窓男


    窓男はだしぬけに現れる。何の前ぶれもなく、そこに立ち現れる。
 正体は分かっている。窓に映る自分の影だ。それだけなら、べつにどうと言うことはない。ただの影にすぎない。
 ときおり、ほんの少しだけ違う動きをするのが窓男だ。それはもう影ではない。自分でも他人でもない、ひどく不可解な存在が窓男と呼ばれる。
 窓男を捕まえることはできない。その出現に気づき、あわてて駆け寄ったときには、すでに遁走を終えている。
 窓の外側は世界の〈外〉だ。窓男はもう帰ってこない。

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