画廊

    画廊に飾られているのは、いまのところ額縁だけだ。大小さまざまな額縁が暗い壁に飾られている。
 順路に従い、画廊の客は額縁を観る。前に立つと、硝子が嵌められていることがわかる。そのつるつるした表面に、客の顔がぼんやりと浮かびあがる。客はそれをしばし観て、無言で立ち去っていく。
 額縁の中には、いずれ絵が飾られる。それがどんな絵なのか、客は知らない。まだ何もわからない。

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