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ferm LIVING Stories vol.76 ギャラリスト Anne の家

今回はコペンハーゲンにある、ある女性ギャラリストの自宅を訪問しました。ユニークな役割を持つ住まいのお話を、最後までゆっくりお楽しみください。

〜 家とは芸術のある場所 〜

ギャラリストである Anne Aarsland にとって Frederiksberg にあるアパートは、常に変化するカラフルな作品展示の空間という芸術的進化の象徴だ。

Anne Aarsland / Anne Aarsland Gallery ギャラリスト

夫の Christian(52歳)、息子の Asger(17歳)、Max(12歳)とともに暮らす Frederiksberg の広さ215平方メートルもある Anne のアパートは、彼女のアートギャラリー「Anne Aarsland Gallery」の拠点でもある。
ここでは Anne が厳選したデンマークの現代アーティストによる彫刻、絵画、陶芸といった作品と隣り合わせで暮らしている。


(Anne)
アートは常に私の情熱でした。
アートと共に育ってきたんです。私は美術史の修士号を持っていて、長年にわたりさまざまな形でアートに携わってきました。自分のギャラリー以外にもアートサロンの運営にも参加していて、アートの展示会を個人邸で開催するポップアップアートギャラリーなども手がけています。


アートや展覧会のための非公式なギャラリーとして、Anne は頻繁に自宅のインテリアの模様替えし、最新のアート作品を置いたり家具を移動させたりする。部屋ごとに空間にアプローチすることで、堅苦しさを微塵も感じさせないオーガニックな進化を遂げるのだ。

(Anne)
個展を開催すると、空間のダイナミクスが大きく変化することがよくあります。ギャラリーは家でもあるので、展示する作品は自分が好きで所有したいと思えるものだけ。そういうわけで、このギャラリーはとてもパーソナルであり、私の好みに沿っているんです。


元々はふた部屋に分かれていた広々としたリビングは、彼女のギャラリーの中心に位置する。一方の端には、本をたっぷり納めた本棚、ギャラリーウォール、そしてオフィス。もう一方の端には、モダンなソファとクラシックなラウンジチェアが置かれた静かなオアシスがある。
大きなフランス窓から陽の光が降り注ぐリビングは落ち着いたニュアンスカラーでまとめられ、彫刻や色彩豊かなアート作品が美しく引き立てている。


(Anne)
角窓に腰掛けて下の通りを眺めるのが大好きなんです。


タフテッドウールラグと手触りのいい素材のレイヤードが、居心地の良さをもたらしている。

その一方で、ハンス・J・ウェグナーのチャイナチェアやラウンジチェアCH25などのビンテージデザインが、ferm LIVING の Rico ラウンジチェアやRotben のようなモダン家具と並んで置いてある。
展示しているアート作品に加え、Anne お気に入りはハンス・J・ウェグナーの古い Conference table で、現在はデスクとして使っている。このテーブルは彼女の亡き父親からもらったものだ。


(Anne)

懐かしい父を思い出します。このテーブルを使って何年も経ちますが、いまだにここが大好きで毎日座っています。


Anne と(夫の)Christian が2019年にこの広いアパートを引き継いだとき、夫婦はこの場所の持つポテンシャルをすぐさま見抜いた。


(Anne)
私たちは光に、眺望に、そして古くて美しい窓辺に惚れました。通りはまるでパリのような雰囲気で、古い木々やカフェ、奥には公園もあります。


一家は動きのある家をつくりたかったのだ。
ただ見栄えがいいだけではなく、実用的な家を。
木目調の壁にはアートが飾られ、天井には装飾的なコーニスが施されるなど、空間に個性を与えている歴史的な趣はそのままに、快適かつ刺激的な家族の住まいをつくり始めたのだ。


ティーンエイジャー、家族、友人、そして顧客が絶え間なくやってくる中で、彼女の家は試練に見舞われる。オリジナルの木床の使い込まれた艶や販売されたアート作品の残した壁の穴など、この家がここで暮らしを営んできたことを物語っている。

(Anne)
我が家はたくさんのことに使われていて、そのことを私は気に入っています。私にとって「いい家」とは素晴らしい人々が集まりリラックスした雰囲気で使うことに抵抗がない場所のことです。
もちろん美しくて興味をそそるアートとの暮らしは、とても気に入っています。目も脳も活性化されるんですよ。我が家を訪れる人たちには、居心地の良さと刺激を受けて欲しいと思っています。


しかし、他人に向けて家を解放するのは挑戦でもある。

(Anne)
子どもたちが病気だったりパーティーに参加したりすると、家の中がごちゃついている感じがたまにしますね。疲れますけど、少しはキレイにしないとプライベート感がなくなってしまいますから。


公共空間でもある家に暮らすことは、家族にとってどうなのだろうか?


(Anne)
いろんな人が我が家にきてくれるのは嬉しいですね。新居を手に入れたら手放すのが難しい作品もありますが、いつでも美しいアートに囲まれているのは特権でしょ。


彼女の夫も息子たちも、どちらにも開けたこの家の性質について理解しアートを評価している。

(Anne)
顧客の予約があることを忘れて、家族が朝食に起きたらキッチンで知らない人と鉢合わせ!なんてこともあるんですよ(笑)。


***

いかがでしたでしょうか。

ギャラリストとは自分のギャラリーを持つ美術商のこと。
この連載初登場の職業ですね。
自宅がギャラリーってどんな感じなんでしょうか。想像がつかないですが、常にアートの力を感じる空間は、きっと暮らしも大きく変えるのでしょう。

家のポテンシャルを素早く見抜くことができたのも、きっと夫婦の審美眼が日頃から鍛えられていたからなのかもしれません。
そう考えると、何に囲まれて暮らすかということが、暮らしの未来を左右する大切な選択なのだとも思えてきました。

それにしても……、朝起きたら知らない人と鉢合わせとは、なんともスリリングな暮らしですね。


次はどんなストーリーに出会えるのか。
ぜひお楽しみに!


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