今は私みたいなのはレア?

*元ブログ側にはない記事も、書かないと....自己紹介を兼ねての過去話です。

性転換は、恥ずかしいか?」を書いていて思ったんですよ。今更の「自分語り」したくなった理由って、やっぱり

今は私みたいなのはレア

という想いもあるんです。たとえば、

40歳で大阪医大のジェンダークリニックを初診で訪れたときに、最初から女装で完パス状態。ホルモンなしで、そのまま女性で通るけど、ニューハーフでもなくただのパートタイマー

という人、今いないでしょう? 「今いない」のがもちろん、良いことなんですけども。

1. 特例法世代

今はたぶん私みたいな方は、

中学生くらいでGIDの診断もらっちゃって、高校からは女性デビュー、大学入って夏休みに性別適合手術(SRS)を受けて、就職は最初から女性

なんだと思うんです。私は「特例法世代」の特殊な現象なんだと思ってます。特例法がない時代は、やはり「誰がどうみても、性別を変えた方がいい」人でも、それでも性別を変えれないんです。そういう「カテゴリ」が存在しませんからね。女装コミュニティも違和感が大きいし(速攻外出した私なんて、やっぱり客層が違う、とお店からは思われてたでしょうね...)、セックスの要求もなければお酒も弱いし....でニューハーフとか水商売する気ゼロ。

昭和は受け皿ないんです。だから

外出成功体験で獲得した女性アイデンティティを軸に

自身を捉えるようにもなるわけです。で社会的に性別を変えるためにも、セクシャル・マイノリティのコミュニティで情報収集しましたが、単に「利用」しただけ、という気持もあります。女性生活が軌道に乗っちゃえば、とくにそういうギョーカイに関わるメリットがなくなるんですよ。

逆に言うと、この特例法世代の方々をいろいろ見てきてもいるわけです。積極的には関わっていなくても、やはり場には居ますからね。私もじきに還暦。この特例法世代の方も、そんなくらいのお歳以上の方ばかりですね。私みたいに「埋没可能」な方というのは、運動するメリットがありませんから、「誰も元男性なんて知らない」ような環境に埋没します....そっちのが、楽だもん。

例外はやはり運動の責任ができちゃって「負わざるを得ない方」、たとえば野宮亜紀さんとか虎井まさ衛さんとか山本蘭さんとか。それに、埋没不能とか別なアイデンティティやフェミニズムの政治的なものを追及される方たち。

2. Tの業界

アメリカのFtM当事者のパトリック・カリフィアは辛辣なこと言ってます。

ヘテロセクシュアルに同一化アイデンティファイしているトランスジェンダーの男女ですら、他のどこよりも容認や支持が見出せるという単純な理由から、しばしばクィア・コミュニティに仲間入りする方を選ぶ。さらにこういう事実がある。ホルモン投与や手術、発声練習や電気分解脱毛、ボディビルやタトゥーを経ても、トランスジェンダーのいくらかは選択したジェンダーで「パス」できない。こうした人々は活動家アクティヴィストになるか、自滅するしかない。(カリフィア「セックス・チェンジズ」)

これはカリフィアが体験したアメリカの話です。それでも「ヘテロセクシュアルに同一化しているトランスジェンダー」が、とくに「活動家アクティヴィスト」な方々から、

・性別適合手術(SRS)を受けるのは、性別二元論に屈服したからだ!
・性別適合手術(SRS)を受けて満足する人間なんかいなくて、ただの戸籍目当てしかしない!
・性別適合手術(SRS)を受けたがるのは、メディアと医療に洗脳されているからだ!
・いわゆる古典症例は、医療に対する迎合の結果できたもので、そんなのはない!
・パスを追求するのは、性別二元論を強化するだけだ!

なんて決めつけられて叱られたら、どうでしょう? やはり一緒にやる気は....なくなりますね。「容認や支持が見出せ」ないんですから、当然というものでしょう?

昔は情報提供がコミュニティくらいしかありませんから、情報収集が目的でそれなりにギョーカイも賑わったわけです。しかし、今はもう「トランス情報」はいくらでもネットで手に入ります。実用的な「乙女塾」とか実際にタイでの手術を仲介するタイSRSアテンド会社とか、もちろん直接ジェンダークリニック受診でもいいわけですから、ギョーカイをスキップするのが、どっちかいえばふつーのことになりそうでもあるわけです。ですから、どういうメリットをとにかく性別を変えたいトランスセクシャルに提供できるのか?をしっかり考えて..........いるんでしょうかね。

3. ギョーカイの将来と Drop the T

私はギョーカイの将来は暗いと思ってます。医療者・法律家・当事者がフラットに対話できる場として作られたGID学会でも、今はあまりお役に立っていない印象の方が強いです。いまだに「チーム医療」もできないし、ホルモン健保適用ができなくて、性別適合手術(SRS)も健康保険適用が認められても混合診療がネックになってが役立たず。すっ飛ばしてタイSRSアテンド会社の方が、ずっと頼りになるというものでしょう?

コミュニティを若い方がスキップする傾向た増えていることを考えたら、実はもう、LGBT運動から トランス を外そうとする動きである

Drop the T 運動

は日本ではなし崩しに始まっている、という風にも捉えてもいいのかもしれないです。わざわざ「LGBTの社会運動」に最初から最後までかかわりがない、関わりたくない当事者がずっと増えているわけです。まあ、海外ではLGBの側からTを外すかたちでの「トランス除外」で問題化したわけですが、日本では結構 GID・トランスセクシャル系に 

LGBT運動がGID・トランスセクシャルの利害を代表していない

という不満が募っている印象を受けていますよ。その結果、

LGBT の「T」とは、手術を求めない狭義のトランスジェンダーのことで、性別適合手術(SRS)を受けて埋没するGID・トランスセクシャルは除外

という方向になったら....どうなんでしょうね。イジワルな言い方をすると、意外にいいのかも? 

GID・トランスセクシャル系はDSDs(性分化疾患:旧称インターセックス)との方が運動論上の共通点があります。「医療を医療者の一方的な決めつけではなくて、当事者のために活用する」という立場ならね、一致できますから。どちらも「アイデンティティ」という厄介なものを棚上げすることが、事実上可能なのです。特殊なアイデンティティを社会に認めさせる、ではなくて、具体的な医療の要求から必要なものを獲得していく...こういうのが、社会運動なのではないですか?

行きがかり上このギョーカイにご縁があって、「特例法世代」というなかなかレアな経験をさせていただいたわけですから、やはりその自分なりの決算をしたくなって、書いてます。

やはりギョーカイでは、私みたいな「全般的にトランスについて問題が少なくて、うまくやっていける人」よりも「問題が多くて困る人」の方に優先的な発言権がある、とされる傾向が強くあります。それが一概に悪いわけでもないのですが、「問題のないお前は黙ってろ!」というような態度を取られると、やはりいい気はしませんよ。かつての発言チャンネルの少ない状況ならいざしらず、今はいくらでも発言していいはずですからね....としてみると、やはりここで最後のご奉公でもしたいようにも思うわけです。

皆さんが私以上の「ハッピートランス!」ができるように、願っていますからね....

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