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【推しの子】YOASOBI 「アイドル」の歌詞を徹底考察 もう一人の主人公とは

 

アニメ『推しの子』1期オープニングテーマ、YOASOBIさんが手がける『アイドル』を原作小説、歌詞を参照して読み解いていきます。
 このnoteでは原作小説45510、「アイドル」歌詞及び、「推しの子」本編のネタバレを含みます。まだどれも見てないよって方は急いで見に(聴きに)いって帰ってきてください!


目次

  1. 2人の登場人物に2つの視点

  2. 無敵の笑顔で荒らすメディア(B小町メンバー視点)

  3. 誰もが目を奪われてく(B小町メンバー視点)

  4. 誰もが信じ崇めてる(アイ視点)

  5. 得意の笑顔で沸かすメディア(アイ視点)

  6. コーラス

  7. あぁやっと言えた

  8. まとめ


1.2人の登場人物で2つの視点

 まず、この曲には主要人物が二人います。原作小説である45510を読めばそれが、この物語の中心人物であり絶対的センターのアイドル「アイ」と、そのアイドル「B小町のメンバー」であることが分かります。では、歌詞に沿って解説していきます。
 ちなみに45510は、作中に出てくるB小町の共同アカウントのブログのパスワードです。結成メンバーの頭文字をフリック入力したときの数字だそう。


2.無敵の笑顔で荒らすメディア(B小町メンバー視点)

無敵に笑顔で荒らすメディア
知りたいその秘密ミステリアス
抜けてるとこさえ彼女のエリア
完璧で嘘つきな君は
天才的なアイドル様

YOASOBI『アイドル』

 この歌詞はおそらくアイのことを歌っているのだと思います。アイのことを絶賛しているようで「アイドル様」という皮肉までの装飾語だったりします。このことからアイのことを尊敬してる半面、嫉妬している人物だということが分かります。そして、この人物の視点から歌詞が始まります。


今日何食べた?好きな本は?遊びに行くならどこに行くの?
何も食べてない それは内緒 なにを聞かれても のらりくらり

そう淡々と だけど燦々と 見えそうで見えない秘密は蜜の味
あれもないないない これもないないない 好きなタイプは?相手は?
さあ応えて

YOASOBI『アイドル』

 この物語はB小町解散後、B小町のメンバーである語り手(以下:語り手)がファンが不正に保存したアイの配信アーカイブを再生するところから始まります。
 配信のコメント欄には「今日何食べた?」「好きな本は?」のような質問から、「好きな男のタイプは?」のような恋バナまで、どのようなコメントにも秘密を混ぜて回答したり、「秘密ー」と流したり。「好きな本くらい答えてあげればいいのに。」と語り手も疑問に思います。
 伏線かもしれないし、ただ本を読まないだけかもしれません。


「誰かを好きになることなんて私分からなくてさ」
嘘か本当か知り得ない
そんな言葉にまた一人堕ちる
また好きにさせる

YOASOBI『アイドル』

 アイは幼少期、母親からDVを受けていました。その事を語り手は知っていて、回想しながらアイの配信をまた観ます。その過程で砕けたガラスが白米の中に入ってしまったことがあり、「嫌いな食べ物は?」という質問に対して白米を挙げ、「味が嫌いとかじゃなくて砂とか入ってるのが怖い」と配信で発言しています。だから怒らない人を好み、愛を受けずに育ったからこそ、「誰かを好きになることなんて私分からなくてさ」と言えるのです。
 この言葉さえ、嘘か本当か分からない。そんな秘密だらけの愛の魅力に彼女のファンが虜にされるのがちょっと皮肉ですね。


3.誰もが目を奪われてく(B小町メンバー視点)

誰もが目を奪われてく
君は完璧で究極のアイドル
金輪際現れない
一番星の生まれ変わり
その笑顔で愛してるで
誰もかれもを虜にしていく
その瞳がその言葉が
嘘でもそれは完全なアイ

YOASOBI『アイドル』

 さてサビです。やけにアイを称賛しています。ファンからの熱い称賛の部分でもありますが、語り手のアイに対する信仰に似た羨望を感じさせます。サビの最後の部分がカタカナで、「愛」「アイ」を掛けているのがその証拠だと言えます。


はいはいあの子は特別です
我々はハナからおまけです
お星さまの引き立て役Bです
全てがあの子のお陰なわけない

洒落臭い
妬み嫉妬なんてないわけがない
これはネタじゃない
からこそ許せない
完璧じゃない君じゃ許せない
自分を許せない
誰よりも強い君以外認めない

YOASOBI『アイドル』

 サビの終わりに続く形で来ましたラップパートです。このラップの前半は語り手のアイに対する「嫉妬」をより強調した部分となります。「お星さまの引き立て役B」とは、お星さま(アイ)をAとしたときの自分をBとしたとも、B小町の小町をアイとしたときの自分を残りのBとしたとも、語り手がアイのバックダンサーとして活動していくと覚悟を決めていたことから、自分をバックダンサーのBとしたとも考えることができて、とても面白い歌詞です。

 そしてラップの後半は語り手のアイに対する「羨望」をより強調した部分になります。語り手の見ていた配信は途切れ、昔グループで作ったブログを開きます。そこには以前グループで撮った動画とメンバーを想うアイの本音のメッセージがありました。そして「みんなにずっと言わなきゃって思ってた事もあるのちゃんとみんなと…」語り手はここで見るのを止め、記事を削除してしまいました。
 それはなぜか…。こんなのは違う。こんなのは「アイ」じゃない。誰にも縋らず、奔放で、孤高で、強くて、後悔なんて一度もせず無敵で最強で唯一無二なのがアイなんだ。誰よりもアイを羨望の眼差しで信奉していたのが、語り手自身だと、その身をもって気づくのでした。


4. 誰もが信じ崇めてる(アイ視点)

誰もが信じ崇めてる
まさに最強で無敵なアイドル
弱点なんて見当たらない
一番星を宿してる
弱いとこなんて見せちゃダメダメ
知りたくないとこは見せずに
唯一無二じゃなくちゃイヤイヤ
それこそ本物のアイ

YOASOBI『アイドル』

 ここからがやっとアイ視点です。原作小説がアイ視点ではないだけあってB小町メンバー要素の割合が半分を占めています。これまでの歌詞がアイを表現しているものであり、これからの歌詞を引き立てる材料になります。
 さて、ここはアイを称賛する声をアイが受け、それに応えるために「アイドルのアイ」が「本物のアイ」に嘘をついているところだと思われます。「アイドルは偶像だよ?嘘という魔法で輝く生き物」とは言ったものですが、「本物のアイ」には嘘をつきとおせるのでしょうか。
 嘘がいつか本当になることを願う夢アイドルとして活躍する夢とが葛藤しています。


5.得意の笑顔で沸かすメディア(アイ視点)

得意の笑顔で沸かすメディア
隠しきるこの秘密だけは
愛してるって嘘で積むキャリア
これこそわたしなりの愛だ
流れる汗もきれいなアクア
ルビーを宿したこの瞼
歌い踊り舞う私はマリア
そう嘘はとびきりの愛だ

YOASOBI『アイドル』

さあ、Bパートです。ここでアイの自己紹介です。アイはファンが自分を最強で無敵なアイドルとしていることを自覚し、自身の子であるルビーアクアを隠すこと嘘つくことでさえ、とびきりの愛だと語っています。母親としての幸せアイドルとしての幸せの両方を得ようと覚悟を決めたアイの心情が伺えます。


誰かに愛されたことも
誰かのことを愛したこともない
そんな私の嘘がいつか本当になること
(信じてる)

YOASOBI『アイドル』

 ここではアイが自分の過去を振り返っています。まるで走馬灯かのように
母親から愛されなかったこと、アイドルとして活動したこと、イチゴプロのプロデューサーから言われた言葉。アイは純粋に信じています。


いつかきっと全部手に入れる
私はそう欲張りなアイドル
等身大でみんなのこと
ちゃんと愛したいから
今日も嘘をつくの
この言葉がいつか本当になる日を願って
それでもまだ
君と君にだけは言えずにいたけど

YOASOBI『アイドル』

 そしてラスサビです。この歌詞はアイの走馬灯のクライマックスであり、アイがドアを開けた途端に刺された瞬間のシーンだと思われます。「等身大でみんなのことをちゃんと愛したい」というと、嘘が本当になることというをその目に宿しながら倒れていきます。

6.あぁやっと言えた

あぁやっと言えた
これは絶対嘘じゃない
愛してる

YOASOBI『アイドル』

 この歌詞で脳を破壊された人は多いのではないでしょうか。この歌詞でラスサビこそ、アイが刺されたシーンだということが確実になります。原作と似てどんでん返しですね。
 嘘がいつか本当になること信じたアイが、やっと言葉にできて夢が叶った瞬間。ルビーに血まみれの自身の姿を見せないために最後のチカラを振り絞ってドアを塞ぐシーンに母親の愛を感じさせられます。


7.コーラス

You're my savior, you're my saving glace

You're my savior, my true savior, my saving grace

YOASOBI『アイドル』

 まるで讃美歌のようなコーラスですよね。どの音楽アプリの歌詞にも載っていないですが、実はこのようコーラスが歌われています。このコーラスの歌詞はYOASOBIさんの公式Twitterに載っているので確かです。
 上部はAメロの歌詞で翻訳すると「救い主よ、私の救いの恵みよ」となり
下部はラスサビ後の歌詞で、翻訳すると「救い主よ、私の真の救い主よ、私の救いの恵よ」となります。
 Aメロの部分はアイのファンがアイを信奉している部分でもありますが、語り手がアイを信奉しているようにも感じました。しかし、ラスサビのコーラスは


8.まとめ

 いかがだったでしょうか。B小町のメンバーのみんなが感じてたであろうことを一人の主人公として描いた赤坂アカ先生はさすがだなと思いました。
 YOASOBIさんは「アイドル」だけではなく、毎回原作の小説をもとに音楽を作っています。ここまで読んでくれた皆さんも是非YOASOBIにハマっていただけたらと思います。では、See ya!

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