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【3.11】BUMP OF CHICKEN『RAY』の歌詞を徹底考察 曲名に込められた意味とは



いんとろだくしょん

 この記事ではBUMP OF CHICKENのRAYを読み解いていきます。雰囲気の全体を感じるために、前もって一度この曲を聴くことを勧めます!
 この曲は3.11東日本大震災の約2年後に発売されました。よってその震災を意識して作られたのだと仮定して書いていきます。

お別れしたのはもっと 前の事だったような
悲しい光は封じ込めて 踵すり減らしたんだ
君といた時は見えた 今は見えなくなった
透明な彗星をぼんやりと でもそれだけ探している
寂しくなんかなかったよ ちゃんと寂しくなれたから

BUMP OF CHICKEN『Ray』

 震災で被害に遭った当事者はその被害を忘れて前に進もうとします。
「寂しくなんかなかったよ ちゃんと寂しくなれたから」最初は不思議に思えた部分でしたが、寂しさを感じるほどに、災害が起こる前は幸せだったことが伺えます。
 また、ここでいう透明な彗星は前に進むための意思だと考えます。大切な人と生活してきた思い出をまだ引きずっているのでしょう。

1.いつまでどこまでなんて

いつまでどこまでなんて 正常か異常かなんて
考える暇も無い程 歩くのは大変だ
楽しい方がずっといいよ ごまかして笑っていくよ
大丈夫だあの痛みは忘れたって消えやしない

BUMP OF CHICKEN『Ray』

 「あの痛みは忘れたって消えやしない」、人はどんな思い出でも誰しも忘れていくものです。しかし、大切な人を失った痛みは脳裏に刻まれていているのでしょうね。「楽しい方がずっといいよ」のような歌詞で明るい曲と思われますが、テーマは重く暗いものだと僕は感じます。

2.理想で作った道を

理想で作った道を現実が塗り替えていくよ
思い出はその軌跡の上で輝きになって残っている
お別れしたのは何で何のためだったんだろうな
悲しい光が僕の影を前に長く伸ばしている
時々熱が出るよ時間があるとき眠るよ
夢だと解るその中で君と会ってからまた行こう

BUMP OF CHICKEN『Ray』

 この部分全体で、思い出というが後ろから照らすことでできたで前が見えなくなっている事を歌っています。この歌詞の中では「悲しい光」という思い出が、「」となって当事者の行く先をくらますと解釈できます。思い出すべてが明るい思い出とは限らないのですね。

3.晴天とはほど遠い

晴天とはほど遠い終わらない暗闇にも
星を思い浮かべたならすぐ銀河の中だ
あまり泣かなくなっても靴を新しくしても
大丈夫だあの痛みは忘れたって消えやしない

BUMP OF CHICKEN『Ray』

 この部分では影(暗闇)で行く先をくらまされた当事者が、奮闘する様子が歌われています。前に進むための星(彗星)は銀河という脳の中に思い出として残っています。
 個人的に好きなポイントで、2番サビに「靴を新しくしても」があることで、Aメロの「すり減らしたんだ」の部分から当事者が前に進もうと努力したと解釈できます。

4.伝えたかった事がきっとあったんだろうな

伝えたかった事がきっとあったんだろうな
恐らくありきたりなんだろうけどこんなにも
お別れした事はきっとあったんだろうな
あの透明な彗星は透明だから無くならない

BUMP OF CHICKEN『Ray』

 透明な彗星の「透明」は彗星を目に見えない、実態のないものだと形容しているのだと考えます。透明であるがゆえに自分の思うように意思を操るのは難しいのです。この部分から当事者には退く意思はないように見えます。それはなぜでしょうか。彼は退かないのではなく、退けないのです。

5.○×△どれかなんて

○×△どれかなんて皆と比べてどうかなんて
確かめる間も無いほど生きるのは最高だ
あまり泣かなくなってもごまかして笑っていくよ
大丈夫だあの痛みは忘れたって消えやしない
大丈夫だこの光の始まりには君がいる

BUMP OF CHICKEN『Ray』

 自分に言い聞かせて必死に生きる当事者の姿が見えます。彼は大切な人を失った痛みを引きずったまま前に進むのでしょう。
 最後の「大丈夫だこの光の始まりには君がいる」は「大丈夫だあの痛みは忘れたって消えやしない」を補強するものだと考えられます。痛みのみならず、思い出も脳裏に刻まれています。
 さらに、「あまり泣かなくなっても 誤魔化して笑っていくよ」と1番サビの痛みを自覚した当事者と2番サビの思い出を自覚したを当事者が存在します。思い出と痛みがとなって、それを引きずって生きていく彼の決心が歌われます。

まとめ

 いかがでしたか。彼の持つ思い出は影を作り出すものであると同時に自分を導くものでもあるのです。皮肉ですね。
 わたしがこの曲が好きなのは「前向きに生きよう」と投げ捨てるのではなく、寄り添った歌詞になっているところです。明るくポップな曲調でも歌詞を深掘りしてみると、重く暗い解釈ができて面白いです。こんな日ですから当時を思い返してみるのもよいでしょう。では、See ya!

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