象徴

母と父は暴力の象徴だった

父は酒癖が悪く、家に居る時は必ず暴れた
暴れる時は必ず母がいない時だった
そして私が骨折しても翌日には覚えていない
それが本当かは本人にしか分からないが、父は「覚えていないから仕方無い」と毎回言い捨てた
だから居ない日は平穏だった
愛人の所に行っていたり、飲みに行っている方が有り難かった

母は今の自分の状況は全て私のせいだと
時には殴り、時には蹴り、時には刃物を振りかざし
家に居る時は必ず私に詰め寄った
母もこういう時は必ず父が居ない時だった
寝ている時に首を絞められ起きた事もあった
大きな灰皿で殴り掛かられた事もあった
母も愛人の所や飲みに行っている方が有り難かった

私は物事ついた頃から既に母から延々と
「誰もお前言う事は信じない」
「誰もお前を愛さない」
「誰もお前を大事だと思わない」
「家での事を話してもお前が嫌われるだけだ」
「外にはお前を大事にする奴などいない」と、その様な意味合いの事を言われ続けていた

不思議なもので当時の私はそれを信じた
そうなのだ、と
私はそういう生き物なのだ、と
私は愛されなどしないどうしようもない生き物なのだ、と
これ以上辛いのは嫌だから、家の中で起こるあらゆる事柄は口外せずに黙り
いつか抱き締めて貰える様に「いいこ」にならなくちゃ、と

今のような社会じゃなかったのと
お金は十分に与えられ、例え家に父と母が暫く帰って来なくとも衣食住は賄えたのと
人目を気にする母のある意味英才教育のお陰で外部に漏れず
こういう生活は10年以上続いた

自分のルーツというモノを探ると必ずここから始まってしまう
今更どうしようもないのに
今更解決も出来ないし「そういう始まりだった」と納得する他ないのに

今はもう父や母に怒りや恨み、そういう気持ちは持ち合わせてもいないのに