小川

    小川が始まるところには、一本の赤い杭が立っている。
 だれがいつ立てたのかわからない。そこから小川が始まるから杭を立てたのか、あるいは杭が立ったから小川が始まったのか、それもわからない。
 いずれにしても、水が流れはじめるのは、赤い杭の先だ。杭の上手から流れることはない。
 いくつかの支流を合わせ、川はそれなりの幅になる。下流に住む人々は川に架けられた橋を渡り、長い時間をかけてここへやってくる。
 そして、赤い杭を確認し、ほかには何もないことを確かめ、一つ長いため息をついて戻っていく。それぞれの生活の場へ、いくらか肩を落として戻っていく。

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