今やTumblrはファンダムの主戦場だ_アーティストによるTumblrを活用をしたファンダム動員戦略を解説します

今やTumblrはファンダムの主戦場だ!アーティストによるTumblrを活用をしたファンダム動員戦略を解説します

Pinterestが米国時間4月18日IPOを果たし、評価額は約130億ドル(約1兆4560億円)になった。

日本企業との協業が着々と実現している。

またファッション系メディアやライフスタイル系メディアを中心にPinterestへの配信も増えている。

その一方でTumblrはポルノ画像削除騒動などサブカル、アングラのイメージがまとわりつき、メジャーなSNSとして日本国内では未だに認知されていない。

しかし海外ではポップスターを中心に新たなマーケティングツールとしてTumblrが見直されてきている。

1.SNSはソーシャルグラフからインタレストグラフへ

SNSはFacebook/Twitterといったソーシャルグラフに代わってInstagram/Pinterst/Tumblrといったインタレストグラフが重視されるようになると言われて久しい。ソーシャルグラフは、つながりどころかますます世界に分断を招くようになった。

その一方インタレストグラフのInstagram/Pinterst/Tumblrは「好き」をキーワードとした新たなマーケティングツールとしての活用がいたるところで見られるようになった。

Instagramは「好き」でつながる

ハッシュタグそのものが、ユーザーの「好き」が集約された表現になると考えられます。正確にはすでにそのようなハッシュタグは存在していますが、それがもっと強まっていくと考えられます。実際に「#〇〇とつながりたい」「#〇〇派」「#〇〇大好き」「#〇〇のある暮らし」など、ハッシュタグがユーザーの「好き」な感情と結びついている例は数えきれないほどあります。

Pinterestは「好き」が見つかる

SNSは人と人をつなげることでその価値を発揮しますが、Pinterestは人の「好き」という主観的な感情データの集積が、結果的にその人の好きをリフレインしたり、ずっとやりたかったことを実現することにつながるという哲学があります。

Tumblrは「好き」を推す

自分はアメリカの音楽市場でのK-POPの成功はファンダムによるTumblrを活用した「応援サイト」の効果が大きいと考えている。
K-POPのファンダムはFY〇〇という英訳した勝手「応援サイト」をTumblrに作成して海外、特にアメリカに向けて情報発信している。ちなみにFYとは”fyeah” “Fuck Yeah"で「最高!」というネットスラングである。

そこで日本国内では未だに認知されていないTumblrについて、アーティストによるファンダム動員戦略を中心に見ていきたい。

2.ファンダムとは何か?

Fandom(ファンダム)という言葉を知っていますか?

これは熱心な愛好家を意味する Fan に接尾辞 dom を付け加えた新しい単語で、アニメ、コミック、音楽、ゲーム、映画、テレビ番組、アイドル、スポーツなどの情熱的なファンがつくる新しい世界、また彼らによって形成される新しい文化を意味している。

「ファンダムとは“人”ではなく、ファンの“行動”を表す言葉です。熱狂的な人たちが参加する、利益とは関わりないもろもろの活動がファンダムなのです。消費者は製品を気にしますが、ファンは製品が意味するものが気になる。欲しいものも必要なものもまったく違います」

こうしたファンダムの行動や文化は宗教と親和性が高く、実際に宗教用語でである「お布施」「聖地巡礼」といった言葉も使われている。

ファンのモチヴェーションは、費用対効果で決して測ることができない。むしろ、ファンは、そこにそうした「経済合理性」を持ち込まれることをすら嫌うだろう。「タダでもやる人がいるんだから、インセンティブを与えればもっとやるだろう」という観点から行われるマーケティングは、ファン心理を決定的に見誤っている。お金をもらってファンアートを描くような人間は、ファンの風上におけない。そんなシンプルな動態さえ、経済学やマーケティング理論はきちんと扱えてこなかった。それではもはやこれからの商売は立ち行かない、ということが、本書のような本が必要となっている理由なのだろう。もちろん、これまでも「ファンダム」も、それをターゲットにした「ファンビジネス」も存在はしてきた。じゃあ、一体何が、決定的に変わってしまったのかというと、それが容易に、組織化され、可視化されるようになったということに尽きるだろう。

このように組織化された可視化されたファンダムを最も上手く動員しているアーティストがテイラー・スイフトとK-POPアーティストである。

3.テイラー・スウィフトのファンダムとTumblr

テイラー・スウィフトのTumblrを活用したファンとのコミュニケーションはしばしば話題になる。

例えばこちらのNew York Timesの記事である。

テイラー・スウィフトはTumblのオフィシャルアカウントは2つある。

@taylorswift テイラー・スウィフト本人のアカウント

@taylornation テイラー王国の意味 テイラー・スウィフトのスタッフアカウント

スウィフティーズ(テイラー・スウィフトのファンダムの名称)は、この2つのアカウントに「スキ!」「リブログ」「フォロー」されるために何度も何度も投稿を繰り返す。

TumblrにはTwitterのリツイートと同様にリブログという機能がある。Twitterでは自分の投稿をリツイートできるのは1回だけだが、Tumblrのリブログは何回でもできる。しかもTumblrには予約投稿機能があるため同じ投稿を無限ループ投稿することも可能なのだ。自分も日本国内のスウィフティーズのアカウントを何人かフォローしているがダッシュボードが24時間テイラー・スウィフトになってしまった。

そして実際に公式アカウントにフォローされて感極まって号泣してしまったファンの投稿がこちら。

Tumblrは世界とつながるSNSであることをよく表している。

4月26日(金)に新曲「ME!」のミュージックビデオを公開したテイラー・スウィフトだが、公開後24時間で6,520万回、これまでアリアナ・グランデの「thank u, next」の持っていた5,540万回の記録を塗り替え、ソロアーティストとしてYouTube史上最多再生記録を樹立した。

このミュージックビデオのテイラーのポーズを真似たファンによるTumblrの投稿をテイラーがリブログした。

Tumblrのリブログはテキストだけではなく画像や動画も追加できる。そこでスウィフティーズがこの投稿を真似てリブログされ、まるでチェーンメールのように世界中に拡散されるのである。

それがこちらの投稿だ。

現在この投稿は8800件の「スキ!」「リブログ」があるが、実はTumblrのラボ機能にはリブロググラフという機能があり、この投稿がどのように拡散されたのかが分かるようになっている

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このようなTumblrを活用したファンとのコミュニケーションやスウィフティーズを動員したプロモーションがYouTube史上最多再生記録を樹立に大きく貢献している。

4.K-POPのファンダムとTumblr

現在Tumblrを最も上手く活用しているのがK-POPのファンダムである。先日Tumblrオフィシャルが「k-pop on tumblr」のアカウントを開設。さらにファンダムへの情報発信に力を入れていくようだ。

K-POPがここまで世界的潮流となった要因は「K-POPは韓国の国家戦略だからだ」という上目線の一言で済まそうとする風潮がよく見られる。

こうした指摘は間違いではないものの、あまりにも一方的すぎる。むしろファンダムによる地道な海外布教が「ビルボードソーシャル50」のチャートを動かし、BTSを米ビルボード・チャート1位への原動力となった。

その有力なマーケティングツールの一つがTumblrである。

TumblrのK-POPファンダムによるランキングを『Forbes』が取り上げて記事にしている。

この『Forbes』の記事を紹介した日本語記事がこちら。

米国で最も権威のある音楽チャートBillboard(ビルボード)には「ビルボードソーシャル50」というチャートがある。

この「ビルボードソーシャル50」というチャートはSNSからアーティストの人気度を測るチャートであるが、見てもらえれば分かるがK-POPアーティストの独壇場である。

自分はアメリカの音楽市場でのK-POPの成功はファンダムによるTumblrを活用した「応援サイト」の効果が大きいと考えている。

K-POPのファンダムはFY〇〇という英訳した勝手「応援サイト」をTumblrに作成して海外、特にアメリカに向けて情報発信している。ちなみにFYとは”fyeah” “Fuck Yeah"で「最高!」というネットスラングである。

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YouTubeに代表されるソーシャルメディアが登場しました。音楽業界の崩壊に伴い著作権のような既存の利益構造はなくなっていたし、さらに韓国はどの国よりも早くブロードバンドを整備していた。そんな流動的な場所に、ファンは自分のお気に入りのアイドルの映像を自由にアップロードして独自に応援するようになったんです。正直なところ、僕自身もポピュラー音楽そのものの中から見ていたので、最初は何が起こっているのかよくわからなかった。だけどメディアを研究していたので、K-POPで起こっていることをたんなる音楽空間ではなく、メディア空間での出来事として捉えることで徐々に全体像が把握できるようになったんです。考えてみるとポピュラー音楽の歴史は、メディアの歴史でもあるので。

こうしたファンダムがTumblrに投稿している画像、動画の多くは厳密に言えば著作権に問題のあるものばかりだが、こうした英訳サイトがアメリカをはじめとした海外へのK-POP認知度向上に果たした役割は大きい。


今回はTumblrとファンダムの関係を中心に見てきたが、3つのインタレストグラフである

「好き」でつながるInstagram

「好き」が見つかるPinterest

「好き」を推すTumblr

を企業や個人のファンダムコミュニティ形成のためのマーケティングに上手く連携して活用することの具体的な事例を今後も提案していきたい。

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