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ひっそりと解禁日

「なんかねー、ひっそりと並んでたよー。」
「もちろん、ちゃんと入り口のところに、入って正面にきちんとあったんだけどね。」

近くのスーパーへ買い物に行って来た こざる達がボージョレヌーボーの話をしています。

「正面にあったのに、"ひっそり"だったの?」
「うん、ひっそりとしてた。」
「きっとね、ぼく達がいる時は、誰も手にとっていなかったから そう感じたのかも?」

正面の特等席に並んでいたにも関わらず、誰も見たり手にとったりしていませんでした。
近づいていませんでした。

こざる達は、今日も賑やかにお喋りしながら、夕飯の仕度をしています。

「まだ昼間だから、これから仕事帰りの人が買い物に行って、それできっと買う人もいるはずだよ。」
「そうだよね。」
「きっと都心のお洒落なお店だと、解禁日だからって大騒ぎしているのかもしれないけど、
庶民が 長閑にのんびり暮している街だからねー。」

以前は、夜中に日付がかわって すぐに飲むようにと、あちこちでイベントをしていましたね。
カウントダウンイベントというのでしょうか、大変な賑わいだったと思います。

「確かにボージョレヌーボーは、解禁日という仕掛けがあって、それを売りにしているから華やかだけど、
あんなに大騒ぎしていたのは、ちょっと普通じゃなかったのかもしれないね。」
「そうだね、バブルの頃は、まだワインを普通に飲むことが日常生活に定着していなかったと思うけど、
今はだいぶ落ち着いてきて、のんびりと楽しく飲むようになったのかもしれないね。」

飲みたい人が、飲みたい時に好きに楽しくマイペースで飲めばいいのだと思います。

「値段も手頃になってきたしね。」
「ボージョレは、元々、そんなに高いワインじゃないのに、飛行機に乗ってくるから高いんだよ!」
「フランスから飛行機に乗ってやって来たんだ、いいなぁ。」
こざるちゃんが羨ましそうに言います。

「隣に100円程度の おつまみも売ってたよ!」
「トリュフとかじゃないんだ。」
「トリュフ風味のスナックだったよー。」
「そういう お気楽な肴でいいんだよね。」

そうです。
普通に手が届く範囲で楽しむことができるのがボージョレヌーボーだと思います。

さて、夕飯が出来たようです。

「りこちゃんに、夕飯、出来たよって言ってくるね!」

こざるちゃんが鼻歌を歌いながら、りこちゃんの部屋へ向かいます。

「りこちゃーん、夕飯が出来たよ。今日は おでんだよ! デザートにアイスクリームもあるよ!
皆で一緒に食べよう!」


こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
ボージョレ・ヌーボーの隣には、ババーンと正月飾りが既に並んでいました。
よい毎日でありますように (^_^)

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