見出し画像

W杯コスタリカ戦を振り返る

ドイツ戦での盛り上がってなさが嘘のように、午後7時の人通りが渋谷や新宿ですら少なくなった印象になったコスタリカ戦でしたが、内容結果共に残念なことになってしまいました。

ちょっと脱線しますが、こういうタイミングで応援し始める人を「にわか」と揶揄することがよくありますが、にわかがあってこそそのジャンルが盛り上がります。にわかを否定するファンたちは、自分たちが好きなジャンルの首を絞めていることに自覚的になるべきであって…と言いながら申し訳ないんですが、ちょっとだけマウントをとらせていただくと笑、一応これまでの4年間、ある程度森保JAPANの戦いを見てきた側からすれば「うん 通常運転」というところでもありまして。もちろん残念ではありますが、落胆というようなこととは違う感情でいます。ある種、想定できた事態だよなと。

ドイツ戦のレビューでも書いたとおり、日本がドイツより強くなったわけではないんです。相性がかなりの割合を占めるサッカー(フットボール)という競技において、一定のレベル内にいるチーム同士であれば何回かに1回は勝てます。今回、日本はその1回を見事にこの大舞台で実現したわけで、そのことは称賛し過ぎてもしきれません。本当に素晴らしい。ただ、それは「強いチームになった」とイコールではないのです。ベスト8を経験している、老獪なコスタリカはFIFAランクでこそ日本より低いですが、決して弱いチームではありません。日本が負けることは可能性としてそう低いものではありませんでした。

まず、今大会全体の傾向として、初戦でこけたチームが復調している割合がとても高いです。これは簡単なことではありませんね。初戦で敗れたらチームの雰囲気は悪くなりますし、それを短期間でリカバーすることは容易ではない。特に、ジャイアントキリングされた側であるアルゼンチンや、イングランドに惨敗を喫したイランの二戦目での奮闘は感動的ですらありました。これらのゲームに、コスタリカチームが大きな勇気をもらっていたのは間違いないでしょう。初戦を0-7という歴史的大敗で終えた自分たちを彼らになぞらえていたはずです。俺たちだってやれるはずだと。

結果、彼らが選んだ戦術は「いつもどおり」でした。つまりは、守ってカウンター。0-7の次だからって特別なことをする必要はないという判断です。この、ある意味勇気のある決断(これで負けてたらさらに叩かれるでしょうからねぇ…)は、日本にとっては相当なマイナス要因となりました。というのも、日本はあきらかに「コスタリカは前に出てくる」という想定でメンバーを組んできたと思われるからです。1トップに採用した上田は、総合力の高いFWですが、一番得意なのはオフサイドラインギリギリで前に出て1タッチで合わせるシュートです。前に出てくると言っても広大なスペースを空けるようなタイプではないコスタリカ相手にはうってつけに思えました。そこに左から精度の高いクロスを供給できる相馬、右SBにも同じことが期待できる山根、仮にそれでゴールまでいかなくともこぼれ球を(ドイツ戦と同じように)強烈にゴールに叩き込める堂安という布陣は、僕も試合前に「お、イケるかも」と思いました。もちろん、現在の日本の生命線とも言える「鎌田・守田・遠藤」の3人がそろい踏みだったこともかなりの安心感でしたし。

それが、うまくいかないことを感じるまでにそう長い時間は必要ありませんでした。あっという間に、コスタリカが攻めてこないことを察しつつ「これは日本の予想外れたな…」となったまま終わる前半。後半から(前半の途中から少しフォーメーションはいじってましたが)交代もしながら変化を加えようと試みたことが上手くいかず。

なにより気になったのは、不思議なほどに「いい場所」で遠藤がボールを持つ機会が多かったことです。遠藤は、2年連続ドイツ・ブンデスリーガで「デュエルキング」になる絶対的な1vs1の強さを有する素晴らしい守備的MFです。ただ、攻撃面で一人で何かをできる選手ではありません。たまにミドルシュートを決めることもありますが、かなりレア。日本のFW・MF陣の中では最もゴール近くでボールを持たれても怖くない選手ではあります。それをコスタリカは研究しつくしていたのか…日本がいいシーンでことごとく遠藤にボールが渡りました。「ここで1人かわしてシュート打てば…!」「ここで前のスペースにスルーパス出せば…!」となった時、ボールを持つのは鎌田や堂安や三笘ではなかったんです。おそらくはコスタリカが意図的に「遠藤だけを空けていた」。試合は1度しか見てませんし、コスタリカ側のコメントでそういうのもまだ見てないのでひょっとしたら違うかもですが、自分の感覚としてはかなりそのように感じられましたし、コスタリカはそういうことができるチームだとも思うんですよね。

これは「遠藤が敗因」とかいうことではないですし、ましてや失点のきっかけになってしまった吉田一人を責めるようなのも筋違いです。長友や多くのOBが選手個人への誹謗に苦言を呈していますが、僕も賛同します。彼らもプロですから、もちろんそれを負う覚悟はできています。でも、少なくともそれは今じゃない。イランのケイロス監督は大敗した初戦の後に言いました「勝った時だけ応援するのならそんなものいらない」と。結果、彼らは次戦で劇的に勝利した。僕らに今求められているのもこういう姿勢だと思います。

もちろん望んだ結果ではなかったし、こんなに日本サッカーを日本全体が応援することは久しくなかったわけですから、一ファンとしてこういう時こそ勝ってみんなで喜びたかった。そういう意味で本当に残念です。ただ、まだ何も終わっていません。以前から書いているとおり、このチームはあからさまに試合ごとに優先順位をつけています。コスタリカ戦はそのプライオリティが低く、次のスペイン戦はそれが高いことを期待しましょう。そういう時のこのチームは強い。がっかりするような試合をしたことは一度もありません。それは、一応この4年試合を見続けてきた者として保証します。初めからスペイン戦に照準を絞っていたことをみんなで祈りながら、12/1(ちなみに僕の誕生日です)は少し早めに寝て、朝4時からの試合に備えられればと思います。

こちらはPerfumeの新たな大名曲「FLOW」のライブ映像です。


この曲にはこんなラインがあります。

--------
僕はただ信じていたくて 何も怖くないふりをしていた あの日から心は変わらない そのままでわがままでいたいだけさ

過ぎる時代が 変わる時代が あの日の未来が 夢のように 覚めないままで 彷徨うままで 
そうさ 僕らは流れ雲になる
--------

これは人の気持ちのうつろいを描いた歌詞だと思うんです。人の気持ちなんて流れ雲みたいなもので、いくらでもうつろいゆく、儚いもの。

でも、だからこそ、強いものでもある。

スペイン戦での僕らの代表チームに、そんなことを思わせてもらいたいと強く願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?