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ferm LIVING Stories vol.47 建築家 Kristina の家

今回のストーリーの主人公は、あることに特化した建築家になると幼い頃から夢見ていた女性 Kristina Line です。

〜 とある建築家の家 〜

今回私たちは、建築家 Kristina Line の自宅を訪ねた。彼女は小さなボートハウスでパートナーの Anton と、愛犬 Skipper と暮らしている。

Kristina Line / 建築家

Kristina はオスロー郊外の小さな島で育った。
小さい頃からすでに彼女は、自然の中で人が家を建てるということに魅了されていたのだそう。ニューヨーク北部の広大な森に小さな家を建てた Kristina と同じく建築家の Anton だったが、コペンハーゲンに戻ることを決意。そこは二人が出会った場所でもある。

この家は二人でデザインして建てたもので、ユニークで彼女たちの個性際立つ自宅は、コペンハーゲンの港のほとりにある。

コペンハーゲンのひっそりと隠れたエリアには、ボートハウスの家々が港を目の前にして肩を寄せあうように建ち並ぶ。この地域は様々な個性が集う住宅地で、手作りの表札だけが誰がどこに住んでいるのかを教えてくれる。

「Kahytten」とだけ書かれた表札。
そう、ここが Kristina Line の家なのだ。

なぜ「Kahytten(デンマーク語で船室)」なのかと尋ねると、Kristina は微笑んだ。彼女はノルウェー、オスロー郊外のある島で育った。家にいるということは、自然の真ん中にいるということを表す、そんな場所だ。
ノルウェーには「hytte(デンマーク語で小屋)」を建てるという大切な伝統があるのだと、彼女は説明する。多くのノルウェー人にとって自然の中で暮らし、自分の居場所を持つということには意味があるのだ。Kristina は早くから住宅の設計と空間に思いを巡らせることへの興味を持っていて、子供の頃は「hytte 建築家」になりたいと思っていたそう。


(Kristina)

私にとって自然の近くで暮らすことは究極の夢なのです。
環境に配慮しつつ、いかにしてこの夢を実現するのかという思いが、
私を突き動かしています。この家の名前は、自然の中に建つ小さな建物である hytte の特徴に敬意を表したもの。また、Kahytten はデンマーク語で船室を意味する言葉で、水辺に暮らす私たちにぴったりの名前だと思いました。


Kristina は小規模な建築家として個人のためにヴィラやサマーハウスを設計する一方で、企業のためのインテリアデザインプロジェクトにも携わっている。

(Kristina)
私の仕事は多岐にわたります。既存の建物をリノベーションし生まれ変わらせるものもあれば、0からスタートするものもあります。


芸術と建築の修士号を持つ彼女は、自分の直感を働かせて、芸術や哲学、詩をプロジェクトに取り込むよう教えられてきた。


(Kristina)
常に周辺の環境を読み解き、与えられた空間の歴史を尊重するように心がけています。主導権はいつも建築家の手にあると思うのです。なので、その建築スタイルを尊重し、内装はそれを反映させなければなりません。

ボートハウスプロジェクトの道のりは平坦ではなかった。
Anton の父はこの地域で働いており、彼はこの癖のある地域をすぐに気に入ったのだが家は代々受け継がれてきたため、ようやく彼らが購入の機会が得られるようになるまでには強い忍耐力が要求されることとなる。


(Kristina)

ここに住む人たちはすごく親切で、コミュニティは親密。けれど、この地域を守り、なにか新しいものや派手なものに変えさせたくないとも思っています。この場所には独自の精神が宿っていて、人々はそれを何としても守りたいのです。しかし、だからこそ、私たちはここが大好きで、リノベーションの全過程において敬意を払いました。

木のディテールや自然の素材、柔らかなフォルムは、Kristina の建築やインテリアデザインに対するアプローチがボートハウスにも反映されていることを明確に示している。この家はある意味では伝統的なのだが、同時に実験的でもあるのだ。

家の主動線は隣家と調和している。
しかしながら、Kristina は家の中のレイアウトとディテールを実験的に仕立てた。たった60平方メートルの小さな家をギッチリと詰め込まれた空間ではなく、開放的で機能的なプランで作りたいと考え、ボートハウスの精神に敬意を払うため、そして温もりのある雰囲気を生み出すために自然素材のみを使用した。

Kristina 曰く、インスピレーションはさまざまな形でもたらされるのだそう。自身の創作活動にとって、自宅はとても重要だと彼女は考えている。

ボートハウスの内装には異なる質感を加え、新しく選び抜かれたオブジェと大切に受け継がれてきたものとを融合させることにした。
インテリアのこだわりについて尋ねると、彼女はこう答えた。


(Kristina)
「本当に自分の心に響くものを選ぶ」ということだと思います。
それらを組み合わせるとき、その人にとってなにか特別な意味を持つ素晴らしいコレクションになるのです。近藤麻理恵さんが言うように、ときめくものだけに囲まれているのがいいですよね。

これは Kristina の家のインテリアに対するアプローチを見事に表している。
このボートハウスは、あたたかみのある、ニュートラルで落ち着いたトーンの空間となっており、小さなもの一つひとつには目的と物語が存在する。
Kristina が誇らしげに見せてくれた小さな木のボウルは彼女の祖父母のもので、彼らの故郷、スウェーデンで作られた。リビングにはミニマルな印象の大きなソファが置かれている。これは Kristina が Anton と一緒にデザインし作ったものだと教えてくれた。

Kristina お気に入りのリビングからは、午後の日差しを浴びたカーテン越しに水辺を眺めることができる。


(Kristina)
Anton と私は二人とも水の近くで育ったので、いつかもう一度水辺の近くで暮らしたいという夢がありました。


コペンハーゲンの屋根に太陽が沈む直前には、家中が幻想的に輝く光で満ちるそう。

(Kristina)
私にとって「住まい」とは、心地よく、守られていて、外界から解き放ってくれる場所。安らぎ、温もり、そして安穏のための場所ということですね。また、日々の冒険の基地でもあり、インスピレーションを感じる所でもあります。ここでは、私はクリエイティブになれるのです。そして何より、友人や家族、近所の人たちを招いておいしい食事をしたり、思い出を作ったり、将来の計画を立てたりする場所でもあります。


***

いかがでしたでしょうか。

「ボートハウス」はこの連載でも初登場の住宅のかたちですね!なんだかワクワクする響きです(笑)利便性ではなく茶目っ気をとった表札が個人的に好感が持てて、絶対に好きになる地域だろうなぁ、なんて妄想してしまいました。

その土地に宿る精神や人々の心に敬意を払い生まれた Kristinaさんたちのボートハウス。誰かにとって大切な何かに寄り添う気持ちが、このお家にあたたかな気配をもたらしているのでしょうね。

場所に対しても、モノに対しても、「大切に受け継ぐ」ということと「新しい風を吹き込む」という一見すると対照的な考えを二人は美しく融合させているなと感じました。


次は一体どんな人のどんなストーリーに出会えるのでしょう。
ぜひお楽しみに♪


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