見出し画像

【少女】(1972)五輪真弓 早熟シンガーの米国録音デビュー作

私はひと頃、東京都町田市という所に住んでいました。東京の南西部です。
地図で説明すると、東京の真ん中辺りが下に突き出た部分、ここが町田市にあたります。
多摩丘陵で高低差の激しい地形。兎に角坂道が多い、足腰の鍛えられる土地です。

私が借りていた自宅アパートの同じ町内に住んでいらしたのが五輪真弓さんでした。私が1丁目で向こうは2丁目か3丁目?といっても実際に会ったことはなく、噂では毎朝早くから犬の散歩をされていたとか…。

この五輪さんのデビュー作、日本の女性シンガーソングライターの黎明期を代表する知る人ぞ知る密かな人気作です。五輪真弓と言えば大ヒット曲「恋人よ」のイメージが一般的ですが、本作はあのキャロル・キングがその才能を認めて参加したという、ちょっとロックファンには気になるアルバムなんです。

一時期、私は五輪さんのCDやら、LPを買い集めて少しハマったことがありました。ご近所さんという理由ではありません(笑) 聴けば初期の作品、これがなかなかイイ。

翳りのあるメロディ、醒めた歌声、少し引いた視点で描写した内省的な歌詞、フォーキーだけど決して辛気臭くない。独特の寂寥感が漂って、寒々しい感性が素敵なんですよね。ユーミンとも中島みゆきとも違った魅力。いい意味で「恋人よ」の先入観が消えました。

このデビュー作は当時としては異例の米国西海岸へ渡っての録音。まだ若干21才の五輪さんからの要望だったというのだから驚きます。彼女のために「UMI」というレーベルまで立ち上げて、所属のCBSソニーは相当の期待を込めたのでしょう。

プロデュースはジョン・フィッシュバック。キャロル・キングの「ライター」のプロデューサーだったようなので、その辺りからキャロル参加に繋がったのだろうと想像します。キャロルはピアノで2曲に参加。旦那のチャールズ・ラーキーも全編でベーシストとして参加しています。
自作曲のクオリティは勿論のこと、ベーシックアレンジも五輪さん本人が担当。海外ミュージシャンの演奏と相俟って、和洋折衷の風情が広がるデビュー作です。新しい時代の才能ですね。

見開きジャケットには参加ミュージシャンの写真。
上部にキャロルとチャールズ・ラーキーの2人も。
1972年10月21日発売 CBSソニー盤 
荒井由実より1年早いデビューアルバムなのです
同日発売のデビューシングル!時代を感じるアイメイク(失礼)💦 さすがシングル盤はLPより音圧が高くて鮮明な音です。貴重な盤をCafe GINGER.TOKYOの高山さんから頂きました(感謝!!)



〜曲紹介〜

Side-A
①"なわとび"

②"朝もやの公園で"

③"少女"
五輪さん曰く、大人になることの無念さ、子供時代のかけがえのなさを歌ったという記念すべきデビュー曲。
ピアノでキャロル・キングが参加。五輪さんはアコギを担当。20才そこそことは思えない堂々たる歌声に引き込まれます。ひと際重みのあるドラムも印象的。後半からは壮麗なストリングスがグイグイ曲を盛り上げていきますね。
何処となく虚無感!?喪失感!?があって、私はこの曲にセピア色の昭和ノルタルジーを感じるんですよね。


④"雨"
イントロがキャロル・キングっぽいですが、歌は完全に五輪真弓の世界です。自身が弾くアコギにチェロの低音が優雅さを彩ります。

⑤"汚れ糸"

Side-B
①"あなたを追いかけて(パート1)"

②"枯葉が舞う時"
初期のジョニ・ミッチェルにも似た寒々しさ伝わるギターの弾き語り。五輪さんはデビュー前からジョニの曲を歌っていたようで、同時代のSSWから多くを吸収したのでしょう。

③"はと"
本作の中では最もヘヴィな感触です。
"少女"と同じレコーディング初日に録音したそうで、キャロル・キングがピアノで参加。耳を奪われるのは重いリズムセクションと五輪さんの実直な歌声。ハモンドオルガンも入ってかなりロックしてますね〜。
歌詞には「はとは遠い森の奥の古巣に帰っていったのでしょう 親ばとのいる古巣へ帰っていったのでしょう…」といったフレーズ。「はと」って何を意味するのでしょうか??
私はあの時代の学生運動に挫けた若者達のように思えてならないのですか…。


④"空を見上げる夜は"
マンドリンが軽やかさを添える明るいフォーク・ロック風ナンバー。ここでもドラムが力強い。幼い日々を回想する詞が歌われます。

⑤"あなたを追いかけて(パート2)"


裏ジャケット

少し前にTVを観ていたら【ふたりのビッグショー】で五輪さんが、安田祥子、由紀さおり姉妹と共演(妙な組み合わせ…)してる回を再放送してました。90年代半ば位でしょうか。40代の五輪さんは、デビュー曲「少女」も熱唱していました。
若き頃の繊細な感性を刻んだ出発点。ずっと大切な曲なんだと判って何だか嬉しくなってしまいました(^^)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?