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「1000の脳理論」 コラム、モデル、予測

ジェフ・ホーキンスの「脳は世界をどう見ているのか」を通読した。人間の認知の仕掛けを包括的に説明する理論と感じた。(私は素人なのであくまで「感じた」だけなのだが)

大脳新皮質のコラム構造

人間の高次の知能活動を支える大脳新皮質。この構造についての説明はイメージしやすかった。いわく「スパゲティを2ミリの長さにカットしたものをぎっしりと敷き詰めたもの」。そしてそれぞれのスパゲッティ片を「コラム」と呼ぶ。

新皮質には15万個のコラムがあり、それぞれが150程度の事柄を学習できるそうだ。

大脳新皮質はコラム15万個の敷き詰められたもの

コラムは、古い脳を経由してやってくる感覚信号をもとに学習する。たとえば「コーヒーカップの持ち手」のようなものを学習するとする。目や五指からの感覚信号は複数の「コラム」を使って学習される。右手の指先が持ち手に触れる感覚などがいくつかのコラム、視神経からの信号によるものもいくつかのコラムといった具合に分散して記憶される。
これらの総体が、「コーヒーカップの持ち手」の脳内モデルになる。

群盲象を撫でるといったところだ。複数のコラムで1つの物や概念がモデル化される。これにより、コラムがいくつか壊れたところでモデルは失われない。

学習して脳内モデルを作る

モデルはある種の「場所」として記憶される。場所というのは四角い部屋の右上隅・真ん中・左隅などの位置に対応する記憶。これは古い脳にある仕組みを流用したものだそうだ。

このあたりはブルーバックスの「つながる脳科学」の2章に詳しい。動物の時空間の記憶に関わる機能だ。

学習されたモデルは、予測に使われる。感覚信号から「これはコーヒーカップの持ち手にちがいない」といった具合だろう。そして、その脳内モデルが想起される。しかし、カップを持ったらぐにゃっとした。すると、脳内モデルとのアンマッチが生じる。予測が外れたわけだ。

この刺激を契機として、もっとも感覚入力との差異が少ないモデルが選択され直す。モデルが存在しなければ学習される。

ポイントは予測

脳は予測と現実の差違を最小化するように機能する。現代のディープニューラルネットの技術に通ずる。ここ十年ばかり話題の「自由エネルギー原理」に通じる話でもある。


そして意識のハードプロブレム

「脳は世界をどう見ているのか」では意識については軽くしか触れていない。脳内活動をモデル化しているもの。メタモデルのようなものを「意識」の実体として想定しているようだ。この領域については、今後のさらなる研究が待たれる。

このあたりの考え方は「受動意識仮説」に似る。

ジェフ・ホーキンスは現在のAIは人間のようにはならないと考えている。なぜならば、人間の脳の仕掛けを模倣できていないからだ。
AIの発展には次の技術的なブレークスルーが必要なのだろう。


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