとか、みんながどんなふうにレッスンをやっているのかについて、共有される情報もほとんどありません。私も理想やお手本すら見たことがないのに、レッスンはどうしたらいいんだ、と迷いました。今も迷っています。
 同じように迷っているお仲間のみなさまに、少しでもお役に立つことを祈って、この点については別に、私のレッスンについて学習者さんのプライバシーに完全に配慮した上で、今後少しずつ内容を公開したいと思っています。もしご興味があれば、また見に来ていただけると嬉しいです。そして、ご経験を積んでいらっしゃる諸先輩方におかれましては、どうか温かい目で素人を見守ってくださると幸いです。

 それでは、また🫡




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